表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/548

7-6. 集合

目が覚めた。

朝の7時丁度だ。



さて、遂にこの日がやって来た。

勇者養成迷宮(ダンジョン)合宿だ。


合宿かー……

そういえば、僕は『合宿』ってのを人生でやった事ないからな。

まさか合宿デビューを異世界で迎えるとは……



ベッドを降りて窓へと向かい、カーテンを開く。


シャーーーッ

「うぉっ」


朝日が眩しい。

空は青く、幾つか雲が浮かんでいる。

街には人が現れ始めている。



朝日を全身で浴びつつ、両腕を伸ばして大きく伸び。


「っんんーー……」


フゥー、気持ちいい。

今日も朝からスッキリだ。


よし、じゃあ出発準備だ。

ハンガーに掛けておいた白衣(ロングコート)を羽織り、部屋に散らかる私物を集めてリュックに仕舞い込む。

後は忘れ物が無いかチェックして……。

あぁ、やべっ。洗面台に置いといた散魔剤、忘れるところだった。


散魔剤もリュックに放り込んで、準備完了。

部屋を出よう。



ガチャッ


「あ、おはようございます。先生」

「おぅ。おはよう、シン」


リュックを背負って部屋を出ると、丁度シンも部屋を出たところだった。


「もうコースとダンは先に下に降りているようですね」


コースとダンの部屋はドアが開けっ放しになり、その奥には空っぽの部屋が見える。

もうカウンターに鍵を戻して、ロビーで待ってるんだろう。


「そのようだな。よし、じゃあ僕らも行こうか」

「はい!」






宿の階段を下りてロビーに向かうと、そこには談話席に座るダンとコースが居た。


「おはよー!」

「おはよう、先生、シン」


コースが手を振って僕らを迎えてくれている。


「おはようございます」

「おはよう、コース、ダン。済まんな、待たせちゃって」

「大丈夫だ。俺らもさっき来た所だからな」

「うん!」


ダンの優男発言。

そう言ってくれると助かるよ。



「おや、おはよう。早起きだね」


そんな事を考えていると、カウンターの奥から宿のご主人が出てきた。


「おはようございます。これから迷宮(ダンジョン)に行ってきますので」

「そうなのかい。あそこの迷宮(ダンジョン)は鍛錬には向いているからね。頑張って来な」

「「「「はい!」」」」


ご主人からの激励。

有り難く受け取ろう。


「4泊、お世話になりました」

「いえいえ。迷宮(ダンジョン)から帰ってきたら、是非また寄ってくれよ」

「はい。その時はまた、のんびりさせて頂きます」


そんな感じでご主人に挨拶も済ませる。


さて、そろそろ出発しようか。

現在時刻は朝の7時18分。

北門には余裕で間に合うだろうけど、そうのんびりしてもいられない。


「じゃあ皆、準備は良いか?」

「はい!」

「オッケー!」

「おう!」


よし。


「それじゃあ」

「「「「行ってきます!」」」」


そう言って僕らはキュースー荘を出発した。






北門に続く大通りに入り、そのまま市街地を抜け、広大な牧場を道なりに通り過ぎる。

風車群が近くなってくると、段々と外壁(フェンス)と北(ゲート)が見えてきた。


そして、北(ゲート)の周りには多くの人が集まっている。



「人がいっぱい居るねー」

「アレが勇者様の一行ですか」

「そうだな」


段々と北(ゲート)に近づいていく。

……ん? どこかで見覚えのあるような……?


「そういえば、先生も勇者の一人なんだよねー?」

「そうだな」

「じゃあ、先生は他の勇者様方と知り合いなのか?」

「おぅ………………ん?」


勇者……一緒に召喚された仲間。

つまり、同級生。

知り合いなんかのレベルじゃない。毎日顔を合わせている仲だ。



そうじゃん。同級生じゃんか!

……久し振りに、皆に会える!!


どおりで『見覚えがあるな……』とか思った訳だ。

自分でも少しわかるくらい、顔に笑顔が出てしまう。



「知り合いなんかじゃない。友達だ」

「へぇ、先生の。()()()()の友達ですか?」

「そうそう」


そういえば、この合宿の名前、『()()養成迷宮(ダンジョン)合宿』だ。

そりゃあ、勇者(同級生)が集まってるのも当然だわな。


でもなんで、今まで皆に会えるって気付かなかったんだろうか……?



あぁ、多分アレだ。『ダンジョン』の響きに囚われて『勇者』を完全無視してたからだな、きっと。






「……君達。集合時間まであと5分だ。今のうちに人数確認をしておこう。美優、魔術師組は全員居るかい?」


剣術戦士の(ジョブ)を授かったクラス委員、神谷勇太が早速リーダーシップを発揮し、人数確認を始める。

彼にとっては何事も5分前がデフォルトなのだ。


「えーっと……うん。神谷くん、6人みんな揃ったよ!」

「分かった、ありがとう。戦士組も8人全員居るな。団長、会長、合宿参加者が全員揃いまし――――

「いや。まだだ、ユウタ殿。まだ()()()()が来てない」


神谷が王都騎士団の団長に報告するが、団長が低く深い声で一蹴する。

団長は如何にも重そうな鎧を全身に着け、大剣を腰に差し、マントを羽織っている。

身長も1メートル90程あり、正に『大男』という呼ぶに相応しい。


「え、勇者は戦士も魔術師も揃っていますが……。()()()()とは、一体誰でしょうか?」

「あぁ、ソイツは……戦士でも魔術師でもないが、勇者だ。お前も知っている奴だ」

「あたしゃあの小僧の参加は認めた訳じゃなんだけどね」

「勇者? 小僧? 他に誰が合宿に参加す――――

「お、そう言っている間に来たぞ。アイツらだ」


団長が市街地の方を指差してそう言う。

神谷も振り向き、団長の指差す先を見る。

その周りに居た勇者達もつられるようにして振り向く。


「ん?」


牧場の中央を貫き、テイラー市街地から北へと向かう道。

その上には、こちらへと歩いてくる4つの人影が見えた。


そしてその先頭に立つ男。


こちらの世界ではそう多くない黒髪を持ち。

割と大きめなリュックを背負い。

白衣のような真っ白のロングコートを羽織り。


そして、連れであろう後ろの3人と談笑するその顔。


「あ、あれは……!」

「……数原くん!」






さて、風車群も通り過ぎ、だいぶ北門にも近づいてきた。

ここまで来ればそれぞれの顔も分かるな。


……おっ、マントの大男? がこっちを指差す。

つられてこっちを見る勇者2人。


あれは……神谷、それと可合か。


僕の存在に気付いたようだな。

大きくこちらに手を振ってくれる。



「おぅい、数原君!」

「数原くーん、久しぶりー!」


神谷と可合の声が届いてきた。

他の同級生の声や、手を振る姿も分かる。



「おぅ、皆! 久し振り!」


皆のその姿を見て、無意識に僕の顔は笑顔で満たされ、僕の足は走り出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

 
 
Twitterやってます。
更新情報のツイートや匿名での質問投稿・ご感想など、宜しければこちらもどうぞ。
[Twitter] @hoi_math

 
本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ