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14-11. 家族Ⅰ






「……では、アーク様。心の準備が宜しければ、保留解除致します。宜しいでしょうか?」


トラスホームさんが、わたしにそう告げる。




わたしに用のある人って……、一体誰なんだろう?

まっ……まさか、さっきのダン達が言ってたみたいな告白……!?


いやいやいや、そんな訳無い無いッ!

この頃のわたしにはそんな機会無かったし、第一わたしにはケースケが…………――――



……ま、まあ、『相手』が誰であろうと関係ない。

わたしをケースケから奪い取るみたいな人が居たら、特訓でマスターした【強刺Ⅱ】(ストロング・スタブ)でモニター越しでも追い返してやるわ。


普段通り普段通り。リラーックス、リラーックス……






…………よし。

深呼吸で気持ちも整った。



「……ええ。大丈夫」

「承知致しました。他の皆様も準備は宜しいでしょうか?」

「「「「はい(はーい)!」」」」

「承知致しました」



わたしに続いて、ケースケ達もそう返事を返した。



さあ、準備完了ね。


あの通信機は『わたしに会いたい人』へと繋がっている。

……一体、モニターには誰が映るのかしら……。






「それではアーク様、皆様」



そして、一呼吸置いたトラスホームさんがわたし達にそう告げ。




「どうぞ」


通信機の黄色いボタンを押し、保留を解除した。











ピッ



テイラーの実家でも良く見慣れた、通信機の起動シーン。

『ピッ』ていう音と一緒に青透明の板が映し出される。




そんなプロジェクターに映っていたのは。




額に沢山の皺を寄せて、十何年と見慣れたシャツにカーディガンを着た男。

たった最近までは、毎日のように見ていた男。



『…………あっ、アーク!』


モニターに映るなり、聞き慣れた声でわたしの名前を呼ぶ男。




……間違いない。

この男は、他でもなくわたしの『家出』の原因になった男だ。




「………………おっ、お父様!!?」




テイラー領主でわたしの父、アーンス・テイラーだった。











「わっ、わたしを探してたのって……」

『あ、ああ、俺だ。……見つかって良かった! 本当に良かった……ッ!』


モニターの中で、お父様がハンカチで目を拭う。



「アーク様。……アーンス様は『早馬』やこの(わたくし)を使ってまで、貴女を捜しておられたのですよ」

「えっ……、そうだったの?!」

「左様です。ですから、アーンス様も相当ご心配なされていたのでしょうね」


トラスホームさんが、泣くお父様をやんわりフォロー。




『アっ、アーク…………。お前が、アークが突然行方不明になってッ…………心配していたんだぞ』


そんなお父様の涙は止まらない。

……えぇっ。

()()お父様が、泣くほどわたしの事を心配してたなんて。



「……てっ、てっきり、お父様なら『わたしが居なくなって清々した』とでも言ってるんじゃないかって思ってたけど」

『そんな訳が無かろう。何処か俺の知らない所で野垂れ死んでいないかと、この頃は心配で眠れなかったのだぞ』

「……そうだったのね」

『勿論だ。親の気持ちにもなれ、アーク』

「……ええ」


……いつもわたしの事を怒ってばかりだったお父様が、そんなにわたしの事を心配してくれてたなんて。

わたしを家族から仲間外れにしようとしていたお父様が、そんなにわたしの事を心配してくれてたなんて。

知らなかった。



……突然家出して、お父様に迷惑を掛けちゃってたのかもね。











モニターに映るお父様も落ち着き、ハンカチを仕舞うと。



『……いやいや、アークが無事見つかって本当に良かった。突然の願いにも関わらず、協力してくれて有難う。トラスホーム』

「いえいえ。アーンス様のお願いとあらば、何時でもお受け致しますよ」

『ハハァ……そう言ってくれると頼もしいな、領主の新星よ』

「有難う御座います」


お父様とトラスホームさんが話を始めた。

……領主同士だと、やっぱり内容が大人な話になるのね。



『……そうだな、トラスホーム。娘が世話になった御礼、今度王都の"領主会議"で会った時に返させて貰おう』

「いえいえ、そんな……結構ですよ、アーンス様」

『そんな事言わず――――

「いえ……折角のお誘いですが、結構です。こちらも()()()()()()()()ので」


ええ。色々有ったわね、確かに。

牢獄とか牢獄とか牢獄とか。



『……そうか。トラスホームがそこまで頑なに断るのなら仕方ない』

「…………はい。また今度、よろしくお願い致します」



そんなお父様は、トラスホームさんの気持ちを察して折れたみたい。

()()()()()トラスホームさんも、それを見て安堵してた。











「それじゃあ、お父様。心配掛けちゃってごめんなさい」

『お前が無事であったのなら構わん』


そう謝ると、お父様も安心した表情で返してくれた。


……さて。『面会相手』だったお父様とも久しぶりに言葉を交わしたし、無事も報告できた。

やっぱり、勝手に家出するのはダメだったかもね。


あと他に話す事も無いし、そろそろ通信を終わろうかな。



「たまに手紙でも送るわね。それじゃあ――――


通信機の赤い『通信切断』ボタンに手を掛けようとした、その時。



『いや、待てアーク』

「え?」


モニターからお父様の声が聞こえ、手を止める。



「どうしたの、お父様?」

『まだ通信の"本題"に入っていない』

「……えぇっ?」


……この通信って、『わたしの安否確認』のためじゃないの?

そんな事を考えつつモニターを眺めていると。


モニター越しのお父様の表情が急に一変、顔になり。






『アーク。帰ってこい』


そう、わたしに向かって『本題』を命じた。






「……えっ…………?」


あまりにも突然過ぎる『本題』の内容に、わたしは一瞬言葉を失ってしまった。

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『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
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どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
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そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
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