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「本当の対価」

更新遅れました。

中々、次の下書きの出だしが思いつかなくて何とか書き上げて今更新です

(……このくにの……ぇつぼぉ(絶望)?)


 女の口から出てきた魔女に告げた願いの対価。

 その内容は余りにも荒唐無稽だった。


おぉして(どうして)……俺を……助けることが……?)


 アレンは当然ながら疑問に思った。

 どうして自分を生かすことが人々の絶望に繋がるというのかと。

 その理由が彼には分からなかった。

 しかし


「ふ~ん。

 まあ、いいわ。乗ったわその話」


「……っ!?」


 魔女は迷うことなくその提案に乗った。


「……疑わないのですね?」


 女は少し後ろめたそうに言った。


「ええ……

 何せ、このことに関してはあなたの提案には偽りはないもの。

 あるとすれば数多くの選択肢の中からそれを選ぶという決断。

 あなたの罪と後悔。

 それがあなたから得られる私の財よ?」


「……っ!」


 魔女は上機嫌になった。

 女にその決断を選ばすこと出来た。

 それだけでも、魔女にとっては十分過ぎる余興であったのだ。

 自らの生きる糧となる質も量も莫大な絶望すらも魔女にとっては既についでになりつつあった。

 女は魔女のその勝ち誇った言葉に自らの愚かさを既に覚悟していたのに気づかされてしまった。


「それに―――」


 しかし、魔女はそれだけにとどまらずまだこの契約に何か得難いものを感じていた。


「―――そこの彼を手に入れられるのも悪くないもの」


(……ぇ)


「!?」


 魔女はアレンを見て何処か執着染みた感情を露わにした。


「あなたが生かしたいと思っているということはこの人、あなたにとっては大切な人なんでしょ?」


「ぐっ……!!」


(え……)


 魔女の指摘に女は顔を歪ませた。

 それは明らかな焦りであった。


「その様子だとやっぱりね」


 そして、魔女もまた表情を歪ませた。

 それは女が苦悶の表情を見せたことへの愉快さだった。


「大方私にその人を助けさせた後は対価だけで済ませようとして見逃させようとしたんでしょ?」


「そ、それは……」


 女は既に動揺を隠すということを忘れていた。

 自らの思惑が魔女に見透かされていたことと自らの企てが無駄になろうとしていることに対してのものだった。


「でも、残念。

 私、個人的に彼に興味を持っちゃったの」


「ぇ……」


「!?」


 女の誤算。

 それは魔女が少年に興味を抱いたということだった。


「何より魔女相手に何かを奪われることを覚悟しないで契約を持ち込むなんて虫のいい話だと思わないかしら?」


「!?」


 魔女は女に対して冷たい笑みを見せて言った。

 女は甘く見ていた。

 魔女との契約とはただの損得によるものではなく、魔女に対する「敬意」と言う名の恐怖と絶望が求められていることを理解しなかった。

 それが神が相手だとしてもだ。


「……っ」


 この瞬間、女の敗北は決定的なものとなった。

 「対価」の意味を履き違えたことで彼女は大切なものを魔女に渡さなくてはならなくなってしまったのだ。


「……わかりました……」


「……ぇ」


「…………………」


 女は苦渋を選んだ。


「……彼を助けてください」


 それしか選ぶことが出来なかった女はそう言った。

 自ら選択が愚かなものだと理解しながらもその愚かさ故にアレンを助けて欲しいと頼むしかなかった。


「わかったわ。

 契約は成立ね」


 魔女は心の底から喜んだ。

 目の前の女から大切なものを奪い、女の誇りも挫き、これからしばらくは退屈しないで済むことが楽しくて仕方がないのだ。


「………………」


「……?」


 女は少年に背中を向ける一瞬、アレンに対して悲しみと切なさ、罪悪感を込めた眼差しを向けた。


「……ごめんなさい……アレン……」


「……ぇ?」


 本人は意識してないのか聞こえない程の小さな声でアレンに謝罪の言葉を残して静かに消え去っていた。

 そして、


「え~と、アレンだったけ?

 これからよろしくね?」


 魔女は少年を見て笑った。

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