2
その日あたしは、人生最大のドジを踏んだ。
「悪くねぇな、これならクソスキルでもそれなりの値段になりそうだ」
バシャンッと冷水を浴びせかけられ激しくむせたあたしの顔を、ガラの悪い男は粗い布で乱暴に顔を擦って言った。
大柄な男が2人。どう足掻いても逃げられそうにはない。というか逃げられなかったから捕まっちゃったのだが。
まさか自分が人攫いのターゲットになるなんて思ってもみなかった。
だってスラムの痩せこけた孤児だもん。商品価値なんてないに等しい――スキル持ちでさえなければ。
男の1人が『スキル持ちの人間がわかるスキル』というのを持っていたみたい。それでまんまとあたしが見つかっちゃったわけである。
というか、今の今まであたしは自分がスキル持ちなんて知らなかったんだけど……
「しっかし、俺のスキルじゃどんなスキルが出るかまでは分かんねぇからなあ」
どう売れば特になるのか、男たちは唸りながらあたしを縄でぐーるぐーると縛っていく。
あー、なんかこの状況を一発逆転できるようなすごいスキルだったらいいのに。
それか、めちゃくちゃ家事ができる!みたいなスキルで、売られた先がすっごいお金持ちの優しい人が主人でメイドとして重宝されるとかさ。
せめて今のお腹を空かせた孤児よりマシな状況になったらいいなと、半ば諦めモードでいると、私の頭上では「子供好きの変態貴族」とか「スキル持ちをコレクションしてるサイコ野郎」とか、どうか聞き間違いであってくれと思う単語が出ている。
舌を噛み切るのって、どれくらい痛いんだろうか、そんな思いがふいに出てきた瞬間――
「貴族でも変態でもサイコ野郎でもありませんが、子供好きでスキル持ちの方を集めているので、その子を譲って頂けませんか?」
と言う声が路地裏に響いた。
これがあたしとユリウスの出会いである。