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3-2. 初狩猟

冒険者登録も済ませた。

装備もバッチリだ。


という事で、ギルドの建物を出て東門へと向かう。

いよいよ街の外壁を超えて外に出るぞ!





東門は全開だ。

衛兵が門の左右に立って往来の監視をしているが、特に検査とかは無いんだな。

門の上にも監視する衛兵が居るので、魔物がやって来ても直ぐに衛兵が出て来たり門を閉じたりと対応出来るのだろう。


こういうのって門で入街税とか、荷物検査とかするのが普通だと思ってたんだが、無いんだな。


まぁいい。僕らにしちゃあ、タダで街から出られるのだ。金欠さんには嬉しいシステムだな。


さて、門を潜ろう。





街の外へと出ると、そこには一面緑色の草原が広がり、その真ん中を石畳の街道が走っている。

左を向くと連なる山々が、右を向くと真っ暗に見える森がかなり遠くに見える。


まだ朝もそこそこ早いが、王都から東の港町の方へと向かうグループが続々と出発していくな。


「じゃあ僕も人生初の狩り、行きますか」


そう呟き、街道を歩き出した。





街道を少し歩き、街の外壁も結構小さくなってきた頃。

僕は街道から外れ、草原地帯へと進んだ。


さて、街道は人通りもあるので魔物はそうそう襲ってこないが、草原に足を踏み入れた今なら何時何処から魔物が襲って来てもおかしくない。


そうそう、奇襲といえば、草に隠れて奇襲を仕掛けるカーキウルフにとっては絶好のフィールドなんだろう。


という事で、攻撃を受けても耐えられるように常時DEFの加算だけはしておくか。ATKの加算は魔物に遭遇し次第で良いだろう。


頭に『DEFプラス10』を浮かべつつ、魔法を唱えた。


「オープン・ステータス…【加法術Ⅰ】(アディション)・DEF10」


ちょっと【加法術Ⅰ】(アディション)の魔法名の読み上げを工夫してみた。

魔法の発動にはその意思が重要であり、名前の読み上げは然程重要ではない。多分、これくらいの変更は問題無いだろう。

こっちの方が計算式を頭の中でイメージしやすいしな。


そして体に溜まる倦怠感と違和感。違和感の方は言い表すのが難しいが、少し筋肉がついたみたいな感覚だ。



===Status========

数原計介 17歳 男 Lv.3

(ジョブ):数学者 状態:普通

HP  40/40

MP  29/40

ATK 19

DEF 24

INT 19

MND 18

===Skill========

【自動通訳】【MP回復強化Ⅰ】

【演算魔法】

===Equipment==========

冒険者のナイフ(ATK +15)

===========



DEFも14から24に上がっている。これでオッケーだ。

あとは魔物を探すだけだ。


僕は先週、図書館で魔物学者に成りかけてしまった。

それだけあってか、この辺に現れる魔物の情報は頭に入っている。


対処法も覚えたので、油断したり多数で襲われたりしなければやられる事は無いだろう。





街道を外れて10分くらいだろうか。


人生初の獲物を見つけた。

見た目は大きく強靭な爪を持ったネズミ。

ディグマウスだ。


王都周辺の草原では、一番弱いとされている魔物だ。


ただ、弱いといっても油断してはならない。

奴らの攻撃パターンは、土を掘って地中を移動し、背後から飛び出てくる。そして、土を掘るための大きな爪でグサッと一突きのようだ。脚でもやられたら歩くのにも支障が出るだろう。


…さて、復習もこれくらいにして戦おうか。


人生初の狩り、とても緊張する。

汗が頬を伝う。

相手はフィールド最弱とはいえ、命を賭けた戦いなのだ。日本ではなかなか味わえない感覚。


「オープン・ステータス、【加法術Ⅰ】(アディション)・ATK」


腰のナイフを抜き、ATKを加算し、ゆっくりとディグラットに近づく。結構距離があるし、まだ気付いていないようだ。


「!!」


しかし、僕が一歩足を踏み出すと同時にラットと目が合った。


「えっ」


不意に出てしまった間抜けな声。

草を踏む音でラットはこちらに気付いてしまったようだ。

クソッ、結構距離あるのに気付くの早いだろ!


そして凄い勢いで穴を掘り始めるディグラット。


あー、もう少し距離を詰めれれば良かったんだがな…

まぁ起こってしまった事は仕方ない。

本に載ってた正攻法で行ってみますか。


僕はディグラットが完全に地中に入るのを確認して、ラットの居た所を中心に()()()()走り始めた。


誰もがこれを疑うだろうが、これが最も安全な方法らしい。

我ながらやっていて恥ずかしいし、ハタから見たらヤバイ人だと思われるだろう。僕もやりたくないが、本にこう書いていたのだ。仕方ない。


そしてグルグル走り回る事20秒、円の内側で突然ディグラットが出て来た。


「よし、今だ!」


本に載っていた作戦通りだ。

ラットに向かって走り、ナイフで切りつける!


「チュッ…チューッ!」


よし、上手くいっ…うぉっ!危ねぇ!


ナイフはラットの身体を確かに通り抜けたように見えた。しかし傷跡は思った程大きくはない。

それどころか、傷を負いながらも苦し紛れに爪で僕の腹めがけて突いてきた。


なんとか横に跳んで避ける。危うく腹直撃コースだったな。

そしてロクな着地も出来ずにドサっと地に落ちるディグラット。地上で仰向けに倒れる。

へへっ、地中は得意でも空中は苦手か。

危ない所ではあったが、ラットの間抜けっぷりに思わずにやけてしまった。


「ゥオラァッ!」


その隙をすかさずナイフで切りつける。

狙いは晒け出されたラットの腹。


「チュゥゥゥーッ……」


よし、今回はラットの腹に大きな傷が残った。

一際大きな鳴き声と一瞬の硬直の後、全身の力が抜けてダランと地に倒れるディグラット。





「……ぅおっしやゃゃゃ!」

勝ったあぁぁ!

デビュー戦は勝利に終わったぞ!


非戦闘職である一介の数学者が、まさか魔物に勝つなんて。

いや、戦った僕が言うのもなんだとは思うが、(ジョブ)を得た時にはこんな瞬間が来るとは思っていなかった。


負った怪我は無し、危ない所もあったが結果は上々かな。

少し返り血を浴びて白いコートが赤く染まってしまったが、良いだろう。怪我に比べればマシだ。


そうだそうだ、じゃあディグラットの血抜きをしておこう。


喉元を切り、頭を逆さにして少し待つ。

そうすれば血が自然と流れ出るので、リュックの中に入れても汚れなくて済むのだ。


ちなみに、冒険者は基本的に獲物の解体はしない。血抜きまでで処理は終わらせ、このままギルドに買い取ってもらうのだ。

その後ギルドが解体し、魔物の肉や毛皮、骨などが商人へと売られる。

ディグラットの場合は、毛皮と大きく強靭な爪が良く売れるようだ。





さて、デビュー戦は大成功に終わった。

この調子で狩りをどんどん続けますか。

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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