5-12. 互換
「えーと、君達が魔物の本を探している間に僕が学んだ事はーっと……」
さて、じゃあまず確認からいきますか。
「【状態確認】」
ピッ
===Status========
数原計介 17歳 男 Lv.4
職:数学者 状態:普通
HP 46/46
MP 41/42
ATK 4
DEF 14
INT 18
MND 19
===Skill========
【自動通訳】【MP回復強化I】
【演算魔法】
===========
【演算魔法】に触れ、軽い電子音と共に新たなウィンドウを開く。
===【演算魔法】========
【加法術Ⅲ】 【減法術Ⅰ】
【乗法術Ⅰ】 【除法術Ⅰ】
【状態操作Ⅱ】
===========
おぉ、増えてる増えてる。
ちゃんと【乗法術Ⅰ】と【除法術Ⅰ】も入ってるな。
だいぶ充実してきた。
すると、3人が僕のステータスプレートを覗き込んでくる。
「さっき勉強して、【乗法術Ⅰ】と【除法術Ⅰ】を習得したんだ」
「すごーい!」
「その魔法って、どんなヤツなんだ?」
「もしかして、それらも先生の【加法術Ⅲ】や【減法術Ⅰ】と同じようなステータス強化系なんですか?」
「多分そうだと思うんだけど、今からやってみようか」
「「「おおぉぉぉ」」」
「じゃあ、まずは【乗法術Ⅰ】からやってみようか。誰に掛けようかなー……」
さて、実験台は……
「はいはい! 私に掛けてー!」
だろうと思ったよ。
「じゃあ行くぞ。【解析】」
ピッ
===Status========
コース・ヨーグェン 15歳 女 Lv.8
職:水系統魔術師 状態:興奮
HP 37/37
MP 70/70
ATK 11
DEF 16
INT 30
MND 26
===Skill========
【水系統魔法】【MP消費軽減Ⅰ】
=============
相変わらずステータス高いな。装備無しでコレだもんな。
「【乗法術Ⅰ】・INT2!」
そしてINT欄に走るノイズ。
4人して黙り込み、ノイズが晴れるのを待つ。
そしてノイズが晴れると……
===Status========
コース・ヨーグェン 15歳 女 Lv.8
職:水系統魔術師 状態:興奮
HP 37/37
MP 70/70
ATK 11
DEF 16
INT 60
MND 26
===Skill========
【水系統魔法】【MP消費軽減Ⅰ】
=============
INTが2倍になっていた。
……しかし、これヤバくないか?
INTが30から60まで上がってしまった。
一応、ステータスが50を超すのがベテラン冒険者と呼ばれる境界なのだが……
「……なんですかコレ! INTが60って、ベテラン魔術師並みのステータスなんですけど……」
「……これはちょっと凄すぎるな」
コースのステータスを見たシンとダンの反応も凄い。
驚きを隠せない、って感じだな。
と言いつつも、実は僕もかなり驚いている。
あれだけのステータスの上昇量を持っておきながら、消費MPはたったの『2』なのだ。
足し算ならステータスを2プラスするのに『2』必要だった。
しかし、掛け算ならステータスを2倍するのに『2』必要となるだけ。
今回は、実質コースのINTが30プラスされたのに、掛かったMPは2なのだ。
魔力消費がかなり減った。というか効率が良すぎる。
……コレはハンパじゃない性能だ。完全に【乗法術Ⅰ】は【加法術Ⅲ】の上位互換となってしまった。
……そうだ。ちょっと面白い事をしてみようか。
「君達、そんなので驚くなよ……【乗法術Ⅰ】・ATK2、DEF2、MND2!」
そう唱えると、ATK、DEF、MND欄がノイズで覆われる。
ノイズが晴れると、そこには大きく変わったコースのステータスがあった。
===Status========
コース・ヨーグェン 15歳 女 Lv.8
職:水系統魔術師 状態:興奮
HP 37/37
MP 70/70
ATK 22
DEF 32
INT 60
MND 52
===Skill========
【水系統魔法】【MP消費軽減Ⅰ】
=============
……ヤバいな。
ATK〜MNDの4項目だけならクラーサさんに匹敵するレベルだ。
しかも、このステータス加算、たったのMP8だけで出来ちゃうのだ。
なんだか、今まで【加法術Ⅲ】を使ってた僕が馬鹿馬鹿しく思えてくる……。
「んー、なんか力が湧いてくるみたいー!」
「ステータスとLvがかけ離れ過ぎてるよな……」
「今ならコースに瞬殺される自信があります」
それな。
ただ、【乗法術Ⅰ】のスキルレベルが上がれば、もっとコースを化け物に出来るかもしれない。
【乗法術】のスキルレベルⅠでは、ステータス乗算は2倍までだった。
きっとスキルレベルⅡなら3倍、Ⅲなら4倍って感じなんだろう。
さて、【乗法術Ⅰ】の試運転はオッケーだ。結果は上々だな。
……となると、もう一つの方の魔法もやってみるか。
「じゃあ、シン。シンも魔法を掛けて欲しいか?」
「! ……良いんですか!?」
シンがそう言う。
コイツ、『良いんですか』とか言いつつも掛けてもらう気満々じゃないか。
顔に出てるよ。
でもな、シン。僕が使う魔法は多分君が考えてるヤツじゃないよ。
「そうかそうか。分かった……【解析】」
ピッ
===Status========
シン・セイグェン 15歳 男 Lv.8
職:剣術戦士 状態:興奮
HP 63/63
MP 38/38
ATK 28
DEF 27
INT 12
MND 13
===Skill========
【長剣術】【胆力II】
=============
「あぁ……僕のステータスも全部2倍に……!」
「行くぞ……【除法術Ⅰ】・ATK2、DEF2、INT2、MND2!」
「……え? なんか魔法名、短くないですか?」
使った魔法が違う事にシンが気付いたようだ。
確かに『マルチプリケーション』と『ディビジョン』じゃ名前の長さが違うもんな。
まぁ、シンが気付こうが気付くまいが時既に遅しだ。
そしてシンのステータスがノイズに包まれる。
ノイズが晴れると、そこには大きく変わったシンのステータスがあった。
===Status========
シン・セイグェン 15歳 男 Lv.8
職:剣術戦士 状態:興奮
HP 63/63
MP 38/38
ATK 14
DEF 13.5
INT 6
MND 6.5
===Skill========
【長剣術】【胆力II】
=============
「えーー!? 何ですかこのステータス!?」
「ハーッハッハッハッハ……」
「シン、雑魚だねー!」
「まさか、弱体化の魔法だったとは……」
いやー、シンの慌てっぷりに大爆笑してしまった。
ステータス2倍かと思いきや、2分の1なんだもんな。
「先生、なんて事してくれたんですか!?」
「まぁまぁ、20分すれば元に戻るから。それに、僕は『【乗法術Ⅰ】を掛けてやろう』とは言ってないし。『魔法を掛けてやろう』って言ったけど」
「それそれ、それを掛けてくれると思ってたのに……」
しかし、【除法術Ⅰ】もステータス2分の1に掛かるMPはたったの2だ。
これはデバフに使えるな。
【乗法術Ⅰ】と【除法術Ⅰ】、これらが僕の狩猟ライフをまた大きく変えてくれるかもしれない。
さてと。
突然の魔王の群勢による襲撃はなんとか退けられた。その後に学んだスキルは、まさかのエグいほどの上位互換だった。まぁ、なんとかなるだろ。
現在の服装は麻の服に白のロングコート。
重要物は[数学の参考書]。
職は数学者。
目的は魔王の討伐。
準備は整った。さぁ、もっともっと強くなりますか!
 




