表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/548

6-14. 計算順序

さて、真夜中のリュックを机代わりにした青空教室ならぬ星空教室、二日目の始まりだ。


目次のページを眺めつつ、考える。

えーと、今日の昼間に起こった『【演算魔法】の計算ミス』については何処を見ればいいかなー……


目次のページには、上から順に『●すうじ』、『●足し算』と見覚えのある項目が並ぶ。


『●ひき算』。

『●かけ算』。

『●わり算』。

『●計算の順番』。

『●割合』。


……ん!?



『●計算の順番』!? そんな項目あったっけ!?

やべっ。多分、昨晩見落としたんだな。


よし、ちょっとこの項目を読んでみよう。






●計算の順番

複数の四則演算子を含む計算式での演算は、まず乗除算、次いで加減算を、それぞれ前から後の順で行う。


これを簡単に言えば次のような感じだ。

これまでに『(加法)』、『(減法)』、『×(乗法)』、『÷(除法)』の4つの計算方法を学んだが、実はこれらには計算をする上で『順番』が決まっている。


その順番は、①×÷、②+-だ。


+-×÷が混ざった計算式では、前から順にただ計算すれば良いって訳じゃなく、()()()()()()()まず×÷を先に計算し、その後に+-を計算しなきゃいけない。


……簡単に言うといっても難しいよね、結局。

[参考書]に載っている例題とともに説明しよう。



例題1:

3+2×4-1


答えが『19』となったら、それは間違い。

この問題を正しく計算できれば、答えは『10』だ。

では、この問題の正しい計算の過程を見ていこう。


『正答』

 3+2×4-1

=3+ 8 -1

= 11  -1

=10


まず中央の×を計算し、その後に残った+-を計算していけば、正答が得られる。


次に、よくある誤答の計算過程だ。

『×÷を優先して計算する』ルールを無視して前から順に計算してしまうと、こうなる。


『誤答』

 3+2×4-1

= 5 ×4-1

=  20 -1

=19



では、他の例題も正しい計算過程と共に見ていこう。


例題2:

 8-6÷3×4

=8- 2 ×4

=8-  8

=0


例題3:

 9÷3+2×4

= 3 +2×4

= 3 + 8

=11


例題4:

 1+2×3-8÷4

=1+ 6 -8÷4

=1+ 6 - 2

=  7  - 2

=5


×÷と+-の計算順序については、こんな感じだ。



しかし、どうしても+-を先に計算しなければいけない時もあるだろう。

そういう時には『()(カッコ)』を使えばいいのだ!


()(カッコ)とは『この中を先に計算せよ!』という意味を表していて、計算式に()が有れば計算順序は次のようになる。


①()内の×÷

②()内の+-

③×÷

④+-


という訳で、これについても同じように例題を見ていこう。


例題5:

 3×(2+4)

=3×  6

=18


例題6:

 1+(6÷2)×3

=1+  3  ×3

=1+    9

=10


例題7:

 (7+9÷3)÷5+2

=(7+ 3 )÷5+2

=   10  ÷5+2

=    2    +2

=4


こんな感じだ。

また、時には()(小カッコ){}(中カッコ)で括られているという風に、『カッコの中にカッコ』状態が必要な事もあるだろう。

そういう時には『内側のカッコ』から順に計算し、順々にカッコを外していけば良い。



さて、それじゃあ計算練習いこうか。

A問題の(1)からスタートだ。











「(……フゥー、やっと終わった)」


計算問題20問、結構疲れるな。

基本は加減乗除の計算であるとはいえ、割と時間も掛かった。


「(先生、お疲れ様でした)」

「(あぁ、ありがとう。シン)」


実は時間が掛かり過ぎて、シンが既に起きて来ているのだ。

見張り番の交代時間もトックのトーに過ぎている。


「(今回も『割合』と同様、【演算魔法】は習得できなかったな。ちょっと残念……)」

「(仕方ないですね)」


最近、[参考書]で勉強しても【演算魔法】が習得しづらくなってきた。なんでだろう?


アレだろうか。

『【演算魔法】目当てに勉強すんじゃねーよ』、っていう神のお告げだろうか?

現代日本で存在が噂されていた『物欲センサー』なる物のせいだろうか?


……まぁいいや。

貰えないものは貰えない。さっさと諦めるが吉だ。






「(それで、今朝の『【演算魔法】の計算ミス』の件、原因は分かりました?)」

「(あ)」


忘れてた。

そうだったそうだった。本来の目的は『【演算魔法】の計算ミス』の原因探しだった。


でももしかしたら、計算ミスの原因は今勉強した『計算の順番』に在るかもしれないな。

ちょっと試してみよう。



さて、状況の整理だ。


【演算魔法】を掛ける前、僕の元のATKは19。


そこに【加法術Ⅲ】(アディション)・ATK30を掛けてATKは49に上昇。

ATKはプラス30されている。ここは問題ない。


更に【乗法術Ⅰ】(マルチプリケーション)・ATK2を掛けてATKが68に上昇。

ATKを49から2倍にすれば98になるはずだ。おかしい。


うーん、分からない。



…………いや、待てよ。


『式の全体を見て、まず×()÷()()()()計算し、()()()()()()を計算しなきゃいけない』


こんなルールが有ったな。

となれば、先に発動したのは【加法術Ⅲ】(アディション)・ATK30だ。だけどコイツは(加法)

【乗法術Ⅰ】(マルチプリケーション)・ATK2は後に発動したけれど、コイツは×(乗法)。こっちを先に計算しなければいけない。


とすると、計算式は……


 19 ( 元のATK ) ×2 ( 【乗法術Ⅰ】 ) +30 ( 【加法術Ⅲ】 )


こうなるな。これなら………………うん。68だ。


そうか、そういう事か。

【演算魔法】が計算ミスしたわけじゃなかったな。寧ろしっかり計算してくれていた。

僕が間違えていただけだったな。






さて、【状態操作】ステータス・オペレーションの特性が分かった。


【加法術Ⅲ】(アディション)【減法術Ⅰ】(サブトラクション)【乗法術Ⅰ】(マルチプリケーション)【除法術Ⅰ】(ディビジョン)をステータスに掛けた後の結果は、どれをどの順番で使っても同じになる。

重ね掛けが起こると、ステータスの計算はまず×÷を行う【乗法術】(マルチプリケーション)【除法術】(ディビジョン)が発動。

続いて、その結果に+-を行う【加法術】(アディション)【減法術】(サブトラクション)が発動。この順番で演算され、ステータスが変わる。



こんな感じだ。

……いやぁー、なんだか原因が分かってスッキリした。

僕のミスだったとはいえ、気持ちが良いな。


「(なるほどなー)」

「(分かったんですね、原因)」

「(あぁ。結局、僕のミスだったよ)」

「(そうでしたか。でも良かったですね。勉強が役に立ったようですね)」


あぁ、そうじゃん。シンの言った通りだ。

『●計算の順序』の勉強がそのまま解決に役立ってくれた。



勉強って、【演算魔法】を習得するだけじゃないんだね。生活にもこんなに役立つなんて、初めて実感したよ。






「フヮァー……」


なんて少し感動していると、気が緩んだからか眠気と疲れがドッと押し寄せてくる。

無防備にも大欠伸をしてしまった。


「(フフッ。先生、そろそろ夜更かしは止めて寝られては如何ですか?)」

「(そうだな、確かに。今晩は少し頑張り過ぎたかな)」

「(睡眠不足は明日に響きますよ)」


それは僕も知ってます。

某ひと狩り行くゲームで夜更かしした翌日は、1限から7限まで居眠りのオンパレードだったからな。



「(そうだな。じゃあ僕はそろそろ寝るよ)」

「(はい)」


そう言って紙とペン、[参考書]をリュックに仕舞い、僕のテントへと向かう。


「(じゃあシン、後は宜しくな。おやすみ)」

「(はい、お任せください! 先生もおやすみなさい)」


そう言ってテントへと入り、毛布にくるまって意識を落とした。

計介が計算して『98』と言っていたATKの計算式は……


 19 ( 元のATK ) +30 ( 【加法術Ⅲ】 ) ×2 ( 【乗法術Ⅰ】 )


となります。

偶然、()(カッコ)を使った計算をしていた訳ですね。

これを計算すれば98となり、決してこの式に間違いがある訳ではありません。

ですが、【加法術Ⅲ】(アディション)【乗法術Ⅰ】(マルチプリケーション)が重ね掛けされた時点でステータスの演算方法が書き直され、


 19 ( 元のATK )  ×2 ( 【乗法術Ⅰ】 )+30 ( 【加法術Ⅲ】 ) = 68


となりました。


ややこしい文章とは思いますが、『加減算と乗除算が混在する際には乗除算が優先される』というイメージを受け取って頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

 
 
Twitterやってます。
更新情報のツイートや匿名での質問投稿・ご感想など、宜しければこちらもどうぞ。
[Twitter] @hoi_math

 
本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
― 新着の感想 ―
[一言] 加法術の後に乗法術をしてるから、式としては 19+30*2になるのではないですか?19+60で79 二種類の術式をかける場合、最初にかけた術式の前後どちらに二回目の術式が入るのでしょうか? …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ