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7-13. 勘

学生トリオ、幼馴染トリオ、盾本、そして僕の8人グループは迷宮(ダンジョン)の1層目を捜索していた。


マッピングを行う神谷とシンを先頭に、迷宮(ダンジョン)内を歩き回る。


「突然襲って来るコウモリ共が面倒だぜ、全く。なぁ、盾本?」

「本当だよね、拳児くん。武器じゃダメージ与えられないし」



そう。

迷宮(ダンジョン)探索をする上で面倒になっているのが『ケーブバットの奇襲』だ。

洞窟の天井にはくまなくケーブバットが止まっているんだが、攻撃したり大声を出したりでもしない限りは襲って来ない。普通に歩いている分には問題ないのだ。

だけど、いきなり頭上から襲って来るケーブバットが時々居るんだよね。


幸いケーブバットのATKは低く、牙で噛んだり爪で引っ掻かいたり程の攻撃なら、僕のDEFでも十分賄える。

HPが減ったとしても僅かな程だ。


だが、ケーブバットの武器は『数』。

群勢で攻められると僕達も堪らない。



「まぁ、しょうがないよ。ケーブバットは物理攻撃を躱しやすい代わりにMND(魔法防御)を捨てたようなモンなんだ。コースと可合に任せるしかない」

「まぁ、そりゃそうだけどさ……っていうか、どうして数原はそんなにケーブバットに詳しいんだ?」

「ん? あぁ、『魔物図鑑』で読んだからね」

「へー、どおりでよく知ってる訳だぜ」



ケーブバットの対処法は『魔法攻撃』。

剣術戦士(シン・神谷)盾術戦士(ダン・盾本)格闘戦士(  強羅  )も殆どの攻撃がケーブバットに当たらず、コースと可合の【水弾Ⅶ】(ウォーター・バレット)【光弾Ⅱ】(ライト・バレット)に頼りきってる状況だ。

なぜか物理攻撃は当たらないのに、魔法攻撃はモロ直撃するんだよね。

シンなんて【強斬Ⅴ】(ストロング・ブレード)を使っていたにも関わらず、バット達には避けられてたしな。


ケーブバット、凄い回避能力の持ち主だ。

恐るべし。






まぁ、そんな感じで襲い来るケーブバットを倒しつつ洞窟を進むのだが。

僕達グループメンバーにも飽きが訪れ始めていた。



洞窟内を歩き、分岐を見つけては地図に書く。

書いたら、まず左から進む。

行き止まったら、そう地図に書いて引き返す。

元の分岐に戻ったら、今度は右に進む。


右の道も行き止まれば、さらに1つ分岐を引き返す。

右の道がまた分岐すれば、地図に書いて左に進む。


時々ケーブバットが襲って来るので、魔術師コンビになんとかしてもらう。


その繰り返しだ。



最初の方はゲームみたいだなって思い、皆面白がってやっていた。

のだが、もはや作業プレイなのだ。飽きは割と直ぐにやって来て、皆段々と顔に疲労の表情が見えてくる。


これを楽しんでやっているのは地図作りをやってる神谷とシンだけだった。途中から僕も面倒になったので、無心で2人の背中を追うようになっていた。



「えーと、ここも行き止まり、っと」

「さて、それでは引き返して先程の分岐を右だな」

「ハァ〜、またか……」

「疲れたよー……」


元気な2人に対し、完全に集中を切らした残りの6人。



「なぁ、本当に下り階段あるのか?」


強羅に至っては迷宮(ダンジョン)そのものを疑い始める始末だ。


「いやいや、流石にあるでしょ、拳児くん。あの団長さんがそんな無理難題を出すとは思えないよ」

「俺たちの探索が足りない、って事だよね、多分」

「……ま、まあそうだな。美優と盾本の言う通りだわ」

「頑張ろうぜ、ゴーラさん」

「おう、ありがとな、ダン」


しかし、そんな感じでくじけそうになってもお互いに励まし合い、探索は続く。


いやー、メンバーが沢山居るって良いね。






そんな感じで気分の浮き沈みを何度も繰り返しつつ、迷宮(ダンジョン)内を歩き始めて何時間経った頃だろうか。


希望の光が差す出来事があった。



「ここも行き止まりのようだな」

「はい。この道も行き止まりー……っと」

「どうだい、シン君。地図の埋まり具合は」

「はい、えーと……結構埋まってきました。そろそろ下り階段が見つかってもおかしくないんじゃないですかね?」


マジか!

マッピング師のお告げだ!


「シン! 本当にー!?」

「確実ではありませんが、()()()だと」


え、勘?!


「え!?」

「おいおい、勘かよ!」

「シン君、根拠か理由は何か無いのかい?」

「はい、根拠も理由も特にありません。階段がそろそろ見つかりそうだ、そんな気がしただけです」


残念ながら、僕達が見た希望の光は幻だったようだ。

そこかしこで溜息が聞こえてくる。


「俺の期待、返してくれよー……」

「まぁ、仕方ないって盾本。神谷とシンにマッピングを任せてるんだ、僕達が文句を言う資格は無いし」

「計介くん、まあそうだけどさ……やっぱり————



「いや、シンの言った通り、そろそろ階段は見つかるかもしれねえぞ」


全員の気分がズーンと沈む中、ダンがそんな事を言い始めた。


「そうなの、ダンくん?」

「あぁ、カワイさん、多分な。俺はそう思う」

「けどよお、さっきシンは只の勘だって言ってたじゃんか。なんで勘なんかをそんなに信じられるんだよ?」

「それが()()()だからだ、ゴーラさん」

「なっ……どういう事だよ。訳が分かんねえ。俺達は、シンの野郎が理由も無く只の勘で言った『そろそろ階段がある』に期待して、落胆させられたんだよ! 勘に弄ばれたんだ! それでもお前はシンの言う事を信じるのか?!」

「あぁ」

「なんでだよ! その理由、教えろ!」



強羅の口調が段々激しくなってきた。


ヤバい。

強羅は機嫌が悪いと、些細な事でも速攻で喧嘩沙汰になるからな。

希望の光が一転、ダンと強羅の激しい火花にならなければ良いんだが……

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
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感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
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そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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