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15-7. 轟音

ズウゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!






重く低い衝撃音に、家全体がブルブルと震える。

割れんばかりの勢いでガタガタ揺れる、ガラス窓。



「……またか」


そんな家の外から響いてくる轟音を、僕は自室のベットに腰掛けながら聞いていた。











港町・フーリエ滞在34日目。

その日の夜明けは、いつも通りの長閑なモノとはまるで違った。


夜が明ける前に起こった突然の爆発を皮切りに、フーリエに次々と轟音が響くのだ。




一番最初に聞こえたのは爆発音だったな。

デッカい爆弾が爆発みたいな感じの音だった。

昨日の特訓の疲れでグッスリだった僕でさえ、飛び起きちゃう程の爆発音だ。ビックリしたよ。


で、『何今の爆発音は!?』って思いつつベッドから立ち上がり、窓の外を眺めると————



『…………でかッ……』


目に映ったのは、爆発音と共に現れた『キノコ雲』だった。

アニメや漫画でよく見るような、正しくキノコの形をした爆煙。

今もなお港から少し沖に出た海上でモクモクと立ち上っていて、朝焼けに照らされる爆煙を見ただけでも鳥肌が立つ。

……何が起きたのか気になるけど、想像しただけで怖い。




ドンッ!

ドンッ!

『……はぁッ』


で、キノコ雲を見て呆然自失していた僕は…………その後の花火みたいな音でハッと我に返った。

ドンッ、ドンッと間を置きながら、そんな音が数発聞こえた。

……んだけど、何の音かまでは分からなかったな。ベランダに出て辺りを見回したけど、特にそれらしい物は何も見えなかったし。


その後、花火が打ち終わったら今度は『ザーッ』っていう雪崩みたいな音だ。

もう一度ベランダに出て音源を探したけど、そんな物は見当たらなかった。






そして、たった今。

ベランダから部屋に戻り、ベッドに腰かけた直後————聞こえてきたのが、この衝撃音だ。


部屋全体をブルブルと震わせ、ガラス窓もガタガタ揺れるほどの衝撃音。

イメージで言うと……そうだなぁ、巨岩をパンチで粉砕した的な感じだったかな。



「……何が起きてんだろう?」


フーリエに到着し、この借家で寝泊まりして1ヶ月が過ぎた。

けど……今までこんな事無かったぞ。

こんなに騒がしい朝は初めてだ。港の朝市だって、今の轟音ほど騒がしくないし。



……()()()()()()()

見当もつかないけど、きっと()()()()()()()

普段は使い物にならないハズの僕の直感が、そう告げている。




「……とりあえず、リビングに行くか」


そうと分かれば、ひとまず行動だ行動!

この部屋に居たって何も始まらないんだし、リビングに下りればシン達が居るかもしれないしな。











という事で。

2階の自室を出て階段を降り、1階のリビングの前まで来た。



「……おっ、皆居るようだな」


廊下からでも、リビングの扉越しに4人の声が聞こえる。

……やっぱり、もう皆揃ってたか。




ガチャッ

「おはよー……」


そんな事を考えつつ、リビングの扉を開くと。




「遅かったじゃねえか先生」

「おはよう、ケースケ」


まず目に入ったのは、ダイニングテーブルに座る部屋着のアークとダン。

やっぱりこの2人はいつでも落ち着いてるな。



「あっ、先生(せんせー)おはよー!」


次に目に入ったのは、窓に張り付いてキノコ雲を眺めていた部屋着のコース。

……まぁ、その気持ちは分かるよ。あんなデカい爆炎なんて滅多に見られないもんね。



「……おはようございます、先生」

「……おぅ、おはよう」


そして最後に目に入ったのは……リビングをひたすらグルグル歩き回る部屋着のシン。

普段とは異なり、落ち着かない様子だ。

……どうしたの?




「それにしてもだ、先生」

「ん、どうしたダン?」


シンの様子をちょっと眺めていると、ダイニングテーブルに座るダンから声が掛かる。



「先生だけ起きてくるの遅かったな」

「そうそう。わたし達なんて、あの爆発の後すぐに集まったのにね」


そうだったのか。



「まーさーかー先生(せんせー)、あのバクハツでも目覚めなかったとかー?」

「いやいやいや、そんな事ないって————

「仕方ないわ。ケースケって朝は割とノンビリさんだもんね」

「ハッハハ、確かに」

「…………」


……いや、僕を遅刻魔みたいに扱って欲しくないな。

今や『高校最悪の遅刻大魔王』の名は盾本に譲り渡したのだよ。






「そんな事よりです、先生!」

「「「「……っ」」」」


すると、うろうろしていたシンが急に立ち止まって声を上げる。

突然の事にビックリする僕達。



「……どうしたシン、そんな心配そうな顔して」

「心配も何も、()()()()()()()()ですよ!」

「……あぁ、そうだった」

「…………忘れてたぜ」


……そうだったそうだった。

リビングでのんびりやってる場合じゃなかった。



「忘れてたって……、ダンは心配にならないんですか?」

「そっ、そんな訳無えじゃねえかシン! 俺だって気になるぞ勿論!」

「……ハァ。そうですか」


必死に言い返すダンに、呆れるシン。



「ねーねー、シンは何が起きてるか分からないのー?」

「……ハァ。分かってたらこんな心配しませんよ」


コースの質問に、更に呆れ顔になるシン。




……けど、さっきから何度も響く轟音は僕も気になる所だ。

何が起きてるんだろう?



「なぁ、シン――――

「だから私は何も知りませんよ」

「……いやいや、そうじゃなくて」


……お願いだからシン、怒らないで。



「あの爆発から何度も続く轟音は、僕もずっと気になってる。皆もだろ?」

「うん! スッゴく気になるー!」

「ああ。俺もだ」

「わたしも」


だよね。何が起きてるのか気になるよね。



「…………だったらさ」

「「「「……だったら?」」」」


僕の顔を覗き込み、答えを待つ4人。

そんな彼らに、僕は最高の提案をしてあげた。




「……何が起きてるか、見に行かないか?」


何が起きてるのか気になるのなら、見に行けばいい!

ヤジウマだ!



「そうね。行きましょう!」

「行こ行こー!」

「家でモヤモヤしてんのも嫌だしな!」


途端に勢いづくアーク、コース、ダン。

君達も野次馬根性丸出しだな!



「……私はちょっと怖い気もするのですが……――――

大丈夫(だいじょーぶ)大丈夫(だいじょーぶ)! 先生のステータス強化があればコワいものなしだよ。ね、シン?」

「……まあ、それもそうですね。行きましょう!」

「うん!」


コースの野次馬根性は、心配性が止まらないシンまでも染め上げてしまった。




……とはいえ、これで5人全員で行く事が決まったな!



「そんじゃあ……フーリエで何が起きてるのか、皆で確認だ!」

「「「「はーい(ええ)!」」」」

「全員、着替えを済ませてココに集合! 朝食ついでにヤジウマだ!」

「「「オー!」」」

「先生、ステータス強化お願いしますよ!」

「おぅ、任せとけ!」











という事で。

それぞれ着替えを済ませ、装備を整えた僕達は再びリビングに集合した。



「……よし、全員揃ったな」


気分はちょっとした冒険だ。

冒険者らしく、『謎の轟音』の正体を突き止めに行くのだ!



「……シン、コース、ダン、アーク。準備は良いか?」


出発前にもう一度、全員に確認を取る。




「はい! 勿論です!」


いつも通りの長剣を腰に差した、軽装備の童顔戦士。



「早く行こーよー!」


いつも通りの水色のローブにとんがり帽子を被った、魔法使いの女の子。



「何が起きてんのか、気になって堪んねえぞ!」


いつも通り、重そうな大盾を背負う全身鎧の男の子。



「わたしも、少しドキドキしてきちゃった!」


いつも通り、銀色に光る槍を携えた魔法戦士の少女。



「……よし、皆準備オッケーだな」


そして————いつも通り、麻の服に白衣を羽織っただけの少年。


全員揃ったな。



「それじゃあ……行くぞ!」

「「「「オーッ!!」」」」

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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