2-11. 覚醒
皆様、お待たせ致しました。
自分自身でも前置きが長いなとは思っていたのですが、ここからが本番です!
はい、もう色々面倒だったので明日から冒険者になることに決めてしまった。
しかし、はっきり言ってステータスがヤバい。
最低でもATK、DEFが20無いとヤバいわけだが、今の僕のステータスはこんな感じである。
===Status========
数原計介 17歳 男 Lv.3
職:数学者 状態:普通
HP 40/40
MP 39/40
ATK 4
DEF 14
INT 19
MND 23
===Skill========
【自動通訳】【MP回復強化Ⅰ】
【演算魔法】
=============
ATKとDEFは御覧の通り、基準値に足りない。特にATKはもう救いようが無いな。
さて、これを解決する手段としては、冒険者ギルドの本によると第一に装備を整える事だ。武器や防具を装備すると、その分だけ各ステータスの数字も上がるようだ。
しかし、僕には金が無い。装備を変えない。そんな金欠くんのために与えられた第二の道が筋トレだ。これをすれば自然とATK・DEFが、魔術師ならⅠNT・MNDが上がるようだ。
しかし、僕には時間も無い。あと二泊しかできないのだ。
そんな時間も金も無い人のために与えらえた第三の道は残念ながら本には書いてなかった。
はい。冒険者への道は詰んだっぽいな。
いや、ギルドに登録自体はステータスに依らず出来るんだけどね。
開きっぱなしになっているステータスプレートを改めて眺める。
===Status========
数原計介 17歳 男 Lv.3
職:数学者 状態:普通
HP 40/40
MP 40/40
ATK 4
DEF 14
INT 19
MND 23
===Skill========
【自動通訳】【MP回復強化Ⅰ】
【演算魔法】
=============
あ、いつの間にかプレートを開くのに使った分のMPが回復してる。
【MP回復強化Ⅰ】のお陰だろうか。
ちなみに、【MP回復強化Ⅰ】の情報はこんな感じだ。
===【MP回復強化Ⅰ】========
MPの自然回復を早める。
回復速度はスキルレベルにより、高い程速まる。
===========
…まぁ、名前通りのスキルだろうか。
とりあえず説明画面を閉じて、ステータスを再び眺める。
…基準値までATKが16、DEFが6。
せめてDEFさえ20に達していれば、倒せなくとも死ぬことは無いだろう。
「…はぁ」
思わずため息がこぼれる。
もはや為す術無し。
やっぱり仕事探すかな…
ふと、そう思いかけた時。
僕の目には【加法術Ⅰ】が目に入った。
そしてアホみたいな考えを思いついてしまった。
「DEFにプラス6できるかな…?」
【加法術Ⅰ】とは、魔力を消費して数値の加算を正確にこなせるスキルだ。
頭の中で、DEFの数字をプラス6したらどうなる…?
僕自身でも酷いヘリクツだなとは思った。
けど、今や八方塞がり。
期待はしていないけど、とりあえず物は試しだ。やってみよう。
DEFに指を当てる。
「【加法術Ⅰ】」
その途端、先程も感じた倦怠感が再び体を襲う。
そしてその瞬間、DEFの数字が一瞬のノイズに覆われた。
ノイズが消えると、そこには新たな数字が現れていた。
===Status========
数原計介 17歳 男 Lv.3
職:数学者 状態:普通
HP 40/40
MP 34/40
ATK 4
DEF 20
INT 19
MND 23
===Skill========
【自動通訳】【MP回復強化Ⅰ】
【演算魔法】
=============
DEFが6増えて20になっていた。
そしてMPが………6?減っている。
MP、つまり魔力を使ったってことは魔法が発動したってことだ。
…え?まさか【加法術Ⅰ】成功しちゃった?DEF上がってるしな。
まさかのアホな思い付きだと思ってたんだけど。ステータスも数字だから、足し算できるかなと思っちゃっただけなんだけど。
そんな考え事をしていた時。
ピッ
小さな電子音と共に、横長なステータスプレートが現れた。
===========
パッシブスキル【状態操作Ⅰ】を獲得しました
===========
………えぇ。
マジか。
え、ちょっと待って。今日何個目のスキルだ。
スキルってこんなに簡単に手に入るもんなの?
それとも単なる幸運か?牡牛座が1位にでもなったのか?
よし、若干頭は着いてこないんだけど、整理しよう。
そのうち理解が追い付いてくるはずだ。
横長のメッセージを消して、プレートを再び眺める。
===Status========
数原計介 17歳 男 Lv.3
職:数学者 状態:普通
HP 40/40
MP 34/40
ATK 4
DEF 20
INT 19
MND 23
===Skill========
【自動通訳】【MP回復強化Ⅰ】
【演算魔法】
=============
…【状態操作】が無い。こういう時は大体【演算魔法】の中だろう。
===【演算魔法】========
【加法術Ⅰ】
【状態操作Ⅰ】
===========
はい。予想通りだ。じゃあ、【状態操作Ⅰ】の内容を確認しよう。
===【状態操作Ⅰ】========
ステータスプレートの数値を【演算魔法】を用いて演算し、上書きすることができるようになる。
上書きの維持時間はスキルレベルによる。
===========
おぉ、凄い。
数値を計算で変えられるってことか。
今はDEFをプラス6したいって思いつつ【加法術Ⅰ】を使ったら、本当にDEFはプラス6されていた。
つまり、計算式、っていうのか?それを頭の中で浮かべつつ魔法を使えば数字がその通りになると。使い方はそんな感じだろう。
今回のならば『14+6』って事だな。この式を無意識に頭の中で組み立てていたから、魔法が発動したって感じだな。
ちなみに、僕も式を立てる事くらいは出来る。計算できるかは別だけどね。
というか、これって「バフ」ってやつだよな。ステータスを上げる魔法みたいな。
維持時間、とかいう難しい言葉があるが、つまりこれはバフの時間制限って事だろう。
「じゃあ、これならATK・DEFの20いけるんじゃない!?」
つい興奮して口に出てしまったが、そういう事だ。
魔力が枯渇しない範囲であれば、バフが出来る。
ちょっとATKも魔法で上げてみるか。
ATKに指を当て、足して20になるようにプラス16をイメージ。計算式は『4+16』だ。
そして、魔法名を読み上げる。
「【加法術I】!」
DEFの時と同様にノイズが走る。
きたきた!
そして、ノイズが晴れてそこに現れた数字は…
===Status========
数原計介 17歳 男 Lv.3
職:数学者 状態:普通
HP 40/40
MP 24/40
ATK 14
DEF 20
INT 19
MND 23
===Skill========
【自動通訳】【MP回復強化Ⅰ】
【演算魔法】
=============
14だった。
…10しか足されてない!
なんでだ!【演算魔法】様!
その時、ふと頭に蘇る【加法術I】の説明文。
『【加法術I】の計算能力は、スキルレベルによる』
あ、多分これのせいか。レベル不足で16も足せないってことだよなきっと。
スキルレベルがIだとマックス10までしか足せない、みたいな感じだろう。
ATKは10しか足されなかったが、MPの消費もピッタリ10だし。
きっとそうだ。そういう事にしておこう。
とはいえ、まさかのステータスの上昇が出来てしまった。
途絶えていたはずの冒険者への道が、今再び開かれたような気がする。
これって冒険者ワンチャンあるな。
さてと。
金が尽きる間際、開かれた金稼ぎの道はまさかの数学者という非戦闘職でありながら冒険者だった。まぁ、なんとかなるだろ。
現在の服装は麻の服に白いロングコート。
重要物は数学の参考書。
職は数学者。
目的は…魔王の討伐だが、当面の間は金稼ぎとしよう。
準備は整った。さぁ、冒険者になりますか!
 




