18-8. 集合Ⅱ
さて。
Point①、②では集合の基本についてだった。割と簡単だったかもしれないけど、ココからが難しくなってくる。高校数学の本領発揮だ。
心して掛かろう。
Point③
『"会員証"と"グループの中のグループ"』
さて。
部活やクラブ活動といった集合を作った。
メンバーの一覧を把握するため、要素も書き並べた。
となれば、次に必要になる物は何か?
……そう、それは各メンバーが会員であることを示すもの――――『会員証』だ!
数学もそれは同じで、まるでパッと会員証を見せるように『私、3はAに所属しています』という数学流会員証の方法がちゃんと用意されている。
その書き方が……コレだ!
3 ∈ A
A ∋ 3
このUとEが融合したような記号、その名も『属すの"∈"』を使うのだ。
三叉になっている方を『グループ』に、丸く纏まっている方を『メンバー』に向けて書けば『3はAに所属しています』という数学流会員証になるぞ!
……では、続きに行こう。
部活やクラブ活動といった集合を作った。
メンバーの一覧を把握するため、要素も書き並べた。
晴れて∈も出来上がった。
そして、どんどんグループは人数を増やして行き……大きなグループになった。
人数が増えたグループは、段々と人を纏めるのが大変になってきた。
では、そんな時グループを纏めるためにどうすればいいか?
……そう。それはグループ内を何分割かに分けること。
すなわち『グループの中のグループ』を作るのだ!
コレも数学の世界にはしっかり分かっている。集合の中の集合、つまり数学流『グループの中のグループ』記法がちゃんと用意されているのです。
例えば、集合A={3,6,9,12}の中に新しく『6の倍数でもある部門』集合Cを設立しよう。 C={6, 12} だ。
となると、集合Cは『Aの中の部門だよ』って事を示す必要があるよね。
それを示す方法がコレだ!
C ⊂ A
A ⊃ C
さっきの数学流会員証と似ているけど、今度は横U字の記号。その名も『部分集合の"⊂"』。
二叉の方を『大本のグループ』に、丸く纏まっている方を『小さい側のグループ』に向けて書けば『CはAに所属するグループです』っていう意味になるぞ!
要素の所属なら『∈』、集合内の集合なら『⊂』だ。
上手に使い分けちゃおう。
Point④
『uの一族』
さて。
例として集合A,B,Cを出しつつ解説を進めてきたけど、ちょっとコンガラがってきちゃった人も居るんじゃないだろうか。
一度ココで例示した集合A、B、Cについて見直しておこう。
まず、それぞれの集合の要素は次の通りだ。
A={3,6,9,12}
B={2,3,5,7,11}
C={6,12}
それぞれ3の倍数、素数、6の倍数だったよな。
では、コレをA、Bについて図で表してみれば……こうだ!
┏U━━━━━━━━━━┓
┃┌─A───┐ ┃
┃│6 ┌─┼─B─┐┃
┃│9 │ │ 2│┃
┃│12 │3│ 5│┃
┃└───┼─┘ 7│┃
┃ │ 11│┃
┃ └─────┘┃
┃ 1 4 8 10 ┃
┗━━━━━━━━━━━┛
ベベーン!
Aの囲みとBの囲みが部分的に重なる形だな。その重なった部分には3の倍数であり素数でもある3が君臨している。
そして、3の倍数でも素数でもない1、4、8、10は追い出されてしまっている、そんな状況だ。
……なんとなく状況が掴めただろうか。
では、ココでだ。
こんなシチュエーションを想像して欲しい。
∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇
――――もしもし、俺だよ。オレオレ。
――――急用が入っちゃって、急遽新たな集合『AでもありBでもある』が必要になっちゃったんだけど。
――――ちょっと新しい集合を見繕ってくれない?
√√√√√√√√√√
さて、こんな電話を受けた時あなたならどうするだろうか?
正解の一つとして挙げられるのは、新しい文字Dを使って D={x|x∈Aでありx∈Bでもある} なんて集合を新たに作っちゃう方法だ。
だけれど、一般に『必要以上に使うアルファベットの種類を増やすのは良くない』んだよな。どうせなら既存のAとBを使って表したい。
となると、他にどんな方法があるのか?
……そう。その答えは――――『新たな記号』を使ってしまえば良いのだ!
A∩B = {3}
新たな記号、それは……AとBに挟まれた逆U。人呼んで『共通部分の"∩"』だ。AとBの重なった部分という意味になるぞ。
集合AやBを部活動だとすれば、A∩Bはいわゆる『兼部民』ポジションだな。
……さて。
集合の単元では、実に多くの記号が現れた。
特に『Uシリーズ』においては左U、右U、そして下Uが出た。
となるとこの流れで行けば『上U』なんて記号も存在するのかどうか、気になっちゃうよね。
ズバリ結論から行こう。
答えは――――存在する。
Uと似て非なり、∩と表裏の関係をなす数学記号『∪』。その名も――――『和集合の"∪"』だ。
コイツの仕事は、『A∪B』と書き表すことで『Aの部分 + Bの部分』を表すこと。実際にメンバー表で書き並べてみれば次のようになる。
A∪B = {2,3,5,6,7,9,11,12}
両方所属している3を含め、AかBに所属していればメンバー入りだ。
こちらも集合A、Bを部活だとすれば、A∪Bは『部活連合』ってところかな。
数学流会員証の∈・∋に始まり、∩と∪、そして⊂と⊃。
更には、今回の例でいう1~12を表す『全体集合の"U"』。
集合の世界は、『uの一族』で支配されていると言っても過言ではないのだ。
Point⑤
『"誰も居なくなったグループ"と"じゃない方グループ"』
……はい。Uの一族とかいうツマラナイ冗談は置いといてだ。
今度は一旦集合Aを忘れて、集合BとCについて考えてみるぞ。図に表せばこうだ!
┏━U━━━━━━━━┓
┃ ┌─B─┐┃
┃┌─C┐ │ 2│┃
┃│6 │ │ 3│┃
┃│12│ │ 5│┃
┃└──┘ │ 7│┃
┃ │ 11│┃
┃1 4 └───┘┃
┃ 8 9 10 ┃
┗━━━━━━━━━━┛
ベベーン!
6の倍数は全て素数にならないので、BとCは交わらない形だ。
……さて、ここで考えてみよう。
さっきのPoint④で学んだ∪を使えば、『BまたはC』については B∪C={2,3,5,6,7,11,12} と書き表せる。それでは∩を使ったB∩Cは、果たしてどうなっちゃう?
その答えは――――コレだ。
B∩C = { }
……というのは冗談です。絶対にマネしないで下さい。
正しくは、またしても新たな記号『空集合の"∅"』を使って次のように表すぞ。
B∩C = ∅
{ }を使わず、ただ∅と書くことで『誰も居なくなった集合』を表現できるのだ。
同様に、例えば E={x|xは12より大きい整数} っていう新しい集合を作れば、コレも勿論 E=∅ となる。全体集合Uの中は12以下の自然数だからな。
……さて。集合BとCの話はコレで終わり。
集合AとBについての話に戻ろう。図はこんな感じだ。
┏U━━━━━━━━━━┓
┃┌─A───┐ ┃
┃│6 ┌─┼─B─┐┃
┃│9 │ │ 2│┃
┃│12 │3│ 5│┃
┃└───┼─┘ 7│┃
┃ │ 11│┃
┃ └─────┘┃
┃ 1 4 8 10 ┃
┗━━━━━━━━━━━┛
ベベーン! もうこの図もだいぶ見慣れてきた図だよな。
では、今回はそんな図を使ってある問題にチャレンジしてみよう。
--------------------
例題)
次の集合を、集合AおよびBを用いた表記法でそれぞれ表せ。
F = {x|xは3の倍数だが、素数ではない}
--------------------
さて、こんな例題。
数学流メンバー表で書き表せば {6,9,12} となる集合だ。図を見れば『Aの内側かつBの外側』の部分ってのもなんとなく分かるだろう。
とは言っても、∩や∪のような今までの知識だけじゃ上手く書き表せないんだよな……。
さあ、どうすれば良いか?
――――もう、この流れはお分かりだろう。
今までの知識だけで書き表せないのなら、新たな記号を使うまでだ。
そしてこんな事態を見越していた抜かりの無い数学は、しっかり新たなる記号を用意していたのだ!
その名も『補集合の" ̄"』。
この ̄を被せられた集合は、『~じゃない方』という意味になる。 A と書けば『Aじゃない方』を表すことが出来ちゃうのだ!
……さあ、ではこの新たなる記号を使って例題を解いてみよう。
問題文は言い換えると『Aの内側かつBの外側』だった。コレを ̄と∩も使って表せば……こうなる。
F = A∩B
このように、『じゃない方』を使う事ではじめて表せるようになる。
補集合の" ̄" …………それは、普段目立たない『じゃない方』のグループにも光を照らす、慈愛に満ちたモノなのだ。
Point⑥
『2通りで表せば"ド・モルガン"が見えてくる』
それでは最後は、3の倍数でもなく素数でもないという『究極のじゃない方グループ』として陽の目を見れずに燻っていた四つの数字、1,4,8,10に焦点を当てて本単元を締め括るとしよう。
またまた同じ図を載せるが、今回は1,4,8,10に注目してみよう。
コレらの集合 {1,4,8,10} をどのように書き表すか考えながら見て欲しい。
┏U━━━━━━━━━━┓
┃┌─A───┐ ┃
┃│6 ┌─┼─B─┐┃
┃│9 │ │ 2│┃
┃│12 │3│ 5│┃
┃└───┼─┘ 7│┃
┃ │ 11│┃
┃ └─────┘┃
┃ 1 4 8 10 ┃
┗━━━━━━━━━━━┛
ベベーン!
要点は『Aの外側かつBの外側』であることだ。
今までに学んだ集合の各種記号を使えば、表せるハズ。
……さて、出来ただろうか?
では正解発表。
答えは……『A∩B』。エーバーかつビーバーという読み方で、『Aに入っておらずBにも入っていない』という意味。こうすれば {1,4,8,10} を表せる。
――――んだけど、実はもう一つ別な方法での正解が有るのです。
コレを見て欲しい。
(A∪B)
『AのメンバーとBのメンバーの連合チーム……じゃない方』という、最後の最後に逆転をかました形式だ。コレも {1,4,8,10} となるよな。
つまり、コレら2つが表す集合は同じモノ。
A∩B = (A∪B) という風にイコールで繋ぐことが出来ちゃうのだ。
他の集合についても2通りの方法で表すことが出来る。時間が有ったら試してみてね。
そしてそして、だ。
この式をよーく見てみると…………『 ̄付きの∪は∩になっている』というのに気が付かないだろうか?
ちょっと強引かもしれないけれども、実は本当にそういうシステムになっているんだよね。
 ̄付きの∪は∩に、 ̄付きの∩は∪になる法則。
コレを『ド・モルガンの法則』と呼ぶぞ!
同じ集合でも、2通りの方法で表せばおのずとド・モルガンの法則は見えてくるようになっていたのだ。
Column
『"Uの一族" 出演者』
本単元のコラムは、集合で新たに出てきた記号たちのスタッフロールで幕を閉じよう。
復習代わりにでも使って欲しい。
『要素の"{ }"』
『属すの"∈"』
『部分集合の"⊂"』
『共通部分の"∩"』
『和集合の"∪"』
『空集合の"∅"』
『補集合の" ̄"』
『全体集合の"U"』
「ふぅー…………」
なんとか読み終えたよ、参考書。
最後のコラムまで一気に読み進めた。
……んだけどさ。
1つ思った事が有るんだ。
「……しんどい」
なんだこの単元!
難し過ぎるだろ。今までの数学と比にならないじゃんか!
よくもまあこんな遠慮も無く続々と新しい記号を作り出したモンだよ全く。
なんとか理解不能はギリギリで免れたものの……とにかく難易度が爆上がりだったぞ。
コレが中学数学と高校数学の差なのかよ……。
とまぁ、そんな高校数学の洗礼を浴びつつも。
なんとか頭の整理を済ませた僕は練習問題へと進んだ。
「……さあ、お待ちかねの練習問題だ!」
ページを捲って練習問題の並んだ見開きに進み、紙とペンを手前に持ってくる。
練習問題の構成は……今回も普段と同じ。簡単めなA問題が10問、応用版のB問題が10問の計20問だ。
「……それじゃあ、早速(1)から」
そう独り呟き、A問題(1)の問題文に人差し指を当てる――――
ピトッ
「おっ」
人差し指が紙面に吸いつけられる。
…………キタキタキター! 待ってましたこの感触!
新たな【演算魔法】が現れる予感!
……今回はどんな魔法が手に入るんだろうか? ドキドキだ。
こういう楽しみが有るからこそ、ついつい数学の勉強も止められないんだよねー。
「……それでは」
そんな事を考えながら、吸い付けられた指に意識を集中。
ゆっくり深呼吸して気持ちを落ち着かせ……――――指先から、魔力を流し込んだ。
「魔力……注入ッ!!」
ピッ
「おぉ!」
軽い電子音と共に目の前に現れたのは、いつも通りのメッセージウィンドウ。
今回も例に漏れず、新しい【演算魔法】が仲間に加わってくれたようだ!
集合の単元で手に入れた新魔法、その名は……――――
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パッシブスキル【集合】を習得しました
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「【集合】……!」
単元そのまんまの名前を冠した名前に、何となくオシャレな読み方の魔法。
思わず声に出してしまった。
……うんうん、良いじゃんか!
なんだか良さそうな魔法が手に入ったぞ!




