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数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで  作者: ほい
0. 召喚(プロローグ)
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0-3. 決起

「あむっ」



時は進み、午前中の授業4コマを終えた木曜日の昼休み。

教室の僕の席でパンを頬張っている。


窓際の後ろから2番目の席は、陽が当たっていい感じに暖かいんだよな。

中々ココから動きたくなくなっちゃうよ。




今日も授業中はネムネムな時間が続いたものの、一応授業にはちゃんと出席しといたぞ。


……さすがに極度の面倒くさがりである僕でも、『授業をサボる』というカードは切れないのだ。

これ以上欠席回数を増やせば、只でさえ首の皮一枚で繋がるような成績すらアウトになっちゃうからな。



……ってな訳なので、どの授業も呼名とか出席カードといった出席確認だけは絶対に怠らない。


出席確認は、ね。

授業中もしっかり起きてるかは別として。



……出席確認だけは、ね。




まぁ、そんな感じで、今日の午前の講義もよく寝た。

五月晴れのいい天気の中、凄い気持ち良かったよ。











「ごちそうさんです」


昼食も食べ終わったところで、とりあえず教室を見渡してみる。



「……なんか閑散としてるな…………」


教室内はガラガラ。

やっぱり天気が良いからか、はたまた食堂に行ってるからか、ほとんどの同級生は出払っちゃってるみたいだ。



教室内に残ってるメンバーとすれば……教室の中央、机を囲んで3人がお喋り。

廊下側の席でなんかコショコショ話してる女子2人組。


この5人だけ。



だけど……あのメンバーはいつも通りだ。別に気には留めない。




あの3人組のうち、長身にきっちりセットした黒髪、そして銀縁の眼鏡でキリッと決めてる優等生が神谷勇太(かみや ゆうた)。うちの頼もしいクラス委員だ。

由緒正しき家に生まれ育ち、DNAに刻まれたリーダーシップで『誰一人として見捨てぬ』精神を貫く男だ。

カッコいい。




背は低く、肩まで届く紺髪に色白でお淑やかな女の子が、3人組の紅一点・可合美優(かわい みゆ)

その見た目だけじゃなく、成績優秀かつ分け隔てなく接してくれる優しさが、クラス……いや学年中の男子の心を鷲掴みしているな。



そして3人組の最後の1人、焦げ茶の短髪に太い腕、厚い胸板と……見るからに体育会系な男子が、強羅拳児(ごうら けんじ)

『名は体を表す』を地で行ってるような強羅だけど、小さい頃から空手だの柔道だの拳法だの、その辺は大体やってきているみたいだ。体育で柔道をやった時には先生よりも先生らしかった記憶がある。

……まぁ、その代わりに頭はちょっと残念なので、神谷や可合が勉強をバックアップしてるらしい。


拳児には、少し僕と近い物を感じるよ。




実はこの3人組、お互いに小さい頃から幼馴染なんだって。幼稚園から高校までずっと同じなんだそうだ。

……まぁ、実は僕も幼馴染じゃないだけで幼稚園から高校まで彼らと同じなんだけどね。


なので別に仲が悪くもないし、普通の友達といった所だ。




……けどまぁ、こちらから特に話すようなことも無いし。面倒なので放っておこう。

なんだか普段は笑顔なハズの3人が、今日は若干真剣な雰囲気なのが気になるけど、放置だ放置。






次に、廊下側のガールズだ。ちょい高めの身長に切れ長の目、赤めに染めた黒い髪をポニーテールにしたクールな女の子が火村彩夏(ひむら あやか)

対して背が低く童顔で、かなりののんびり屋さん、ヘタすれば小学生に間違われかねないホンワカさんが草津佳成(くさつ かな)

この2人とはあまり関係が無いし、必要な事がある時しか話さない。


彼女らは大体いつも2人だ。ホントに仲良いんだね。




……ってな感じだな。今ココに居るのは……。

皆どこ行ったんだろう?






けどまぁ、そんな事は置いといて。



「ふあぁぁ…………眠っ」


お昼休みもまだ半分しか過ぎてないし、午後イチの5限が始まるまでもう一眠りするか。

……ご飯を食べると眠くなっちゃうの、あるあるだよね。



「うぅぅ…………」


そんな事を考えながら、机に突っ伏す。


……あぁー、暖かくて気持ちいい。

まるで布団の中でぬくぬくしているみたいだ。



ふわあぁぁぁ……。

意識が、遠のいていく………————
















————と思った、その時。




「あ、そういえばさぁ、佳成。昨日ヘンな夢見たんだよね」


眠りに落ちかけていた僕の耳に、火村の声が薄っすら届いた。




————へっ………ヘンな夢!?



「ッ!?」


頭の奥底に埋葬しといたハズの『精霊様の件』が、一瞬で掘り返される。

全身の毛穴がブワッと逆立つような感覚とともに、噴き出る冷や汗。


……そうだ! 忘れてたッ!!




「今の時間は…………ッ」


ガバッと机から頭を上げ、急いで時計を見る。

12:35。



例の時刻まではあと11時間半しか無い。

確か、それまでの間に『僕の切り札』を決めとかなきゃいけなかったんだよな……。



「……けど」


……ま、まぁ、今焦っても仕方ないか。

とりあえず、高校が終わってから。まずは授業を受け切ってから考えよう。


…………よし、そうしよう。






————だが。

そんな半ば混乱状態の僕に更なる情報が押し寄せてくる。



「んー、夢?どんなやつー?」

「えっと、『私達の世界を助けてっ!』て感じのなんだけど、急にこんなこと言ってもワケ分かんないよねぇ」



「ッ!?」


火村の言った聞き覚えのあるセリフに、再び独り驚く。

……正にソレ、昨晩の僕の夢と全く同じヤツだ。


……どうやら、火村も僕と同じ夢を見たようだ。

いや、まだそう決めつけるには早いけど……そもそもそんな偶然あんのか?



「あー、それ私も見たよー」

「え、マジで!?」


火村だけでなく、草津も見たのかよ!




「お、おい、それは本当かい君達!?」

「佳成ちゃんと彩夏ちゃんも同じ夢、見たの?」

「オメェらもか!?」


……あ、この反応はアレか? 3人も同じ夢を見たってヤツだな、きっと。



……何か面倒な事が起こりそうな予感がするぞ……。











この後、僕も『同じ夢を見た』って言って話に参加し、6人で夢についての話し合いを行った。


貴重な昼休みの睡眠時間を削られたのは残念だけど、後悔はしていない。

寝る事よりも重要事項だからな。



途中、続々と教室に帰って来る同級生の中にも『同じ体験』をした奴が結構居て、最終的にはクラス全員で『夢』の話し合いに発展。

まるで臨時学級会議のような状況になったクラスに、最後の方に来た奴は教室に入って早々『何事だ!?』って驚いてたな。




で……神谷が持ち前のリーダーシップを発揮して『夢』について纏めた所、色々と分かってきた事が有る。



まず、分かった事その一。

クラスの中に『夢』を見た人と見てない人が居た。『夢』を見た人は、皆同じ内容だった。


その条件は『うちのクラスである事』且つ『昨晩0時の時点で就寝していた事』。

これらを満たした人だけが、僕と同じく協力するかしないかの判断を迫られたらしい。

で、『助ける』と言った人には『次の0時に』って言って夢が終わったらしい。


なお、どうして『うちのクラス限定』なのかは分からない。どんなシステムで『うちのクラス』が選ばれたんだ。

あの精霊様、面倒事を増やしやがって。





次に、分かった事その二。

『あの選択』では、協力拒否もできたらしい。


確かに精霊様は『無理強いはしない』って言ってたし、拒否すればそれ以上の事は言わなかったんだとか。

夢の中で拒否を選択した同級生は、断った後に精霊様から『お邪魔しました』と言われ……そこで夢が終わったって言っていた。




で、分かった事その三。

『協力する』と夢の中で答えたのは、僕含めクラスの半分ほど、20人。


飽くまで異世界だなんてラノベやアニメで見るような作り話の世界だし、そんなことが現実に起こるとは考えられない。

……とは言いつつ、クラスの大多数は『同じ夢を見たのは偶然じゃない。必然だ!』って言って信じちゃっていた。


神谷曰く、「困っている人を見捨てるなんて事、君達には出来るのかい?」。

強羅曰く、「どんな敵でも掛かって来やがれ!」。

草津曰く、「なんだか面白そうじゃないですかー」。

火村曰く、「あっちの世界では魔法が使えるのかしら?」。



……そうですか、皆様やる気満々なんですか。

まぁ皆がやるなら僕もやるけどさ。






まぁ、そんな臨時学級会議も昼休みの終わりが近づいた所で、神谷の締めの一言で終了した。


「とにかく! 異世界への救援を承諾した君達は、来る0時の勇者召喚に備える事だ。重要物(キーアイテム)の決定も忘れずに」




……ハァ、勇者召喚ね。



…………本当に勇者召喚なんて起こるのかな?

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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