僕の幼馴染(女)と親友(男)が修羅場なんですが
その日、俺は見てしまった。
放課後の教室。
向かい合う幼馴染の円藤里奈と親友の岡崎裕が二人きりのいい感じの雰囲気の中。
「ファーストキスは幼馴染っていう定番があるの!」
「どこのラブコメだ!ファーストキスは親友って決まってる!」
雰囲気ぶち壊しで僕のファーストキスを奪い合っているところを。
翌日
ピンポーン。
学校の準備をしていると、インターホンの音がする。
いつもの事だ。いつもこの時間になるといつも里奈が迎えに来る。
「はいよー」
ちょうど準備が終わったのでドアを開ける。
ドアの向こうには—―――。
「あたしが先だった!」
「何をいっているんだ!ボクが先だ!」
喧嘩をしている里奈と裕の姿があった。
「まあまあ、落ち着いて……で、何で喧嘩なんかしてたの?」
状況を把握するために質問をすると。
「「どっちが先に勇馬の家のインターホン押したか喧嘩してた」」
こういうときだけは息ぴったりな二人だな。
「ああ、それから何で裕がいるんだ?いつもはいないだろ」
すると、裕は頬を少し赤く染めながら。
「だって……お前に会いたくなったから……」
「それは――」
「顔赤らめてもかわいくないから」
「お前にはいってない」
僕が答えようとしたところに里奈が冷めた答えを返した。
「ところで勇馬。今日一緒に帰ろ?」
「猫をかぶるな円藤」
「猫なんてかぶってないし」
「嘘つけ」
「嘘なんてつてませんー」
里奈と裕が仲がいいのか悪いのかわからないようなやり取りが始まる。頼むからはっきりしてくれ。
学校この二人はいつもこんな感じだ。
たぶん、今日裕が俺を迎えに来たのは昨日見たあの出来事が一端だろう。
「なあ。今日確か勇馬の誕生日だったよな?」
裕は里奈と喧嘩することより俺と話すことを優先したのか、俺の横で行われていたやり取りをやめ、そう聞いてきた。
「ん、あ、そっか」
確かに今日は俺の誕生日だ。
「そうそう、はいこれ!」
「おまっ、勇馬はボクと話してるんだぞ!」
いきなり俺と裕の間に入ってきた里奈は、小さいプレゼント箱を俺に差し出していた。
「これ何?」
「わかんない?私から勇馬への誕生日プレゼント‼」
「うん、わかんない」
「え、なんで?」
「渡すタイミングがだよ!なんで登校中に渡すんだよ⁉」と言おうとしたところで、やめた。
後ろから車が近づく音。
「ふっ!」
俺はとっさに里奈と裕の手を引いて、車にあたらないであろう自分の方へと寄せた。
だが車が通ることはなかった。
どうやら俺たちのいる前の道で曲がったようだ。
「え、どうしたの勇馬?」
「いきなり抱き寄せるなんて、大胆なことするな。勇馬……」
「え?」
何を言っているのかわからなかったが、下の方から二人の声が聞こえたので自分の胸を見下ろして気づいた。俺の胸に里奈と裕の顔が埋まっていた。
そして、里奈を抱き寄せている左の腹に感じるなかなかに柔らかい感触。
「うわっ!悪い!」
俺はとっさに二人を抱きしめていた腕を離し解放した。
それと同時、幸せな左の感触はなくなった。
里奈意外とあるんだな……じゃない‼何を考えてるんだ俺は⁉
「どうしたの?勇馬」
顔を赤らめながら聞いてきた。
「いや、何でも、ない……」
「ほんと?」
「ほんと、ほんと」
「ならいいけど。気になる事があったら言ってね?」
「う、うん。分かった」
里奈は納得していないようだが、簡単に諦めてくれた。
「卑怯だぞ、里奈」
「何が?」
何かに気づいた裕が、里奈に言う。
頼むから余計な事を言わないでくれ、裕。
「自分の胸を当てて勇馬に色仕掛けするなんて!」
「はぁっ⁉」
裕の発言に変な声を出して、収まり始めていた顔の赤らみを先ほどより赤く染める。
言いやがった!俺がどうにか誤魔化したのに!言いやがった!
「え、ええ、えとえと。……ゆ、勇馬になら、い、いい、よ?」
なんでまんざらでもなさげに言うんだ!
言い方もなんか艶っぽいし!
「ああ、もう!俺先行くぞ!」
俺は逃げるように学校へむかって走り出した。
「まってくれ勇馬!里奈が変なこと言うから!」
「はぁ⁉私のせい⁉」
「そうだよ!」
「そんなことないね!」
「ある!」
「ない!」
ああ、もううるせええええ⁉