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7-17. 団子虫

毎日『数学者』をご愛読頂き、ありがとうございます。


突然で申し訳ありませんが、近いうちに再びちょっとお休みを頂くかもしれません。

その際には、活動報告にて改めてお知らせいたします。

ゴロゴロゴロゴロッ!!


突然、転がり始めたバランスボール大の岩球。

その先には僕達、それも先頭のシンと神谷。


「何っ!」

「わぁっ————


だが、シンと神谷は好奇心ゆえか完全に油断しており、反応が遅れた。

僕達は距離があったので避けられそうだが、あの2人が逃げ遅れている。


ヤバい。

このままじゃあ、あの2人が岩球に轢かれる。


「オメェら、避けろ!」

「勇太くんっ!」

「シーン!」


シンと神谷に向かって叫ぶ強羅。

しかし、迫り来る岩球を見つめたまま動かないシンと神谷。


「「アァッ…………!」」


いや、()()()()ようだ。

足が竦んでいるのか?



ちょっとこれはマジでヤバい。


ステータスがクズな僕じゃ助けに行っても無駄。

シンと神谷は動けない。

このままでは2人が轢かれる。

あの大きさの球、それも岩製の物にぶつかれば大ケガ不可避だ。


そして、今も2人に迫る岩球。



どうすればいい?


考えろ、僕!

考えろ、僕!






――――そうだ。

と、とりあえず、ステータス加算だ!

DEFさえ上げとけば、なんとかなるかもしれん!


【乗法術(マルチプリケー)――――

「「ぅおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」


ん?!

ステータス加算の魔法でDEFを上げようとしていた時、僕の隣から2つの雄叫びが上がった。


それと同時に、僕のすぐ隣を2つの影が風と共にすり抜け、シンと神谷へと駆けていく。


その影は……ダンと盾本だ!



ダンと盾本は雄叫びを上げつつシンと神谷へと駆ける。

その間も岩球の勢いは衰えない。



だが、シンと神谷に辿り着いた。

迫る岩球に間に合った。


「ダ、ダン!?」

「盾本……君!?」


シンと神谷が驚いた表情でそう漏らすが、ダンと盾本の耳には入らない。



ダンと盾本はそのまま岩球の前に立ち、シンと神谷を庇う姿勢。

ダンは背中から大盾を、盾本は腰から鍋の蓋を手に取り、それぞれ前に構えて腰を落とす。


……鍋の蓋!?

まぁ、それは良い。後で考えよう。



そして、岩球がそれぞれの盾に直撃する瞬間。

2人がスキル名を唱えた。


【硬叩Ⅳ】(ハード・バッシュ)!」

【硬壁Ⅱ】(ハード・シールド)!」






ガァァーーーーン!!!

「ぅおっ!」

「グゥッ!」


物凄い音を立てて、岩球はそれぞれの盾に衝突。

ダンと盾本も盾を通して衝撃を受け、声が漏れる。


しかし、球の勢いはそこで止まらず、そのまま盾と球の押し合いになった。

盾に触れてもなお球の回転は止まらない。徐々にその勢いが落ちていくのは見えるが、相手は岩の塊だ。重さが半端ではない。


ダンと盾本の踏ん張った足がズズズッと押し退げられる。



「くそぉっ!」

「負けるかぁぁぁっ!」


だが、2人も掛け声と共に一度足を踏ん張り直す。



徐々に球の回転が落ちていく。

ダンと盾本も徐々に踏ん張りが効くようになる。


そして、球は止まった。






ダンと盾本が盾を下げ、球を見る。


「よし!」

「止まった!」


止めたのを確認すると、2人揃ってそう叫んだ。

そして、その直後。



ガガガガガ……


「ぅおっ!?」

「まだ動くの!?」


球が急に()()()()()

徐々に球はその内側を晒すようにして別の形に変化していく。



そして、数秒後。


「こ、コレは…………」

「団子虫……かな?」



僕達の目の前からは2つの岩球は消え、代わりに同じ大きさの団子虫が足をピクピクさせてひっくり返って居た。






「と、とりあえず。シン、怪我は無えか?」

「ダ、ダン! ありがとうございました!」

「勇太くん、大丈夫だった?」

「盾本君、済まない! 油断していたよ」


ダンと盾本が振り向き、声を掛ける。


シンと神谷に怪我はないようだ。

ダンと盾本も、見た所大丈夫だろう。



フゥー、良かった。

かなり危ない所だった。冷や汗モノだな。

そして盾術戦士コンビ、ナイスプレー。



「ドキドキだったねー!」

「ホントだぜ、全く。2人とも冷や冷やさせやがって」

「みんな無事で、ほんとに良かったよ」


僕含め、後ろで見ていたメンバーもホッと胸を撫で下ろす。


「気を付けろよ、シン」

「はい……すみません、先生」

「まぁ、でも迷宮(ダンジョン)の怖さが分かる、いい経験になったかな。気を抜けば大怪我だ。皆、気を付けて行こう」

「「「はい!」」」


改めて気を入れ直す。


「所で数原君。君は一体これが何だと思う?」

「ん? えー、何だろ…………団子虫?」


盾本がさっき呟いてたのをそのまんま再呟きしてしまった。

ちなみに、その団子虫は今も同じ姿のままだ。

ひっくり返って倒れている。

盾に頭をぶつけて意識が飛んじゃったのかな?



「私にもそうとしか見えない。先程の岩球の状態、背中一帯を覆う岩の形状、内側に無数に備えられた脚……団子虫だな」

「ですよね……。僕はあの岩球、てっきり(トラップ)とかかなって思ってたんだけど」


迷宮(ダンジョン)といえば(トラップ)

さっきのあの状況から連想するのは、某考古学教授兼冒険家が宝探しをするアメリカの映画だよな。

岩球に追いかけられるシーンだ。


「だが、こいつは……(トラップ)ではなさそうだ。寧ろ魔物ではないかな?」

「魔物か。魔物ね————






…………ん? ()()

あぁ、そうだ! 思い出した!


「あぁ!」


その瞬間、『魔物』というワードをキッカケに僕の頭で記憶が蘇る。

魔物図鑑のあそこのページ、確か魔物の名前は……



「どうしたんだい、数原君?」

「神谷、思い出した。コイツは『ロック・ピルバグ』だ。厄介な奴なんだよ」

「そうなのか。ちなみに、どの点で厄介なんだ?」

「確かコイツは『倒しづらい』魔物でな。全身を覆っているのは洞窟の壁と同じ岩で、魔法攻撃も斬撃も殆ど効かないんだよ」

「成程、壁に魔法や攻撃を放つのと同義という事か。では、こいつに対する対処法は何かあるのか?」



対処法、つまり倒し方か。

ページの右下……


「えーと……『打撃』って書いてあったな。盾や体当たりで衝撃を与える事で、回転するロック・ピルバグを脳震盪させれば良いらしい。上手く誘導して、壁に体当たりさせても可。で、倒れて晒け出したお腹をザクッと。お腹は普通の肉らしいからな」

「成程。腹部が弱点という訳か」

「そうっすね」

「よし、対処法は分かった。ありがとう、数原君。これで以降団子虫が現れても大丈夫だな」

「おぅ」






そんな感じで、2層目で起こった『岩球転がり事件』は幕を下ろした。

この後も2層目の探索中に岩球が現れたが、どれも主にダンと盾本のお陰で軽々と倒して行けた。


魔物図鑑サマサマだな。

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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