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第2話 適合テスト、その結果

ー「じゃあ、次は…橘さん!」

江崎桃香は橘花梨へと笑顔を向けた


「は、はいっ!」

跳ねるようにして背筋を伸ばし橘花梨は立ち上がる。



「え、えっと…橘花梨です。よろしくお願いします。4月3日生まれ、血液型はAB型です。

趣味は…ショッピングかなぁ…雑貨屋さんが好きなんです。

…あとは、合成異質同体討伐隊(シナプス・フォース)に入隊できて凄く嬉しいです!皆さんと一緒に努力していきたいです。

よろしくお願いします!」

橘花梨はぺこりと頭を下げた。

(あがり症なの、治さなきゃなあ)




それからしばらく他の隊員の各自己紹介が続き、

最後尾の列が紹介を終えた時、

江崎桃香はありがとうございますと小さく声を出し

顔の前で両手を合わせ笑顔を作り直した。



「それでは続いて、皆さんのテストの結果を配布しますね〜」

テスト?そんなもの受けていない。なんの話だ?隊員達は各々ざわつき始めた。



「皆さんには入隊前にビッグ・マザーからいくつかの質問を受けてもらっているはずです。

簡単な自己紹介からたわいのない質問、皆さんの意思表明まで、

あの質問は全て、皆さんのシナプスとの適合(シンクロ)率や適合しやすいシナプスの(スタイル)を確認するための作業だったのです!」


ビッグ・マザー?シンクロ率?(スタイル)

聞き慣れない言葉が並び隊員達はみな頭にクエスチョンマークを浮かべ怪訝そうな表情で江崎桃香を見詰めた。


「はい、詳しいことは追って説明するからね」

江崎桃香は隊員達をなだめた。不満そうながらも、隊員達は質問を押し殺して素直に話を聞くことに集中した。

彼女の声、口調には不思議と人を落ち着かせ、その気にさせる魅力がある。



「これから皆さんに見開きの紙を1枚ずつ配ります。

表紙には名前が明記されているので、皆さん自分の紙を受け取ってくださいね。

じゃあ、前から紙を回してください〜」

最前列の隊員に2つ折りになった数枚の紙が配られた。各々のリズムで紙を後ろの席へと回していく。



「はい、橘さん」

橘花梨の前の席の少女、自己紹介で名乗った名前は、(かすみ) 無花果(いちじく)

霞無花果は振り向き、身体ごと後ろに向け紙を手渡した。

自己紹介の時は席が後ろであったこともあり、顔や表情を伺えなかったが、

肩に掛からない程度の長さで緩くウェーブした髪先が特徴的で優しい目元が綺麗だった。

可愛い人だな、橘花梨は素直にそう思った。


「ありがとう」

橘花梨は微笑み返し紙を受け取った。

数枚重ねられた紙の1番上には橘花梨の名前が明記された物があった。

橘花梨はそれを机の上に避け、残りの紙を手にして振り向いた。

後ろの席の少女…名前は確か、七志(ななし) 乃詩(のし)


「はい、七志さん」

橘花梨は緊張のため頰を引きつりながらも、

出来うる限りの自然な表情を意識し微笑みを浮かべ紙を手渡した。


「おう、ありがとう!」

七志乃詩は勢いよく紙を受け取る。活発とか元気とかいう言葉が似合いそうな少女だ。

前髪は目に掛からない程度に長さを整えられており、耳は髪に埋もれているが、髪全体は梳かれていて軽やかなマッシュヘアが特徴的だった。

顔全体を使って表現する笑顔に、思わずこちらまで笑顔になってしまう、そう思うと同時に

橘花梨は先程までの緊張が吹き飛び自然な笑顔を浮かべていた。




「はい!それでは皆様に行き渡りましたね〜。

一緒に内容を確認していきましょう!」

隊員全員に配り終えられた頃、江崎桃香が声をあげた。


「では皆さん、2つ折りになっている紙を開いてみてください。左のページには5つの評価項目があると思います。

そこにはそれぞれあなたが適合しやすいシナプスの(スタイル)が明記されています。

一緒にひとつずつ確認していきましょう!」



(まるで通信簿だ…)

橘花梨は思った。

確かにそれは丁度通信簿のように、5つの行項目があり、各項目の隣にA、Cなどアルファベットが記入されていた。



各々が"通信簿"に目を落としているなか、江崎桃香が口を開いた。

「まず、シナプスの(スタイル)について説明しましょう。

シナプスは皆さんの脳波…そうですね、性格だったり感情だったりに大きく作用しています。

皆さんの人柄によって、得意とするシナプスの種類が変わってきます。

シナプスは未だ不明瞭な点が多くてハッキリしたことは言えないのですけれども、皆さんの心のパワーのようなものと思ってください。

では、そのシナプスの種類についてですが、

大きく分けて5つに分類されます。


1つ目は、『アライズ』。

これは身体能力、運動能力を上昇させるシナプスです。力強くなれるパワーアップのシナプスですね。


2つ目は『シュート』

シナプスを物質として放つことに長けたシナプスです。例えるなら…そう!指からビームが出せる!みたいな!!


3つ目は『クリエイト』

シナプスの力を利用して質量のある物体、物質を創る(スタイル)です。武器や防具の精製などで、部隊のバックアップを頼まれることも多いですね。


4つ目は『コネクト』

この(スタイル)は精神攻撃を得意とします。相手の精神を惑わしたり、場合によっては操ることもできるそうです。ビッグ・マザーもこのシナプスの力を使ってみなさんに語りかけていたのです!


最後、5つ目は『ストレンジ』

これは先程紹介した4つの(スタイル)のうちのどれにも属さない(スタイル)です。ごく稀に、他の4つの(スタイル)との相性が悪いのに、何か1つ秀でた驚異的な力を発揮することがあります。そんな人達の分類が難しい(スタイル)をこれに分類しています。


と、まあ(スタイル)とシナプスに関する説明はこんなところですかね。

見開きの右のページには現時点でのシナプスとの適合(シンクロ)率が明記されていますが、これはシナプスの力を使い熟せるかどうかの値になるのだけれど、こちらはこれから伸ばしていきましょう、始めは低くて当然です!

あ、あとテストから見えたみんなの性格診断や私からのコメントもあるから一応目を通してね」



(やっぱり通信簿だ!!)

橘花梨は心の中で声を上げた。



「シナプスの(スタイル)については、それぞれ上から順に

A B C D

と四段階評価が出されています。

皆さんそれぞれ得意な(スタイル)を確認してください!」

江崎桃香は一通りの説明を終え、ふぅ、と一息ついた。



橘花梨は手元の"通信簿"に改めて目を落とした。

江崎桃香に言われた通り、各項目を確認した。




『アライズ』 ー B

『シュート』 ー C

『クリエイト』 ー B

『コネクト』 ー C


『ストレンジ』 ー S

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