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異世界仕様の自転車(ラジオ大賞6)

ラジオ大賞6(2025)の「自転車」題で出した2作目です。

異世界モノの移動手段の定番は馬車や荷車だろう。これは、一度は乗ってみたいという読者の願望から来る。


現実の近世では、幹線以外は道幅は狭く、馬車は元より、荷車すら一台がやっとの道幅で、すれ違いは離合所でしか出来なかった。だからこそ、狭い軌道で広い車体・積載量を支えられる鉄道・トロッコが発達した。


そんな道路事情だと、娯楽・社交場としてならともかく、純粋な移動手段としては自転車のほうが圧倒的に有利だ。


となれば、異世界転生・転移モノの定番である転生特典として、「自転車召喚」や「部品召喚」「自転車修理」が欲しくなる。そして、この手の特典の、これまた定番である熟練レベルとして、レベル(又は代価支払い能力)があがると、自転車の性能や召喚頻度、修理速度が上がるという具合で。


自転車は、廃棄資源としても価値がある。鉄製のギア、アルミ製の車体、ワイヤー、チェーン機構やブレーキ機構の他の機械への転用、さらにミニ発電機にランプや空気入れまであるのだ。だから、廃棄の際の資源化スキルや、転用スキルという概念すら出てくる。


自転車道を作るスキルだって欲しい所だ。ただし、こちらのほうは修理スキル同様、魔法としてではなく、他人に教えられる技術という形が好ましいが。



さて、魔法でなく、知識で自転車を作製する系統の異世界系だとどうなるか?


上記のように自転車には高度の技術が使われている。一方で鉄道とか大砲とかが無いような世界観、すなわち鉄の生産量が少ない世界観だ。馬車だってゴムタイアや鉄の車輪でなく木を使っている時代だ。金属は、もしも使ったとしてもせいぜい車軸で、しかも、おそらくは青銅で木の車軸を補強する程度。たとえば、史記列伝の田単の話では、木製の車軸の端を切り落として鉄の金具をかぶせるという工夫をしただけで戦火を無事に逃れ、それが評価されて将軍になったという逸話があるほどだ。


だから、車体も基本は木で作るだろう。しかし、一旦歯車が入ると、簡単には行かない。歯車は木製だと摩滅で寿命が短くなるという難点が有る。そして、一番のネックはチェーンだろう。それは時計等に使われる歯車セットと同じく、少ない回転数で多くの回転を稼ぐ仕組み(あるいはその逆)だが、その作製には良質の鉄と、歯車より遥かに高度の技術が要る。他にベアリングも面倒な技術だ。


こういった材料・技術を考えると、自転車一台の作製に馬車百台分ぐらいの費用がかかるのではないか。


もっとも、それは現代仕様の自転車の話だ。一輪車に方向柁ほうこうだの前輪を組み合わさせただけの初期自転車なら、もっと簡単に作れる。なんせ、技術の一番のネックである歯車系が無いからだ。


そういう自転車は、チェーンや歯車による回転数の増幅こそないが、車輪が大きければ大きいほど、足一回転当たりの移動距離は長くなる。さらに歯車もギア比を小さくすれば、木製でも寿命は長くなるし、小さな方の歯車だけなら金属製にする手もある。


このような一輪車仕様なら、早歩き(時速7-8km)よりも若干早いペース(馬車並み)で長時間漕げる筈だ。荷台こそ無いが、前輪を2つにして逆三輪車にすれば、そこに荷物も乗せられよう。


異世界を走る自転車。安定性や操縦性は現代版に劣るが、きっと人気商品に……。


結果、自転車操業になるかもだけど。

転生した者って、

ジ『転』者

って読んでも良いですよね?

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