13-18. 展開
さて。
今まで使っていたのは『1次式』。()に数字が掛かっている式を展開するか、式に因数分解するっていう簡単なヤツだった。
次のポイントからは、『2次式』を扱っていくぞ。
2次多項式の因数分解・展開はこんな感じだ。
x²+7x+10
展開↑ ↓因数分解
(x+2)(x+5)
なんと、2次式になると()が2個!
ダブルカッコになるんだよ!
因数分解のやり甲斐が有るじゃんか!
……まぁ、計算が複雑にはなるけど、やる事は変わらない。
展開は『ひたすら()を消していくだけ』、因数分解は『ひたすら()を増やしていくだけ』。それを念頭に置いとけば、なんとかなるハズだ。
それではまず、『2次多項式の展開』から行ってみよう。
Point④
『2次多項式の展開は"慣れ"』
数と()の組み合わせを展開する時は、数を()内のそれぞれに掛けていけば良かった。
それじゃあ……下のような()と()の組み合わせを展開するなら、どうすれば良い?
(x+2)(x+5)
……難しく考える必要は無い。こうやってみよう。
x+2 = y
こんなyを作り出して、()と()の式に代入してしまえば……
y(x+5)
あら不思議! ()と()だったのが、さっきやった数字と()の組み合わせに変わってしまった!
これならさっきと同じ方法で展開が進められるな。
y(x+5)
=xy + 5y
=x(x+2) + 5(x+2)
=x²+2x+5x+10
=x²+7x+10
こんな感じで展開が無事完了したぞ!
この方法を使えば、()と()の展開はバッチリだ!
ダブルカッコどころか、幾つカッコが並んでいてもやろうと思えば展開しきれるぞ!
ちなみに、展開に慣れてくるとこんな事に気付くんじゃないかな。
(x+2)(x+5)
=x² +7x +10
↑ ↑
2と5の和 2と5の積
そう。
(x+a)(x+b)って形の式を展開すると、結果は必ず下の式になっているのだ。
x²+(和)x+(積)
慣れてきたら、こういう風に覚えると計算が楽チンになるぞ。
2次多項式の展開では、『慣れ』こそが命なのだ!
Point⑤
『2次多項式の因数分解は"慣れ"と"閃き"』
……さて。
ここが本当の山場だ。
コレのマスターが、以降の数学生活の中で本当に大事になってくる。
今後の数学生活が、コレに掛かってるって言っても間違いじゃないのだ!
……とはいえ、結局は『因数分解は展開の逆』。
2次多項式においても、展開が出来れば因数分解もきっと大丈夫。
そう信じて、やってみよう。
では、突然ですがここでクイズです。
第1問。
足すと4、掛けると3になる二つの数字ってなーんだ?
シンキングタイム、スタートッ!
分かったかな?
答えは『1と3』だ。
では、第2問。
足すと6、掛けると8になる二つの数字ってなーんだ?
分かったかな?
答えは『2と4』だ。
続いて第3問、行ってみよう。
足すと-10、掛けると21になる二つの数字ってなーんだ?
では、正解発表。『-7と-3』だ。
『二つの数字』だから負の数だって勿論アリだぞ。
それでは、最終問題。
足すと3、掛けると-10になる二つの数字ってなーんだ?
最終問題の答えは、『5と-2』だ。
掛けてマイナスになるって事は、『+と-』の組み合わせになるって事だ。
それが分かれば、答えにはギュンと近づくだろう。
さて。以上の4問のうち、何問正解できたかな?
…………まぁ、そんな事はどうでも良いんだ。
何問正解だろうが構わない。全ミスでも構わない。
ただ、『足して何、掛けて何になる二つの数字』の考え方が分かればそれで十分なのだ。
では、なんで急遽こんなクイズ大会が開催されたのか?
……その答えについては、コレを思い出してほしい。
(x+2)(x+5)
=x² +7x +10
↑ ↑
2と5の和 2と5の積
コレはさっき、因数分解の所で書いてあった説明だ。
展開は、『和』と『積』で一気に計算できちゃう。
って事は、展開と逆の存在である『因数分解』でも『和』と『積』から計算できちゃうよね!?
……そういう事。
さっきのクイズ大会は、そのための事だったのだ。
じゃあ、今のを踏まえて因数分解の説明をしていこう。
x²+7x+10
まずはこの例題。
2次多項式を因数分解する時には、まず『和』と『積』を考える。
この例題なら……『足して7、掛けて10』だな。
その答えは『2と5』。
という事で、展開の時に見たようなダブルカッコに『+2』と『+5』を当てはめれば……
(x+2)(x+5)
はい、完了。
……以上だ。
じゃあ、もう1問やってみよう。
x²+4x-21
この例題なら、『足して4、掛けて21』になる組み合わせだ。
掛けてマイナスになるってことは『+と-』のペアだから……答えは『7と-3』。
という事で、ダブルカッコに『+7』と『-3』を入れれば……
(x+7)(x-3)
はい、完了。
……以上。
どうだろうか?
さっきのクイズ大会が出来た人なら、2次多項式をダブルカッコにするのもそう難しくないんじゃないかな。
考え方は1次式の因数分解の時よりもかなり複雑。イメージもしづらい。
……けど、『やってみたら意外と出来ちゃった』っていう事もあるかもしれないな。
2次多項式の因数分解は、『慣れ』と『閃き』が命。
『閃き』力がある人ならパパっと解いちゃうし、沢山計算練習をしてきた人もパパっと解いちゃう。
だから、もし今『中々答えが閃かないー』って状況になっていても、何度も練習すれば答えがパッと浮かぶようになるハズだ。
そんな時には、焦らず勉強をしていこう。
Point⑥
『特別な公式は”呼吸レベル”まで使いこなせ』
さて、因数分解と展開についての説明は大体こんな感じだ。
それじゃあ、最後は因数分解・展開の中でも『特別な形』をお教えしよう。
特別な式は全部で3つ。
コイツらは因数分解や展開の中でも殿堂入りとして、『公式』になっているのだ。
では、順に見ていこう。
公式その1。
(x+a)² = x²+2ax+a²
『²』を外して書くと(x+a)(x+a)って形だ。この時には『和が2a、積がa²』ってなる。
当てはまる例としては、『和が8、積が16』『和が14、積が49』って感じだな。
それぞれa=4、a=7になるぞ。
公式その2。
(x-a)² = x²-2ax+a²
『公式その1』で、aが-aになっただけだ。考え方は同じ。
だけど、展開すると2axはマイナスに、a²はプラスのままになる。
そこだけ気を付けておこう。
そして、公式その3。
(x+a)(x-a) = x²-a²
……初めてこの公式を見た時には、『axどこ行ったよ』ってツッコむ人が居るかもしれない。
不思議に思うかもしれないけど、そう思った時は展開してみてください。ちゃんと消えるんです。
まぁ、一風変わった雰囲気を醸し出す公式だけど、実はコレが意外と使うんだよね。
是非覚えておこう。
以上の3式は、因数分解・展開をやる上では必要不可欠な公式だ。
……まぁ、どれも『和』と『積』の考え方でやれば最終的には式変形出来るんだけど、やっぱり『計算時間』に響いてくるよね。
x²+2ax+a²を見たら、すかさず(x+a)²。
(x+a)(x-a)を見たら、すかさずx²-a²。
こんな感じで『呼吸をするかのように公式を使える』ようになれば、かなり計算が楽になるぞ!
「フゥ……」
なんとか説明を読み終えたぞ。
……いやー、長かった。
読むだけでも結構疲れちゃったな。
流石は因数分解と展開。かなり重要な部分だからか、結構読むのにも時間が掛かった。
文も長かったし。
さて、そんじゃあ練習問題を————
「……っと」
あぁ、忘れてた。
まだコラムが残ってた。
コイツを読み終わったら、お待ちかねの練習問題だな。
Column
『解答の形は”中途半端”が一番ダメ』
『2次多項式』には、色々な形がある。
展開した後の形や因数分解しきった後の形、またその中間とか、あるいは以降の単元で学ぶ『平方完成』の形とか、様々だ。
……で。
例えば、数学のテストで答えが『2次多項式』になる問題があったとしよう。
こんな時、解答用紙にはどうやって書く?
展開?
因数分解?
平方完成?
どの形で表せば良いか、心配になるよね。
そんな時は、『完全に展開しきった形』か『完全に因数分解しきった形』のどちらかにしよう。
例えば、答えが『x²+4x-21』になったら、解答用紙には
『x²+4x-21』
『(x+7)(x-3)』
のどっちかにしよう。
展開の途中だったり、『x(x+4)-21』とか変な形だったりするとテストではバツにされることがある。
不用意に計算途中で終わらせたりしないように、気をつけよう。
……よし!
それじゃあお待ちかねの練習問題だ!




