「罪の証」
明けましておめでとうございます。
遅れながら、更新させて頂きます。
今年もよろしくお願いします。
「アレンだって……」
「なあ、まさか……」
「嘘だろ……」
人々は十年ぶりに姿を現したかつてのもう一人の救世の英雄の姿に驚愕し、そして、恐怖した。
忘れられた英雄。
十年前、勇者に嫉妬し国を追われた愚かな男。
人々にとっては恥知らずな存在であり、普段ならば彼に対して人々は罵声と敵意を向けていただろう。
しかし
「十年前と……見た目が変わってねぇ……」
十年も経ったというのに彼は全く年を取っていなかった。
全く老いることもなく、若さを維持し少年と青年の中間の姿なのだ。
「………………」
アレンは自らに対して向けられる人々の目を何も感じなかった。
彼の目にはただただ虚無しかなかった。
「ねえ?何とも思わないの?
十年ぶりなんでしょ?」
魔女は彼に煽る様に訊ねた。
「別に何とも思っていない」
魔女の問いにアレンは興味がなさそうだった。
彼にとっては十年前に自らを追放した国や、そして、人々はどうでも良かったのだ。
「へえ~?
じゃあ、私の為に来てくれたの?
嬉しいわね!」
「………………」
それを聞いて、魔女はわざとなのか、そうではないのか、アレンにここに来た理由は自分を助ける為だったのかと嬉しそうに訊ねた。
それに対して、アレンは何も返せなかった。
(あの人が……アレン……)
周囲が怯え、警戒し、自らの父親が腕を失うと言う状況の中、レオンはただ一人冷静さと興奮を覚えていた。
レオンは剣を学ぶことばかりに集中していた。
その中でアレンの存在を知り、歴代最強の剣士の名を持つ彼に憧れていた。
(すごい……)
自分にとっての憧れの英雄が先ほどの無数の矢を全て叩き落すという離れ業を見せた。
この状況にも拘らずレオンは僅かながらであるが年相応の一面を見せた。
皮肉にもそれは周囲の大人を見てきたことで抑えていた子供らしさの発現だった。
「て、てめぇ……」
「………………」
人々が魔女の恐怖と十年ぶりに姿を現した姿の変わらないアレンへの戸惑いを抱いている中、アレンにエドワードは痛みの中で彼への憎しみをぶつける様に睨みつけた。
それに対してアレンは何とも言えない表情をしていた。
「よくも……俺の腕をぉ……!」
「………………」
エドワードは自らが右手を失った原因をアレンにあると言わんばかりの言葉をぶつけた。
いや、右手だけではない。
今、自分が置かれている全ての原因は目の前のアレンが仕掛けたことだと思っていた。
「そうよ!!
アレン!何処までも私達の邪魔を!!」
「いい加減にしなさいよ!!」
「終いには私怨で魔女の味方をするなんて!!」
「しつこいわ!!」
「もう口を挟まないで!!」
エドワードの妻たちは夫に続いて挙ってアレンを罵倒した。
今、自分たちを不安にさせ、窮地に立たせているのは目の前の男だ。という考えに走ったのだ。
アレンはそれに対して、ほんの少し目を瞑った。
「あなた達、本当におめでたいわね」
『!?』
そんな見るに堪えない醜劇を魔女が止めた。
いや、正確にはもっと彼女たちを弄る為でもあった。
魔女のその声は今まで出して来なかった程までに冷たいものであった。
「アレンがあなた達に復讐?
馬鹿なの?
あなた達にそんな価値があるとでも思っているの?」
「なっ!?」
「どういうことよ!?」
打って変わって魔女は目の前の元勇者とその妻たち、いや、この場にいる全ての人間をまたしても嘲笑った。
そのことにクレアとローズは怒りを露わにした。
「だって。今回のことは私が望んだものですもの」
「え……?」
「は……?」
魔女はどうして自分がこの様にして王国や勇者、そして、かつてアレンを裏切った人間を苦しめているか、その動機を明かした。
「私はただあなたたちの絶望が欲しいだけ。
たったその為だけにここにいるの。
要するにアレンの意思は関係ないの。
アレンが自分たちに復讐したいなんて本当に愚かで浅はかね」
魔女は残酷に無邪気に語る。
ただ自分が彼らの絶望を求めた。
それ以上でもそれ以下でもない。
その事実だけを突き付ける。
それは『お前たちがこの様な目に遭っているのは悪意でも敵意でもなく、ただ理由もないことである』というものであった。
「ま、でもあなた達には感謝しているわ?
あなた達がアレンを裏切って、苦しめて、不幸にしてくれたお陰で私は彼とあの女と契約してあなた達の絶望をいただける。
ありがとうね?」
「な、何よそれ!?」
「それって結局アレンに頼まれたってことでしょ!?」
「そうだ!!裏切り者め!!」
「関わらないでよ!!」
エドワードの妻たちはこぞってアレンを罵倒した。
今、自分たちを不安にさせ窮地に立たされているのは全て、目の前の男のせいだという考えに逃げ続けた。
「馬鹿馬鹿しいわね」
『!?』
そんな見るに堪えない醜劇を魔女が止めた。
魔女のその声は今まで出して来なかった程までに恐ろしく冷たいものだった。
「アレンがあなたたちに復讐?
馬鹿なのかしら?
あなたたちにそんな価値があるとでも本気で思っているの?」
「なっ!?」
「どういうことよ!?」
打って変わって、目の前の女たち、いや、この場にいる全ての人間をまたも嘲笑した。
そのことに特にクレアとローズは怒りを露わにした。
「だって、今回のことは私が望んだものですもの」
「え?」
「は?」
魔女はどうして自分がこの様に王国や勇者、そして、かつてアレンを裏切った人間を苦しめているのかを明かした。
「私はただあなた達の絶望が欲しいだけ。
たったその為だけにここにいるの。
要するにアレンの意思は関係ないわ。
アレンが自分たちに復讐したいなんて本当に愚かで浅はかね?」
魔女は残酷に無邪気に事実を語る。
ただ自分が彼らの絶望を求めた。
それ以上でもそれ以下でもなくそれ以外でもない。
その事実を突き付ける。
それは『お前たちがこの様な目に遭っているのは悪意でもなく、敵意でもなく、ただ理由もないことである』ということであった。
「ま、でもあなたたには感謝しているわ?
あなたたちがアレンを裏切って、苦しめて、不幸にしてくれたお陰で私は彼に出会えてあなた達の絶望をいただける。
ありがとうね?」
「な、何よそれ!?」
「だから、アレンに頼まれたってことでしょ!?」
「そうだ裏切り者のアレン!!」
「恥を知りやがれ!!」
「お前のせいだ!!」
魔女は自分が彼らを不幸にしているのは自らの欲望であると明言したが、それでもなおクレアとローズは自らに降りかかる全ての不幸と絶望をそんなもので済まされたくなく、論理性もなくアレンを責め、人々もそれに同調した。
人間は自らに舞い降りた不幸を誰かのせいにしたくなるのだろう。
そうすることで世界と運命の無常さと無情さを否定し、自らを少しでも特別なものと思いたいが為に自らの不運に原因を求める。
それが慰めになるからである。
「……本当に都合のいいことしか考えられないわね」
魔女は人々のその姿に呆れを深めた。
いや、楽しくて仕方がなかった。
「まあ、それでも……」
魔女は人々の愚かな怒りを笑いながら、この中で現実を受け止め青ざめている人間たちを見た。
「な、何という……」
それは王を含めたこの国の上層部であった。
人々の、いや、事情を知っている勇者たちすらも現在進行形で行っている愚行に王たちは絶望を募らせた。
それを見て魔女は何とも言えない喜びの感情を抱いた。




