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1-4. ステータス

「…………んんっ……」


目が醒めた。




「…………眩しっ」


明るい光が瞼越しに目を突き刺す。




「……朝か」


光に手をかざしながら目を開ければ、部屋は明るい。

もう少し寝たいんだけど……もう朝だ。



「……カーテン閉め忘れてた」


……しまった、昨日アキに言われてたのに。また怒られちゃうな。

そんな事をボーっと考えつつも上半身を起こし、朝陽の差し込む窓を眺める。




「…………おぉ」


雲一つない、朝方の澄んだ青空が窓に映る。


……そうだ。窓の下の景色はどうなってるんだろう?昨晩は真っ暗で何も見えなかったからな。

大欠伸をしながらベッドから立ち上がり、景色を見ようと窓へと歩み寄ると――――






「おおぉ……凄い!!」


思わず、感動の声が零れた。




窓のすぐ下には、この王城を守る城壁。

そこからずぅーっと先まで広がる、大きな街。


中世風の橙色の屋根に、石造りの建物。

そんな建物と建物の間を抜けて進む、石畳の道。

屋根から飛び出た煙突からは、朝食の支度なんだろうか煙が上がっている。


一際大きな道に目をやれば、品物を運ぶ人や荷物を運ぶ馬車。ジャラジャラと装備を纏って街の外の方へと歩いていく人。

朝早くにも関わらず、沢山の人がこの街で働いている。



そんな街並みがずっと続き……その一番奥に聳えるのは、王都をグルリと囲む外壁。

そしてその先には、終わりの見えない一面緑色の大平原。



……まるで、ファンタジーの世界そのものな景色だった。




「コレから僕達は、こんな街で……」


朝一の目覚めたてにもかかわらず……まるで初めてのRPGゲームを始める瞬間のような興奮を覚える。

想像も思わず膨らんでしまう。


あぁ、勇者生活……楽しみだな!




――――コンコン

「おはようございます、勇者様。朝食のご用意が出来ました」


……っと、使用人さんが僕を呼びに来たみたいだ。



「準備が済みましたら、昨日と同じ食堂までお越しください」

「はーい。分かりました!」


そうドアに向かって声を掛けつつ、時計を見ると……時刻は、朝食の時間の5分前。



「やばッ!」


のんびり窓なんか眺めてる場合じゃなかった!

今から顔を洗って歯を磨いてトイレに行って軽く寝癖を直して……そうしたらもう時間ギリギリだ!


とりあえず、急いで支度を済ませて食堂に直行しなきゃ!






「間に合ったー……」


なんとか時間ギリギリセーフで食堂の前に到着。

ドアノブに手を掛け、扉を開く。




「おはようございます……」


恐る恐る食堂に入ってみると――――既に、僕以外の全員が着席。

机の上にはパンにスープ、それとほうじ茶が並べられている。いただきますスタンバイ完了だ。




「おはよう、数原くん。今日もギリギリだったね」

「今日も中々攻めてるじゃねぇか。数原」

「数原君! 遅刻しないのは良い事だが、もう少し早く来たまえ!」


早速、可合・強羅・神谷の幼馴染トリオが迎えてくれる。

……けど、高校でも遅刻ギリギリが通常運転だった僕からすればこれくらい何とも思わないのだ。

慣れって凄い。



「計介、ココだ」


そんな事を感じつつも、そそくさとアキの隣に1つ空いた席へと向かう。

……流石はうちのアキさんだ。席を取っといてくれるなんて、本当に気が利くよ。



「……僕待ちだった?」

「ッたり前だろ」


ですよねー……。



「……大変失礼しました」


皆に向かって謝りつつ、席に着けば……朝食タイムだ!



「ではクラス諸君、手を合わせて……いただきますッ!」

「「「「「いただきます!」」」」」
















「ふぅ……」


朝食を食べ終わった僕達は、お茶を飲みながら食後の雑談タイムだ。

食卓のあちらこちらで、高校の昼休みのような雑談が交わされている。



「……なぁ計介」

「ん?」


そんな中、僕も隣に座るアキから声を掛けられる。



「ちゃんと部屋の鍵、掛けてきたよな? 忘れてたんなら今掛けて来い」

「大丈夫大丈夫。バッチリだよ」


超スピードで朝の支度を済ませてきたけど、ちゃんと昨日言われた通りに扉の鍵は掛けてきたのだ。



「じゃあ……昨晩はきちんとカーテン閉めたか?」

「えっ」

「だろうと思ったぜ」


表情でバレてしまった。



「くぅっ……流石はうちのアキさん、まさか何も言ってないのに見破るとは」

「クッキリと顔に出とるわ。あと俺はお前のモンじゃねえ」


……ちょっと時間が有ったらポーカーフェイスの練習でもしておこうかな。






「おはようございます、勇者様方」


そんな話をしている間にも、扉から王女様が現れる。……今日は精霊様は居ないんだな。

同級生達も雑談をやめ、食卓に座り直す。



「早速ではありますが、本日から皆様には勇者として生活して頂きたいと思います」


……そうだ。今日から僕達は魔王を倒す勇者。

強くなるために、本格的に動き始めるんだよな。


皆の視線もキリッと真面目になると……王女様は、言葉を続けた。



「では、本日最初は……皆様に『ステータスプレート』をお教えしましょう」

「「「「「おぉ……」」」」」

「「「「「ステータスプレート…………」」」」」


早速現れた如何にもなパワーワードに、食卓が騒めく。



「ステータスプレートは、この世界の人類ならば誰でも呼び出すことのできる、いわば『身分証明書』です。氏名・年齢をはじめ、体調、各ステータス、そして後ほどお話しする(ジョブ)等がいつでも確認できます」


へぇー……。

便利なモンが有るんだな。




「そんなステータスプレートを呼び出す方法ですが、そう難しくはありません。とりあえず『オープン・ステータス』と呟いてみてください」


……教え方、中々アッサリとしてんな。

本当にそんなんで出来るのかよ。


ただ、もう周囲では口々に『オープン・ステータス』が唱えられている。

半信半疑になりつつ、僕も王女様の言った通りに唱えてみた。




「オープン・ステータス……」


期待しつつも、少し不安でもあったので恐る恐るの小声だ。






――――けど。

変化は直ぐに起きた。




「……っ」


身体を襲う、謎の脱力感。



ピッ

「ん!?」


と同時に頭に響く、軽い電子音。

……そして。




「おぉっ?!」


目の前に、パッと青透明の薄い板が現れた。

僕の名前をはじめ、白字で何か色々と書いてある。


ザワザワしてきた周囲に目をやれば、同級生達も皆青透明の板を呼び出している。



「それでは、ステータスとステータスプレートについてご説明しますね」


そう言うと、王女様のステータス講習会が始まった。






……話を纏めると、こんな感じだ。


人間の能力の善し悪しを測る方法といえば、色々なモノがあるよな。

日本で言えば、いわゆる『偏差値』。あとは学校で行われる『スポーツテストの点数』もそうだ。


この世界では、『ステータス』というモノを使っている。

そして、それを確認する手段が『ステータスプレート』なのだ。


試しに、今の僕のステータスプレートを見てみよう。




===Status========

数原計介 17歳 男 Lv.3

(ジョブ):— 状態:普通

HP  20/20

MP  19/20

ATK 2

DEF 8

INT 7

MND 6

===Skill========

【自動通訳】【MP回復強化I】

=============




まず、1行目については……言うまでもないよな。氏名・年齢・性別、まさに身分証明書そのものだ。

すると突然現れたLv。コレはどれだけ人生経験を多く積んでいるかを表してるらしい。

一般人だとLv.10前後が相場だけど、冒険者や戦士みたいな戦闘職だとLv.30まで行く人も現れるようだ。Lv.50にもなれば伝説級、世界中にその名を遺せるんだって。


次に2行目。まずは(ジョブ)だけど……コレについては後程。今日のメインイベントなので楽しみに待っておこう。

『状態』ってのは、僕の身体に何らかの異常があるかどうかを教えてくれる欄。毒を受ければ『毒』、気絶していれば『気絶』と表示されるらしい。






「…………それでは、続いてその下の各ステータスに移りましょうか」



さて、以上で身分証明エリアはお終い。ココからがステータスプレートの本番だ。


3行目のHPは生命力。攻撃でダメージを受ければ減るし、休息や食事をとれば増える。0になると死ぬ。……中々な重要事項だ。

4行目、MPってのは『体内に溜めた魔力量』だそうだ。魔法を使えば減り、時間経過で元に戻る。

既に1減ってるのは、このステータスプレートを呼び出すために使った1らしい。



そこから下が僕の各能力を表している。単に「ステータスが高い」「ステータスが低い」っていう時は、この4個の高さを指すのが大体だそうだ。

ATK、DEFはそれぞれ物理的な攻撃力と防御力。ついでに筋力の強さや体の頑丈さもATKやDEFで測れるらしい。

INT、MNDは魔法に対する攻撃力、防御力を表している。

お分かりだとは思うけど、ATKやINTが大きい程与えるダメージは増え、DEFやMNDが大きい程受けるダメージは減るんだって。


……それにしても、なんだか全体的に僕のステータス低くないか? 全部一桁って。




まぁ、そんな事は良いとしてだ。

『ステータス』の4個の下はスキル欄。身に着けた様々なスキルや戦士の使うスキル、魔術師が使う魔法とかが表示されるようだ。


今の僕が持っているのは【自動通訳】と【MP回復強化Ⅰ】。

……地球とは違う『この世界』でも言語が通じたり、文字が読めていたのは【自動通訳】のお陰だったんだね。


ちなみに、スキルの中には【MP回復強化Ⅰ】みたいに(いち)(じゅう)のギリシャ文字が付いた物がある。

コレは『スキルレベル』で、高いほど強力なスキルなんだそうだ。






「…………それでは最後に、ステータスを上昇させる方法をお話ししてお終いにしましょう」


ステータスプレートの見方が分かった所で、最後はステータスを上げる方法だ。

一桁ステータスが乱立していた僕にとっては、一番気になる所。聞き漏らさないようにしよう。



ステータスを上げる方法としては、主に2つだ。

第一に、ひたすらLv上げ。鍛えて鍛えてLvを上げてステータスを増やす、分かりやすい方法だ。

そして第二に……『(ジョブ)に就く事』。

この世界の人々は、10歳になると『(ジョブ)』を授かる。それによって(ジョブ)に合ったステータスへとグンと上がるみたいだ。まるで子どもの成長期のように。


魔王を倒すのが目的の僕達勇者にとっちゃ、何よりもまずステータスの高さが必要不可欠。

たくさんLvを上げて、経験を積んで、魔王を倒して人類を守るのだ! ……っていう流れらしい。




「…………ところで、皆様。皆様のステータスはまだ拝見しておりませんが、予想以上の低さに驚かれているのではないでしょうか?」


……はいはいッ!

僕のステータス、一桁とか心許無さすぎます!



「ですが心配はございません。『異なる世界』から来られた皆様は、まだ(ジョブ)を手にしていない。……つまり、まだ10歳の子どものそれと同程度なのですから」


そういう事だったの!?



……まぁ、ソレはソレで一安心だ。

(ジョブ)を授かればステータスはグンと上がるハズなんだし。











「以上で、ステータスに関してのお話は終わりとしましょう」



そう言って王女様はステータスの話を切り上げると、次の話題……本日のメインイベントへと進んだ。


「それでは……皆様には、今日の本題でもある(ジョブ)に就いて頂きましょう」

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
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そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
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