19-13. 高校確率Ⅱ
※『順列』と『組み合わせ』の言い回しについて
厳密には、『順列の総数』『組み合わせの総数』という言い回しは数学的に誤りです。
それぞれ順列は『並べ方の総数』、組み合わせは『選び方の総数』という意味であり、単語自体に『総数』の部分を含んでいるため重複表現となっておりますが、拙作では敢えてそのように表現しております。
何卒ご容赦ください。
Point⑤
『円に並べるのは何通り?』
さて。
黒子さん達の力もあり、なんとかインフルエンザを乗り越えた某男性アイドルグループの5人。
アイドル活動も一山越えたところで、今度は彼らのオフの日に密着しよう。
===========
例5)
『5人組の男性アイドルグループ』を1組、思い浮かべてみてください。
彼らは休日を使って、お忍びで中華街のとある料理店に行きました。
5人掛けの円卓に全員で座る時、その並び方は全部で何通りでしょうか。
===========
はい。
基本的には例題3と同じ、全員参加の並び順問題。!を使うヤツなんだけど……一つ違うのは、『円形』に座るって事だ。
さあ、こうなると並び方は全部で幾つになるのでしょうか?
考えてみよう。
……それでは正解だ。
答えは、24通り。全員参加型の順列の数、5! = 120通りよりも随分と減ったよな。
それでは、何故円形になると並び方が減るのかについて説明しよう。
次の図は、ABCDEのメンバーがそれぞれ円卓の周りに着席した一例だ。
Ⓐ
Ⓔ┏━┓Ⓑ
┗━┛
Ⓓ Ⓒ
正五角形状に並べられた椅子に、時計回りでABCDEの順で座ったイメージだな。シンプルな順列だ。
それでは、他にも5人が座った図の例をあと4個ほど挙げよう。
Ⓑ Ⓒ
Ⓐ┏━┓Ⓒ Ⓑ┏━┓Ⓓ
┗━┛ ┗━┛
Ⓔ Ⓓ Ⓐ Ⓔ
Ⓓ Ⓔ
Ⓒ┏━┓Ⓔ Ⓓ┏━┓Ⓐ
┗━┛ ┗━┛
Ⓑ Ⓐ Ⓒ Ⓑ
はい、ザッとこんな感じかな。
こんな感じで、円卓の周りに5人で座る方法は色々な種類が有るってワケなのだ。
――――ん?
いや、待てよ……?
今の5個の座り方……全部一緒じゃないか?
円卓のドコから見るかが変わってるだけで、どの図も時計回りでABCDE、席順は一緒じゃんか!
……というように、5個の図はそれぞれ違う席順のように見せかけて実は全部同じ座り方だったのだ。
真上に来る人が5人居るから5通り……なんて事はなく、ノーカウント。残念ながら1通りになっちゃうのだ。
だからつまり、この円卓の座り方の数も……全員参加型の順列の数『5!』をメンバーの人数『5』で割れば良い。
5! /5 = 5×4×3×2×1 /5 = 4×3×2×1 = 24
よって答えは、全員参加型の順列よりも少ない24通りになるのだ!
こういう風に、順列の端と端が手を繋いで輪っかになった順列を数学では『円順列』と呼ぶ。
その総数の求め方は、普通の順列の総数をメンバーの人数で割るだけ。難しいように見せかけて意外とシンプルなんだね。
という事で、以上で順列と組合せの求め方はお終い。
いわゆる普通の順列と組合せをはじめ、全員参加型の順列、重複を許す順列、そして円順列とバラエティ豊かな順列の求め方についてだったけど……いかがだっただろうか?
実際の高校数学では、コレらの知識を単品で使う問題だけではなく組み合わせて解く問題もある。
重複を許す円順列だったり、小さな順列が中に含まれている順列だったり……って感じだ。
こういった応用問題に出会った時は、是非コレらの知識をフル活用して解いていってほしい。
という事で、この最後のPointでは確率の単元らしく『ちょっと変わった確率』を紹介して締め括ろう。
Point⑥
『要は "リアルタイム実況" 的なヤツ』
ちょっと変わった確率……それは、数学の世界では『条件付き確率』という。
2つの事象A、Bがあり、それぞれが起こる確率を P(A) と P(B) と表す。どちらも起こる時の確率は P(A∩B) という風に表せるな。
この時、『Bが起こったという条件の時にAが起こる確率』は Pʙ(A) や P(A|B) と表し、次の式で求める。
Pʙ(A) = P(A∩B) / P(B)
……というのは、『条件付き確率』の一般的な説明だ。
けど、いきなりそう言われてもいまいちピンと来ないよな。条件付き確率だなんて。
という事で、今回はこんなストーリーを用意したぞ。
この話を見ながら、条件付き確率の何たるかを感じてみてほしい。
===========
さて。
某5人組アイドルグループは、仕事でとあるバラエティ番組に出演。
リーダーになったAが、豪華プレゼントを掛けて共演者と簡単なゲームに挑戦することになった。
ルールは簡単。
Aがコイントスを3回行い、表が2回出たらグループの5人全員へ豪華プレゼント。
裏が2回出れば共演者へ豪華プレゼント。
それだけだ。
では、ココで問題。
===========
例6-1)
Aが豪華プレゼントを獲得できる確率は幾らでしょう?
===========
この問題なら……きっと、すぐ分かる人も多いんじゃないかな。
答えは½。樹形図を使うか、少し難しくなるけど順列の式でも解けるな。
ただ、今回は樹形図で見ていこう。コインが表なら○、裏なら×で樹形図を作ると……こうだ。
┌○ …獲得!
┌○┴× …獲得!
┌○┤
│ └×┬○ …獲得!
│ └× …ザンネン!
┤
│ ┌○ …獲得!
│ ┌○┴× …ザンネン!
└×┤
└×┬○ …ザンネン!
└× …ザンネン!
獲得が4、ザンネンも4。
今は丁度半々だな。
では、ストーリーを進めるぞ。
Aが机に置かれたコインを手に取ると、パッとスタジオの照明が落ち……スポットライトがAと机を照らす。
番組収録のスタジオ中が見守る中、Aは右手の親指にコインを置き――――ピンと弾いた。
何度もグルグルと回転しながら、宙を舞うコイン。
Aの身長を超えて高く上がったコインは次第に下降に転じ……コツンと机に落ちる。
机上を少し転がった後、動きの止まったコインは……表を向いていた。
さて、ココで次の問題。
===========
例6-2)
この時点でAが豪華プレゼントを獲得できる確率は幾らでしょう?
===========
……この問題も、きっとパッと分かる人は多いんじゃないかな。
答えは¾。さっきよりも確率が上がった。
┌○ …獲得!
┌○┴× …獲得!
┏○┤
┃ └×┬○ …獲得!
┃ └× …ザンネン!
┛
獲得が3に対し、ザンネンは1。大チャンスだ。
それでは、再びストーリーを進めよう。
一発目に表を出したことで、一気に有利になったA。
豪華プレゼントにリーチが掛かる。
そんな中の、大事な2回目のコイントス。
BCDEからの声援と、共演者からのブーイングの嵐がAに掛けられる。
そんな中、1回目と同じ様にコインを弾くA。
斜め上に飛び、放物線を描いて机に落下するコイン。
何度か机の上をバウンドした後、動きを止めたコインは……裏を向いていた。
では、ココで最後の問題。
===========
例6-3)
この時点でAが豪華プレゼントを獲得できる確率は幾らでしょう?
===========
コレも例題6-2と同様に解いてみると、この時の確率は……なんと、½。
¾だったチャンスが一転、元に戻ってしまった。樹形図もこんな感じだ。
┏○┓
┃ ┗×┬○ …獲得!
┃ └× …ザンネン!
┛
……という風に、ゲーム開始時点では½から始まったハズの『Aが勝つ確率』は、ストーリーが進むにつれて上がったり下がったりする。時には元にも戻ったり、その時々によって変わるのだ。
今回の例題でいえば、『豪華プレゼントを獲得できる確率』は ½ 。
『表が1回出た時に豪華プレゼントを獲得できる条件付き確率』は¾。
『表、裏の順で出た時に豪華プレゼントを獲得できる条件付き確率』は½、って感じだ。
ゲームの途中結果(条件)に応じて確率が変わる、いわば『リアルタイム実況確率』。コレこそが条件付き確率なのだ。
「(成程…………)」
並べ方、組み合わせ、そして条件付き確率……。
さすがは高校数学、理解するのでギリギリだ。
順列や組み合わせの総数、あんな簡単に式を立てて一発ポンで求められるんだな。知らなかったよ。
今まで何でもかんでも樹形図でパワープレイしていた僕にとっちゃ、まるで一瞬で解ける魔法みたいだ。
「(それじゃあ、最後はコラム読んで終わりだな)」
一息ついたところで焚き火の様子を見てみれば、薪もだいぶ灰になってきている。
コラムと練習問題をやって、丁度燃え尽きるってところかな。
という事で、僕は再び参考書に目をやり……コラムに目を通し始めた。
Column
『"何も並べない"という並べ方』
順列の総数を数える式を呼び出すのに、PやCや!を使った記号が有ったよな。
5人から3人取り出して作る順列の総数は ₅P₃ 、組み合わせなら ₅C₃ 。
5人全員で並ぶなら ₅P₅ =5! だった。
じゃあ、ココでとある疑問。
『5人の中から0人取り出して作った順列の総数』を数式にすれば、 ₅P₀ となるハズだ。
同様に『0人の中から0人取り出して順列を作る時』なら ₀P₀ =0! となるだろう。
ただ、そもそも『0人取り出す』だなんて意味不明だ。
それに、こうやって0が入るとPやCや!の式は立てられない。
こんな時は、どうやって計算するんだ……?
……と一瞬戸惑うかもしれないけど、大丈夫。その辺数学は抜かりないから。
もしもP・C・!に0が入った時のために、彼らには予め特別ルールが作られているのだ。
それが……コレだ。
ₓP₀ =1
ₓC₀ =1
0! =1
そう。実はコレら、全部1になる。
1通りと定義されているのだ。
0人取り出して並べるってのは、イコール何も並べない。
『何もしない』という唯一の方法が、1通りとしてカウントされているのだ。
だから、もしも0の付くPやC、!を見つけた時には慌てずに「あぁ、何もしないんだな」と1を代入してあげよう。
「(何もしない……か)」
0個使って並べるから、何も並べない。
何もしないという、1通り。
なんだか深いな。面白い。
まるでトンチか何かを見ているようだったな。
そういや、あのコイントスゲーム……結果が書いてなかった。豪華プレゼントは結局誰の物になったんだろう?
……まぁ、ご想像にお任せしますってヤツだな。きっと。
まぁ、そんな事は置いといてっと。
「(……さぁ、今日もこの時間がやって来ました!)」
解説ページを読み終えれば、ココからはお待ちかねの練習問題タイムです。
早速ページを捲って次の見開きに目をやれば……そこで待っていたのは、簡単めのA問題10問と応用版のB問題10問。
それと、人差し指がピクピクっと問題文に引かれる感覚。
――――新たな【演算魔法】の予感だ!
「(コレは行くしかない)」
練習問題は後でしっかりやるから。ちゃんと解くから。
そう自分自身に約束した僕は……右手の人差し指をA問題の問題文へと近付けた。
ピトッ
「おっ」
まるで人差し指が磁石になったかのように、人差し指が紙面に吸い付けられる。しかも中々引きが強い。
「(コレは良さげだ!)」
そんな期待を込めつつ……ありったけの魔力を注ぐ気持ちで、右手の人差し指から問題文へと魔力を流し込んだ。
「(魔力注入ゥゥッ!)」
ピッ
「(おぉっ!?)」
……その時、僕の目の前に現れたメッセージウィンドウは。
毎度お決まりの文言とは、少し違う文章を表示していた。
===========
【確率演算Ⅴ】が【条件付確率演算Ⅴ】に進化しました
===========




