13-10-2. 『反省会Ⅱ』
「それじゃあ……シン、コース、ダン、アーク。特訓1日目の『反省会』、スタートだ!」
「はい!」
「はーい!」
「おう!」
「ええ!」
5人でダイニングテーブルを囲み、反省会が始まった。
「なんかこの感じ、前にやった『講義』みたいだねー!」
「あー、そうですね!」
「懐かしいな!」
「……え、何それ? わたし知らないんだけど」
「そう言えば、アークが仲間になってからやってないですもんね」
「……ってか、最近全然やってなかったしな。そんなモン忘れてたよ」
「じゃー先生、やろーよ! 講義!」
「そうですね! この機会に是非!」
「…………お、おぅ」
「えーと……、んー、でも、いきなり『講義やれ』って言われてもなー……。何やろう?」
「「「「…………」」」」
「……よし、こんな時は。 …………僕の記憶よ、こんな時にどうすればいいか、答えを教えたまえ! 【求解】!」
ピッ
「ん、『神谷流反省術』? ……あー、アレか。神谷が球技大会の反省会で言ってたヤツか。懐かしいな」
「……先生、なんですかそれ?」
「呟いても聞こえないぞ」
「講義まだなのー?」
「あぁ、ゴメンゴメン。今講義でやる事決めたから、始めよっか」
「はい!」
「うん!」
「待ってたぜ!」
「ケースケの講義……どんな物なのか楽しみね」
「それじゃあ、講義を始めます。僕の第3回講義、それは…………」
「「「「それは……」」」」
「『目標の設定』だ」
「「「「目標の設定?」」」」
「あぁ。強くなりたいって思った時には、まず何より明確な『目標』が必要なんだ。目標が有ると無いとじゃ、成長具合が全然違う。……という事で、今回は『フーリエ特訓』での目標を決めようと思う」
「明確な目標、ですか……」
「あぁ」
「そんなん決まってるだろ先生。『ブローリザードを倒す』じゃないのか?」
「まぁ、そうだな。……そうなんだけどさ、今回はちょっと違うんだよ」
「えー、じゃあ私は『もっと強くなりたい』!」
「そう。究極的にはそうなるんだけど、それも今回だとちょっと違うんだよなー」
「えー……」
「一体どう違うんでしょうか、先生……?」
「おぅ。それでは説明しよう! 第3回講義、『目標の設定』を!」
「じゃあ、例として僕の目標を考えよう。皆も一緒に考えてくれよ」
「「「はい」」」
「ええ」
「まず……僕の最終的な目標としては、『魔王を倒す』事だ。それを達成するためには、ブローリザードなんかで躓いてるわけにはいかない。ダンの言った通り『ブローリザードを倒す』のが必要だよな」
「おう! 勿論だ!」
「で、『ブローリザードを倒す』ためには、コースが言った通り『もっと強く』ならなきゃいけないよな」
「うん!」
「じゃあ、『もっと強くなる』ために僕はどうすれば良い?」
「…………そうですね。一般的にはLvアップをしてATKやDEF、INT、MNDを上げるが常套手段ですが……」
「僕はLvアップしても、ATKとかの伸びがほぼゼロなんだよな。MPやHPの上限は上がるんだけど」
「そんなら、新しく武器を拵えれば良いんじゃないか?」
「ATKが低い僕じゃ、このナイフで十分だな。これより重い武器だと振れなくなっちゃうし」
「うーん……Lvアップでも武器でもダメなら、先生も『系統魔法』覚えてみるー?」
「あー、それは悪くないかもな。……でもちょっと遠回りだよな。僕に適性が有るかどうかも分からないし」
「えー……」
「……じゃあ、ケースケの多彩な【演算魔法】をもっと強力にしてみるとか?」
「そう! ソレだ! 僕の武器と言っても良い【演算魔法】をもっと強力にする事、コレこそ『僕がもっと強くなる』ための近道だと僕は思ってるんだよ」
「成程……」
「で、次だ。『もっと強くなる』ために『【演算魔法】を強力にする』って決めた。じゃあ、『【演算魔法】を強力にする』ために何をすれば良い?」
「……なんかエンドレスだねー」
「そうだな。……だけど、コース。コレを続けていけば、今僕が何をすれば良いかって事が分かるんだよ」
「んー……まあ、確かにー」
「なら、ケースケは『【演算魔法】を強力にする』ために何をしてるの?」
「あぁ。それはだな……。今はMP不足で使えない『【合同Ⅰ】の"分身"を使えるようにする』。そのために今は『Lvを上げて最大MPを上げる』、コレが僕の目標だ」
「「「「おぉ……」」」」
「……って、結局先生の目標もフツーじゃん!」
「コースの言う通りだ! あんだけ遠回りしときながら、最終的には常套手段に行き着いちまうのかよ!」
「……まぁ、それは否定しない。…………けどさ、さっきは『Lvアップはダメ』って話になってたじゃんか、コース、ダン?」
「…………あぁ。確かに」
「私も『Lvアップでも武器でもダメなら』って言ったの覚えてるよー」
「そういう事だ。こうやって目標を明確にしていけば、今僕がやるべき目標が見えてくる。強くなる上で一見遠回りに見えた『Lvアップ』だって、実は一番の近道だったりするようにな」
「へー……」
「そういう事か……」
「ってな訳で、どんな事をやるかってのは分かったな。それじゃあシンから始めよう」
「はい!」
「それじゃあ……シンは、『強くなるため』『リザードを倒すため』にどうすれば良い?」
「えーと…………改めてそう言われると、結構難しいですね」
「なら言い換えよう。シンの弱点はドコだと思う?」
「じゃ、弱点ですか。……Lvが低く、ステータスが足りてない所でしょうか?」
「それは僕のステータス加算で補えてるから大丈夫。他には?」
「……私の長剣が長すぎて、身体に合ってない点ですか?」
「そうなの? 僕には今まで問題無く見えてたけど。ちゃんと振れてるし」
「だとすれば、他に弱点は………………先生は私の弱点、分かりますか?」
「一応な」
「教えてくださいッ!」
「おぅ」
「……それじゃあ、シン。ぶっちゃけ言うと、僕達はまだ子どもでLvは低いとはいえ、【演算魔法】を使えばステータス的には問題無いと思ってるんだ。だから長剣も振れてる。ちゃんと動けてるんだ」
「はい」
「……そこでだ。ちゃんと動けるハズのシンって、魔物と戦ってる時によくブッ飛ばされてるよな。今日然り、エメラルドウルフの時然り」
「……はい。恥ずかしながら」
「アレってDEFを爆上げしてるからこそ怪我してないけど、普通ならあんな一撃貰えば重傷確定だよな」
「そうですね……」
「だから、僕はシンの課題は『クリーンヒットを貰わない事』だと思う。」
「……クリーンヒット、ですか…………。確かに、先生の仰る通りかもしれないです」
「よし。じゃあ次、『どうやったらクリーンヒットを貰わずに済むか』を考えよう」
「はい…………」
「どうだ、シン。分かったか?」
「……すみません、分からないです」
「そんじゃあ、僕から。……お前の師匠でもある神谷は昔、体育の授業で剣道をやった時にこんな事を言ってたんだ。『剣先を常に相手の喉に向けるのだ。それだけで数原君はだいぶ強く見えるのだよ』って」
「剣先を相手の喉に向ける、ですか?」
「あぁ、神谷はそう言ってた。ソレを踏まえて考えると、シンがブッ飛ばされる時っていつも『相手の方に向いてない時』だなって思うんだよ」
「さっきは……恐怖で腕を縮こめ、剣を引いてしまった時でした。エメラルドウルフにブッ飛ばされた時は確か……剣を振りかぶってた時! カミヤさんの仰る通りです!」
「だよな? だから、僕が考えるシンの喫緊の課題、それは『剣先を相手から逸らさない』って事で良いんじゃない?」
「はい! カミヤさんの言葉……忘れませんッ!」
「よし。じゃあシンの課題はソレで。今度会ったら神谷にお礼言わないとね」
「はい!」
「じゃあ次はコース、行ってみよう」
「ハーイ!」
予想外に長くなってしまったので、もう1回続きます。
特訓本編まではもう少しお待ちください!




