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14-15. 二次関数Ⅰ

自室の扉を開き、部屋の照明のスイッチを点け。



「フゥゥ……」


リュックを壁に投げ置き、白衣を脱いで椅子の背もたれに掛け。



「うぁぁぁ疲れたーッ!」

ボフッ


フカフカベッドに向かってベッドダイブ。

ベッドの上でうつ伏せに寝転がる。



「あぁぁぁぁぁ…………、疲れた……」


枕に顔を埋めたまま、そう呟いてみる。

今日は特に身体を動かした訳じゃないけど、精神的に疲れたな……。


……眠気はまだ来てない。

無いんだけど、ベッドに横になってノンビリするのが気持ち良いんだよねぇ…………。



ふわぁぁぁぁぁ……。






「んんっ…………」


一通りベッドの上でダラダラしたら、寝返りして仰向けになる。



部屋の壁に掛かる時計を見れば、現在時刻は丁度20時。


「……そっか、まだそんな時間か」



普段の寝る時間までは、まだまだ時間が有る。



さて。

夕食はトラスホームさんの屋敷で頂いちゃったから、もう大丈夫。

寝る前にシャワーは浴びたいけど、そんなのは15分あれば十分だし。


何かしようかなー…………。






そうだ、数学の勉強でもやるか。

アーク父にもさっきの通信で『数学者だ』って言っちゃったし。

もし今度出会う事が有ったら、伊達に数学者やってない姿を見せなきゃバカにされちゃうからな。






という事で。

頭を掻きつつベッドから立ち上がり、椅子に掛かった白衣をベッドに移動。

壁に立て掛けられたリュックから紙とペン、[参考書]を取り出して机に置き、椅子に着席したら準備完了だ。



[参考書]の表紙を開き、目次を確認。


えーっと、最後にやった単元は…………『因数分解・展開』だったな。



【因数分解Ⅰ】ファクタライゼーション【展開Ⅰ】(エクスパンジョン)には本当に救われたよな。

コイツらのお陰で、一度に何頭でもリザードを持って帰れるようになったし。

使い方に依っちゃ、今朝の牢内での『手錠外し』みたいな応用も出来るし。

本当に便利魔法だ。



……って事で。

今回はその次の単元……、『二次関数』か。


うわぁー……、一次関数に続いて今度は二次関数ですか。

名前を聞くだけで明らかに面倒くさくなってくるんだけど……今更『勉強をやっぱり止める』って訳にもいかないし。




そんじゃあ『二次関数』、やりますか。











●二次関数

二次関数とは、2つの変数x、yにおいて『xの二次式で表すことができる関数y』のことである。



それだけ。




……いや、シンプルな説明なのは有難いんだけど、シンプル過ぎて良く分からない。

要は『一次関数』の『二次』版だって事なんだろうけど、文章だけじゃイメージしづらいな。


って事で。

この単元でも、いつも通り6個のPointで『二次関数』を説明していくぞ!






Point①

『二次関数っていつ使うのか?』



それじゃあ、まず最初に『そもそも"二次関数"とは何なのか』って事についてだ。

さっきの説明を見る限り『二次関数』は難しいモンみたいに見えるけど、日常生活の中にも意外と有るのだ。

という事で、身近な例と共に『二次関数』について見ていこう。




例1)飴を配る

あなたは文化祭の出し物で『クイズ大会』の係になりました。

参加者の方には景品も用意し、解答者のうち『正解した人』に『正解者の人数分』だけ飴を配る事にしました。

では、正解者がx人の時に必要な飴の数をy個とすれば、yはどんな式で表せるでしょうか?



答えはコレだ。

正解者がx人なら、1人当たりの配る個数もx個。つまり、次の式になる。

 y=x (かける) x

  =x²


この場合、『x』の数字が決まれば『y』の数字も求められるから『yはxの関数である』よな。

しかも式は(xの二乗)、つまり『xの二次式』で表されている。

こんな時、『yはxの()()()()である』って言うのだ!




例2)長方形の面積

あなたは今、横長な長方形の紙を手に持っています。縦の長さを測るとxで、横の長さは縦の2倍でした。

それでは、その紙の面積をyとすればyはどんな式で表せるでしょうか?



答えはコレだ。

縦がxなら、横は2x。つまり、面積yは次のようになる。

 y=x (かける) 2x

  =2x²


これも『x(辺の長さ)の値が決まれば、y(面積)の値も決まる』し、さらに『式にはx²が入っている』。

という事で、こんな場合にも『yはxの二次関数である』と言えるぞ!




まぁ、『二次関数』の例としてはこんな感じだ。

『yがxの"関数"』になっており、かつ『xの二次式』である。この2条件が揃えば晴れて『二次関数の仲間入り』だ!






Point②

『二次関数のグラフは”下がって上る”』



さて。

この前やった()()()()は、グラフに表すと『直線』だったな。

【演算魔法】の名前も【一次直線】リニア・ファンクションって言ってるくらいだし。


それでは、今回の『二次関数』のグラフは一体どんな形になるのだろうか?

直線? カーブ? ぐるぐる? それとも……――――



……って事で、このポイントでは二次関数の中でも一番シンプルな関数『y=x²』を使ってグラフの形を見てみるぞ!



まず、xとyの関係を表にしよう。

y=x²の式を使って、『x=1の時のy』や『x=2の時のy』、『x=3の時のy』、『x=4の時のy』、……が求められる。それらを表にすれば、次のようになるぞ。


x┃0│1│2│3│ 4│ 5│…

━╋━┿━┿━┿━┿━━┿━━┿━

y┃0│1│4│9│16│25│…



では、この表の関係を横軸にx、縦軸にyをとったx-yグラフに表せば……こうだッ!



 y↑

  ├

  ├   ●

15┿

  ├

  ├

  ├

  ├

10┿

  ├  ●

  ├

  ├

  ├

 5┿

  ├ ●

  ├

  ├

  ├●

──●┴┴┴┴╂┴→

 0│    5 x



『x=5,y=25』の点だけはグラフに入りきらなかったけど、こんな感じだ。

そして、この点たちをナメラカな曲線で点つなぎしてあげよう。


この紙面上ではナメラカな曲線を描くのが出来ないので、皆の頭の想像にお任せするけど……、きっと次のようなカーブを描いているハズだ。

『x=0』で()()()()()にスタートした曲線は上向きにカーブし、上り坂のまま『x=1』の点を通過。

それでも上向きのカーブは止まらず、線の『傾き具合』を増したまま『x=2』『x=3』の点も通過。

『x=4』や『x=5』の点に着く頃にはまるで壁みたいなカーブになってるんじゃないかな。



という事で、この『曲線』こそが『二次関数のグラフ』なのだ。






……って言いたいんだけど、実はまだソレは未完成!

()()()()なのだ!


今のグラフは『0≦x(xがゼロ以上)の区間』での曲線だけだったけど、実はカーブは『x≦0(xがゼロ以下)の区間』まで続いているぞ。


という事で、同じようにしてx≦0(xがゼロ以下)の所でも同様にしてグラフを作ると……こうだッ!



x┃-4│-3│-2│-1│0│…

━╋━━┿━━┿━━┿━━┿━┿━

y┃16│ 9│ 4│ 1│0│…



      ↑y

      ┤

  ●   ┤

      ┿15

      ┤

      ┤

      ┤

      ┤

      ┿10

   ●  ┤

      ┤

      ┤

      ┤

      ┿5

    ● ┤

      ┤

      ┤

     ●┤

─╂┴┴┴┴●─→

-5   0│ x



このグラフも、同じように皆の頭の中で『ナメラカな点つなぎ』をして欲しい。

そうすれば……『x=0』の点から水平左向きにスタートした線が上向きにカーブしつつ各点を通過、そして左に進むにつれてどんどん坂が急になっていくんじゃないかな。



という事で……今作った0≦x(xがゼロ以上)のグラフ』と『x≦0(xがゼロ以下)のグラフ』の2つを纏めれば、お待ちかね『本物の二次関数のグラフ』の出来上がりだ!



      ↑y

      ├

  ●   ├   ●

    15┿

      ├

      ├

      ├

      ├

    10┿

   ●  ├  ●

      ├

      ├

      ├

     5┿

    ● ├ ●

      ├

      ├

     ●├●

─╂┴┴┴┴●┴┴┴┴╂─→

-5   0│    5 x



どう? ……このグラフを眺めれば、段々と『ナメラカな曲線』が見えてこないかな?

『x=0』が一番下に飛び出しており、そこから左上・右上に向かってどんどん上昇。最後の方は坂が急になり、グングン上に上がっていく、左右対称な曲線が見えてくるんじゃないかな?


二次関数のグラフは、こんな感じでxが増えていくにつれて『下がっていき』、一番下の点を過ぎると『上がっていく』。こんな形の曲線になるのだ!



ちなみに、このグラフの形は『放物線』って言うぞ。

()を斜め上に()り投げると、この曲()を描いて地面に帰ってくるから、そんな名前が付いている。

ぜひ覚えておこう。






Point③

『グラフの開き具合と上下は"a"で制御』



最も基本的な二次関数、y=x²のグラフの形は『下がって上がる』カーブになる事が分かった。

じゃあ、次はy=x²よりも少し複雑になった『y=ax²』を扱うぞ!



y=ax²の『a』は0以外なら基本的にどんな数字を入れてもいい『係数』だ。

a=2でも良い。a=-3でも良いし、a=9000000でも、a=0.00007でも良い。

そんな数字達を纏めて『y=ax²』と表しているぞ。


ちなみに、Point②で使った『y=x²』は、『y=ax²』のa=1バージョンだ。



さて。aについてのご紹介を終えたところで。

aに入る値が変われば、yを求める数式も変わる。コレは言うまでもないよな。

で、yを求める数式が変われば……勿論、グラフも変わってしまう。


……つまり、aを変化させれば『グラフの形』も一緒に変化するのだ!


それじゃあ、aの値によってグラフの形はどうなるのか、見ていこう。




(i)aが1より増えていったら

aが2,3,4,…っていう風に増えていったときのグラフを作るぞ。


グラフの作り方はさっきと同じ。という事で、早速作っていこう。


・y=2x²のとき

x┃0│1│2│3│ 4│ 5│…

━╋━┿━┿━┿━┿━━┿━━┿━

y┃0│2│8│18│32│50│…


これをグラフにすると、次のようになる。

y=2x²は『▲』で、さっきのy=x²は『・』で点を打ってみたぞ。



      ↑y

   ▲  ├  ▲

      ├

  ・   ├   ・

    15┿

      ├

      ├

      ├

      ├

    10┿

   ・  ├  ・

    ▲ ├ ▲

      ├

      ├

     5┿

    ・ ├ ・

      ├

     ▲├▲

     ・├・

─╂┴┴┴┴▲┴┴┴┴╂─→

-5   0│    5 x



こんな感じだ。『・』のグラフよりもカーブの『斜め具合』が一気に増えていくようになるぞ。

全体のイメージとしては『左右の開き具合が狭まっていく』っていう感じだな。

a=3、a=4でも同じようにやると、aが大きいほどどんどん開き具合が狭まっていくぞ。




(ii)aが1より小さくなったら

それじゃあ、次はaが1/2,1/3,1/4,…っていう風に小さくなっていった時のグラフを作るぞ。


グラフの作り方はコレまたさっきと同じだ。……そろそろ慣れてきたかな?


・y=(1/2)x²のとき

x┃0│  1│2│  3│4│…

━╋━┿━━━┿━┿━━━┿━┿━

y┃0│1/2│2│9/2│8│…



そして、これをグラフにしたのが次の図だ。

y=(1/2)x²は『■』で、元のy=x²は『・』で点を打ってみたぞ。




  y↑

   ├     ・

   │

   ├       ■

   │

   ├

   │

   ├

   │

  5┿

   │     ■

   ├   ・

   │

   ├

   │

   ├   ■

   │

 ・ ├ ・

 ■ │ ■

─┴─■─┴─┴─┴─┴─→

-1 │ 1 2 3 4 x


『■』のグラフは、『・』のグラフに比べるとカーブの『斜め具合』が減っている。全体のイメージは『左右の開き具合が開いていく』って言えばいいのかな。

同様にa=1/3、a=1/4とaが小さくなると開き具合もどんどん開いていくぞ。




(iii)aがマイナスだったら

では、最後にaがマイナス、つまりa≦0の時のグラフを作ろう。

作り方は今までと同じ。xを二乗して、aを掛け忘れないように気を付けよう。


・y=-x²のとき

x┃0│ 1│ 2│ 3│  4│…

━╋━┿━━┿━━┿━━┿━━━┿━

y┃0│-1│-4│-9│-16│…



で、これをグラフ化。

y=-x²は『★』で、元のy=x²は『・』で点を打ったぞ。


      ↑y

      │

     5┿

    ・ ├ ・

      ├

      ├

     ・├・

─╂┴┴┴┴★0┴┴┴╂─→

-5   ★├★   5 x

      ├

      ├

    ★ ├ ★

    -5┿

      ├

      ├

      ├

   ★  ├  ★

   -10┿

      │


……なんと。

aの値がマイナスだと、『下って上る』ハズだったグラフは『上って下る』というグラフに。

()()()()()になっちゃうのだ!



だけど、『★』のグラフと『・』のグラフを見比べて気付くことは無いかな?


……そう。

上下が逆さまになっただけで、よーく見ると『・』の曲線と『★』の曲線は形が同じ。()()()()()()()だぞ!



って事で。

aの値がマイナスになると、グラフは上下逆さになる。ただし、開き具合は『同じ大きさのプラスa』と同じになるぞ。





以上から、aの値とグラフとの関係を纏めると次のようになるぞ。

▲ aが1以上……グラフは狭まる

■ aが0から1……グラフは開く

★ aがマイナス……グラフは上下逆さになる


aの値をイジる事で、グラフの上下も開き具合も自由自在だな!










それじゃあ、次はPoint④だ!

※グラフと表の部分に於いては、閲覧環境によっては見づらくなっているかもしれません。

大変申し訳ございません。



……ですが、この度『グラフや表が見やすくなる方法』を発見しました。

ご存知の方も居らっしゃるとは思いますが、ページの最上部右側、『トラックバック』ボタンの下に有る『表示調整』をお押し頂き、『行間』を100~120%ほどにして頂くと……。


あらビックリ、グラフや表の部分が驚くほどキレイに!



気になる方は、ぜひお試しください ((筆者個人の) (感想です))

『行間の設定をリセットする』という一手間が増えてしまいますが、きっとそれを上回る感動があります ((効果には個人) (差があります))

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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