表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
287/548

15-5. 氷壁

「フーリエの人間共よ! 魔王軍第三軍団・軍団長、()()()()()が来てやったぞ!」


大声で名乗りを上げる、魔王軍の親玉・ガメオーガ。

そんな巨大赤鬼を、外壁の上に並んで睨む私達。



「……チッ、やはり魔王軍だったか」


舌打ちと共に、門番長が苦い顔をして呟く。



「門番長、大砲の準備は完了だぜ!」

「いつでも撃てるよ、門番長!」


そんな門番長に、移動砲台の隣に立つパパさん門番・ラルと若門番・ナッチが告げる。



「分かった、ナッチ、ラル。……砲撃用意、私の合図を待て」

「「ハッ」」


すると、マッチを取り出して大砲の直ぐ傍に構える2人。





「……よし」


それを見届けると、門番長は。



「……何をしに来た、魔王軍! 返答に()ってはお前らをフーリエより締め出し、侵略者と見做して攻撃を開始する!」


ニヤリと笑う赤鬼に向かって、思いっきり叫んだ。




「ガーッハッハッハッハ! たかが数人の門番で、この人数を相手に攻撃をすると言うか! 面白いな!」

「「「……くッ…………」」」


すぐさま返ってくる、腹が震えるほどの大声。

……押し殺していた恐怖心が引き摺り出されるような感覚に、私とナッチ、ラルの足が半歩下がる。




……だが。



「それはお前の返答次第だ赤鬼ッ! 目的は何だ!! 此処フーリエに()()()()()()ッ!!!」


それにも怯まず、単刀直入に尋ねる門番長。




その問いに、返ってきた答えは。




「ガーッハッハッハッハッハ、良かろう!! …………吾々が来た目的。それは――――()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!!!」


牙を剥きだして笑いながら、そう言い切った赤鬼。






……それは、正式な『王国への宣戦布告』だった。
















「撃てェェェェェェェェェェェッ!!!」


それを聞いた瞬間、門番長の号令が響く。



ドォンッ!!

ドォンッ!!


と同時、爆音と黒煙を上げる大砲。



ヒューッという風切り音と共に、外壁から一直線に飛ぶ2つの砲丸。




その先には……腕を組んでニヤリと笑う赤鬼。

寸分の狂いも無く、赤鬼の顔面直撃コースを物凄い勢いで辿る。



「「行けェェェッ!!!」」


ナッチとラルの声が砲丸を後押しする。




勢いを落とす事無く、真っ直ぐに飛ぶ砲丸。

2つの砲丸は、赤鬼に向かって飛び――――






「「「「「【氷結壁Ⅲ】フリージング・ウォール!!!」」」」」

カチコチコチコチッ!!!



――――猫の魔物が呪文を唱えたと同時、赤鬼の眼前に現れる分厚い氷壁。

氷の礫を撒き散らしながら、2つの砲弾は氷の中へと飲み込まれていった。




「ガーッハッハッハ! 吾輩に突然攻撃を仕掛けるとは、中々人間も酷ではないか!!」

「「「「……なッ!!?」」」」


氷の裏からこちらへと響いてくる、笑い声。

氷壁に、高笑いを上げる赤鬼が透けて映る。



「……しかし、今ので貴殿らの覚悟は十分に伝わったぞ! 先程の台詞が虚言でなかったこと、敵ながら天晴である!!」


氷壁が消えると、組んだ腕を解いて独り拍手する赤鬼。

……1回1回の拍手の音だけで鼓膜が破けそうだ。






すると。

赤鬼は拍手を止め、再び腕を組んで口を開いた。



「その勇敢さに免じ……門番共、貴殿らを生かすチャンスをやろう!」

「「「「えっ――――


赤鬼の発言に、期待の表情を浮かべる私達。




しかし。

そんな期待は、一瞬で裏切られた。




「……黙って門を開き、吾々をフーリエに入れるのだ。さすれば吾輩は今の攻撃を忘れ、貴殿らの命を保証するッ!!」



赤鬼の言う、『チャンス』。それは……私達への、()()()()()()だった。


フーリエを売って、命を乞えと……屈辱を受け入れろと、赤鬼はそう言っていた。


……勿論、私達だって死にたくない。

こんな数の軍勢を相手にするのは嫌だ。

非常に恐怖心を覚える。




「さあ門番共、門を開け――――



……しかし。

私達にも…………門番のプライドが有るッ!



「「「「開けるかァァァッ!!!」」」」


門番一同、赤鬼の勧めを一蹴した。



「っ……」


門番長の勢いに一瞬気圧され、驚きの表情を見せる赤鬼。




すると。



「ガーッハッハ! それはそうだよな! 吾輩が門番でも門は開けぬわ!」


驚きの表情は一瞬で掻き消え、再び元の笑顔に戻る赤鬼。




そして。



「ならば吾々がこじ開けるまでよ! 魔撃部隊構えッ!!」


その号令と同時、猫の魔物が再びザッと動き出す。


後ろ脚の二足で直立し。

前脚を前に突き出し。

その爪を一斉に、鋼鉄の門へと向け。



【炎放射】フレイム・ラジエーター一斉放射ッ!」

「「「「「【炎放射Ⅶ】フレイム・ラジエーター!!!」」」」」




太く赤熱したレーザーの弾幕が、鋼鉄の門へと迫った。











ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………



レーザーを一点に浴び、瞬く間に赤熱する鋼鉄の門。

大量の白煙が、私達の足元から立ち上ってくる。



「この火力……このままじゃ…………」

「門が融かされちまうッ!!」

「コレはまずいよッ!!」


私達の予想を優に上回る、圧倒的な火力。

それなり攻撃でもビクともしない筈の、鋼鉄の門……それが融かされる瞬間を想像するのは容易だった。



「ガーッハッハッハッハ! 門番共、貴殿らは指を咥えてこの光景を見ているのだな!」

「させるか!! 撃てェェェェェェ!!!」

ドォン!!

ドォン!!


再び、2個の砲丸が飛ぶ――――






「「「【氷結壁Ⅲ】フリージング・ウォール!!!」」」

カチコチコチコチッ!!!


が、先程も見た氷壁が再び出現。

砲丸の行く末は言うまでもなかった。




「……クソゥ! 何とか攻撃を止められないのかッ……!!!」

「ガーッハッハッハッハ! そんなパチンコ玉の如き小球では、吾々は止められんぞ!!!」


門番長の呟きに、煽る赤鬼。



「いや未だ分からんッ! 大砲撃てェェェェッ!」

ドォン!!

ドォン!!

「「「【氷結壁Ⅲ】フリージング・ウォール!!!」」」

カチコチコチコチッ!!!



再び大砲が発射されるが、先程と結果は同じだった。

何も変わらなかった。






……のだが、この一撃で事態は急に悪化した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

 
 
Twitterやってます。
更新情報のツイートや匿名での質問投稿・ご感想など、宜しければこちらもどうぞ。
[Twitter] @hoi_math

 
本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ