16-13. 中学図形Ⅱ
Point④
『証明:"3つの根拠”で説き伏せろ!』
さて。
ココからが本単元のメイン、『証明』だ。
証明ってのは、今までのいわゆる『ザ・数学』の問題とは全く違う問題だ。
今までの『計算して答えを求める』とか『xの値を求める』とかいった感じじゃない。
証明を知らない人からすれば、数学の証明問題は『別次元』なモンだと思う。
……って事で。
『証明』が何たるかを説明する前に、まずは『証明の問題ってどんな感じで出題されるのか』『どんな感じで答えるのか』っていう例を3問、カット無しのフルバージョンでお届けしようと思う。
とりあえず見てみよう。
例1)
例えば、こんな図形……名付けて『図1』が有ったとしよう。
〼
ご覧の通り、四角形の中に斜め線が入ってるって物だ。
分かってる条件は次の2つ。『上と下の横線の長さは同じ』『左と右の縦線の長さは同じ』。
パッと見外側の□は正方形っぽく見えるけど……『正方形とは限らない』っていう設定にしておこう。
するとこの時、図1の中にある2つの三角形は『合同』になってるのだ。
『見れば分かるわッ!』って思うかもしれないけど、敢えてその証拠を示すのがこの問題のゴールだ。
それでは、設問と解答に行ってみよう。
===========
例1)
左図のような図形があり、
A B AB=CD、AC=BDである。
〼 この時、△ABCと△DCBが
C D 合同である事を証明せよ。
証)
△ABCと△DCBにおいて
仮定より
AB = DC ・・・・・①
同様に、仮定より
AC = DB ・・・・・②
共通な辺だから
BC = CB ・・・・・③
①、②、③より
3組の辺がそれぞれ等しいから
△ABC ≡ △DCB である。
===========
こんな感じだ。
今までの数学の問題とは全然違うよな。
じゃあ次、例題の2問目に行こう。
例2)
今度は『図2』っていう、以下の図形が有ったとしよう。
〼
使う図形は同じ。だけど、今度は『上と下の横棒はそれぞれ平行』『左と右の縦棒もそれぞれ平行』の2条件だ。
同じく外側の□は『正方形じゃないかも』って事にしておこう。
この問題についても、2つの三角形が合同であるコトを示すのがゴールだ。
それでは、設問と解答だ。
===========
例2)
左図のような図形があり、
A B 線分ABとCD、ACとBDは
〼 それぞれ平行である。
C D この時、△ABCと△DCBが
合同である事を証明せよ。
証)
△ABCと△DCBにおいて
仮定よりAB∥DCなので、錯角であるから
∠ABC = ∠DCB ・・・・・①
同様にAC∥DBなので、錯角であるから
∠ACB = ∠DBC ・・・・・②
仮定より、共通な辺だから
BC = CB ・・・・・③
①、②、③より
1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいから
△ABC ≡ △DCB である。
===========
こんな感じかな。
それじゃあ、最後に3問目だ。
例3)
今度も使う図形は同じ。名前は『図3』だ。
〼
条件は、『上と下の横棒はそれぞれ長さが同じで、しかも平行』。コレだけ。
コレだけの条件だけど、2つの三角形の合同を示すぞ。
それでは、設問と解答だ。
===========
例3)
左図のような図形がある。
A B 線分ABとCDは平行であり、
〼 更に長さが等しい。
C D この時、△ABCと△DCBが
合同である事を証明せよ。
証)
△ABCと△DCBにおいて
仮定よりAB∥DCなので、錯角であるから
∠ABC = ∠DCB ・・・・・①
同様に仮定より
AB = DC ・・・・・②
仮定より、共通な辺だから
BC = CB ・・・・・③
①、②、③より
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいから
△ABC ≡ △DCB である。
===========
以上だ。
『証明』がどんなものなのか、フィーリングでも感じとってくれたら嬉しいな。
……それでは、ノーカット問答を一通りお届けしたので解説に入るぞ。
証明とは、与えられた『前提』から『根拠』を掘り出し、見つかった根拠を並べて『命題が正しい事』を示すコトだ。
……と言っても、難しいよね。
例えば、山奥でAさんが誰かに刺し殺された。Bさんは犯人じゃないのに、容疑者に挙げられてしまった。
そんな時、Bさんが身の潔白を示す場合に置き換えるとこうだ。
Aさんの『殺害時刻と場所、死因は確定している(前提)』。
だけど、『その時間、Bさんは遠くの駅の防犯カメラに映ってた(根拠)』。
だから、犯行時刻にBさんはAさんを刺殺できる訳がないから『Bさんは犯人じゃない(命題が正しい)』。
『条件』から『根拠』を探し、『命題が正しい』事を示す。コレが証明だ。
上の証明の3例題に当てはめると、前提は『~~~より』『~~~だから』っていう文章。
根拠が、丸付き数字のくっ付けられた式。
この根拠を3つ並べ、『合同条件』ってのを成立させられればピークは越えた。
あとは『△~~ = △~~ である』の一言でトドメを刺すだけだ!
それじゃあ、今の流れを纏めると次の表みたいになるぞ。
┌─前提条件┐ ┌─根拠①─┐
│仮定 │→│長さが同じ│
│図形の性質│ │角度が同じ│
│角度のペア│ └─────┘
│ │→┌─根拠②─┐
│共通な辺 │ └─────┘
│共通な角度│→┌─根拠③─┐
└─────┘ └─────┘
↓
┏━━三角形の合同条件━━━┓
┃・3組の辺がそれぞれ等しい┃
┃・2組の辺とその間の角 ┃
┃ がそれぞれ等しい┃
┃・1組の辺とその両端の角 ┃
┃ がそれぞれ等しい┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
↓
命題:2つの三角形は合同!
『2つの三角形が合同である』のを証明するためには、3個ある『三角形の合同条件』のうちのどれか1つに辿り着けばオッケー。
どれか1個でも成立すれば、自動的に『2つの三角形は合同である』って確定できちゃうからな。
つまり、だ。
三角形の合同証明で、最も重要にして最も難しいポイントってのは……『3つの根拠』を探し出す事。
コレさえマスターすれば、三角形の合同証明は怖いモノ無しだ!
……こんな感じかな。
参考書の紙面の関係で、三角形の合同の証明の解説は残念ながらココマデ。
詳しい説明は、また時間が有ったらやりたいと思う。
ただ、上の3例題は合同証明の基本的なテンプレートにもなってるので、証明の勉強をする時の参考にしてくれると良いな。
Point⑤
『大きさ違いは"相似"』
それでは、『合同』のお話の次は『相似』に入ろう。
『相似』とは、複数の図形において同じ形で大きさが違う関係の事を指す。
簡単に言えば……合同は『形も大きさも全く同じ』って意味だったのに対し、相似はいわゆる『拡大・縮小バージョン』ってヤツだな。
『相似な図形』の特徴として、ココでは3つ述べておこう。
第一に、相似な図形で『対応する角の大きさ』、つまり同じ場所の角度は等しい。
コレは合同と同じだな。
第二に、相似な図形のペアには『相似比』っていう比が存在しており、『対応する辺の長さの比』、つまり同じ場所の辺の長さで比を取ると必ず『相似比』になっている。
たとえば『3cm、4cm、5cm』っていう三角形と『6cm、8cm、10cm』っていう三角形が有ったとしよう。この三角形の相似比は『1:2』だ。
対応する辺の長さの比は3:6 = 4:8 = 5:10、つまり1:2となるからな。
合同については『相似比が1:1の図形のペア』って考えることも出来るぞ。
第三に、相似な図形の面積比は『相似比の2乗』、立体の体積比は『相似比の3乗』になっている。
さっきの2つの三角形でいえば、相似比は1:2だから面積比は1:4になるぞ。
『怪しい』と思った人、是非それぞれの三角形の面積を計算してみて下さい。直角三角形になってるから、簡単に求められるハズだ。
……まぁ、相似についてはこんな感じかな。
『合同』をマスター出来た人なら、きっと『相似』も難なく覚えられるんじゃないかな。
Point⑥
『相似の証明もやる事は一緒』
さて。
それじゃあ、中学図形の最後のPointは『三角形の相似証明』をやるぞ。
Point④で三角形の合同証明をやったばかりだけど、折角なので『三角形の相似証明』もマスターしちゃおう。
という事で、三角形の相似証明についても例題を1問、ノーカットでお届けしよう。
相似証明がどんなものなのか、合同証明とどんな点が違うのかについて考えながら見てくれると嬉しいな。
例4)
上手く書き表せないけど……『∀』っていう図形で、左上の終点と右上の終点を線で繋いだみたいな図形を想像してほしい。
大きい三角形と小さい三角形を1個ずつ用意し、頂点を揃えて重ねたような物だ。コレを『図4』としておこう。
で、条件は『 ∀ の横線は、それぞれの斜め線の丁度半分の所でクロスしてる』って設定にしておく。
この時、2つの三角形は相似の関係になっているのだ。
それを証明するぞ。
===========
例4)
左図のような図形に、線分AB
A B を描き足した図形を考える。
C∀D 点C,Dはそれぞれ線分AE,
E BEの中点である。
この時、△ABCと△DCBが相似
である事を証明せよ。
証)
△ABEと△CDEにおいて
仮定より点Cは線分AEの中点であるから、
AE:CE = 2:1 ・・・・・①
同様に点Dは線分BEの中点であるから、
BE:DE = 2:1 ・・・・・②
共通な角であるから
∠AEB = ∠CED ・・・・・③
①、②、③より
2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいから
△ABC ∽ △DCB である。
===========
こんな感じだ。
基本的な流れは合同証明と一緒だけど、所々違う部分が有るよな。
って事で、三角形の相似証明の流れを示すと次のような感じだ。
┌─前提条件┐ ┌─根拠①─┐
│仮定 │→│長さが同じ│
│図形の性質│ │角度が同じ│
│角度のペア│ └─────┘
│ │→┌─根拠②─┐
│辺の比 │ └─────┘
│共通な角度│→┌(根拠③)┐
└─────┘ └─────┘
↓
┏━━━三角形の相似条件━━━━┓
┃・3組の辺の比がそれぞれ等しい┃
┃・2組の辺の比とその間の角 ┃
┃ がそれぞれ等しい┃
┃・2組の角がそれぞれ等しい ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
↓
命題:2つの三角形は相似!
『前提』から『根拠』を探し出し、『相似条件』を成立させて『命題が正しい』ってことを示す。
この大まかな段階は一緒だ。
違う点は2箇所、まず『∽』っていう謎の記号だ。
いきなり登場した横向きのSみたいな記号だけど……読み方は『相似』。合同を示す『≡』と同じ感じで使えばオッケーだぞ。
次に『相似条件』だ。
3個の中から1つを成立させればオッケー、ってのは合同条件と同じだ。
けど、『辺の長さが同じ』が『辺の比が同じ』に置き換えられてるんだよな。
その分、根拠探しがちょっと難しく面倒になってるから気を付けよう。
あ、そうそう。最後に『合同条件の3つ目』と『相似条件の3つ目』の違いについても要チェックだ。
合同条件を踏まえて考えれば、相似条件の3つ目は『1組の辺の比とその両端の角がそれぞれ等しい』になりそうなんだけど……実際は想像以上に簡単だ。
まさかの『根拠2コ』でオッケーという、前代未聞の合同条件となっているぞ。
……さて。
三角形の相似条件についての説明は以上だ。
合同証明をマスター出来たら、ぜひ今度は相似証明もマスターしてみよう。
「(………………フゥ)」
Point⑥を読み終わり、一度参考書から目を離す。
「(あぁぁっ…………長かった)」
両腕を挙げ、軽く全身で伸びる。
……そういや今回はColumnが無いんだな。
アレか、途中でも有った『紙面上の都合』ってヤツか。
まぁ……中学3年間分の図形分野を纏めてるんだし、解説のボリュームも凄かったもんな。
毎単元の最後についてたColumnはちょっと楽しみにしてたんだけど、仕方ないっか。
……ただ、その『解説のボリューム』は伊達じゃないようで。
ピクピクッ
「(…………おっ、引いてる引いてる)」
本が閉じないように押さえている左手の指が、演習問題のページに向かってピクピクと強く引かれてるんだよな。
勉強した量が多いからか、引く力も特段強い。僕の指がまるで大物の喰い付いた釣竿になったみたいだ。
さて、呼ばれているのならコッチから行くまでだ。
お楽しみの演習問題、行くぞ!
……さぁ、今回はどんな大物がゲットできるんだろうかなー?




