19 元勇者の日常
夜11時、とあるマンションのワンルーム。
携帯でネットニュースを見ていた青年がいた。
♪ガサガサ
ん?
ベランダに人の気配。侵入者だ!
彼は元異世界転移者であり、勇者をしていた者だ。
侵入者の察知など容易い。
オレの部屋を襲うきか?運が良んだか悪いんだか。
勇者は、ゆっくりと窓際まで近寄る。
そして窓のロックを解除し、深呼吸。
勢いよく窓を開け、大声で怒鳴る。
「コラー!何してる!」
♪ニャー。
ベランダから逃げ去る猫の姿を目にすることに。
「うるせぇぞー。何時だと思ってるんだ!」
隣の家からの罵声。うるさいのはお前の方だ。
勇者はそんな事には動じない。
◇◇◇
勇者が飲み物を買いにコンビニへ行く途中のこと。
「ちょっと放してよ。」
「いいから財布出せ!そのカバンの中だろう?」
道端で男女が言い争っている風景を目撃する。
「無いわよ。」
「なら開けて中を見せろ!」
女性が壁際まで追い込まれており、逃げられない様子。
勇者は忍び足で男の背後へ。
「うっ。」
首筋へのチョップ。その男は意識を失うことに。
「急いで逃げなさい。」
「ありがとうございます。」
勇者は女性を助けてご満悦のご様子。
だがその後、女性に財布をひったくられたと被害届が出された。
◇◇◇
交通量の多い大通りで勇者が信号待ちをしてた時のこと。
「あぶねぇぞ、ババア!」
道路を挟んだ反対側の歩道で、自転車とお婆さんが接触しそうになることろを目撃。
お婆さんは倒れ、自転車はそのまま走り去ってしまった。
なんて野郎だ!
勇者は赤信号であるにも関わらず、勇敢にも車道へ飛び出しお婆さんの元へ。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうね。」
勇者は手を貸しお婆さんを立たせて上げた。
だが、同時に車道側では勇者が飛び出したことで、
先頭車両が急ブレーキをし、15台の玉突き事故に。
ーーー 完 ーーー