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12-30. 連立方程式Ⅰ

さて。

シン、コース、ダン、アークは寝た。

轟は岩肌の地面に毛布を敷いて寝っ転がり、星空を眺めている。

僕はまだ眠気が来ないし、暇。


という事で、数学者らしく勉強でもしよう。




「……フゥ」


深く深呼吸を一つして、後ろに置いといたリュックから紙とペン、[参考書]を取り出す。

リュックを机代わりにして勉強セットを置き、座れば準備は完了。

月明かりは無いけど、明かりは焚火で十分だ。



ペラッと表紙を捲り、目次を開く。

昨日やったのはーっと…………そうそう、『定義域』だ。


不等式を使って関数の『有効区間』を設定出来るってヤツだったな。

【状態操作Ⅳ】ステータス・オペレーションと併用して出来たバリアも、昨晩は素晴らしい働きを見せてくれたよな。

もし昨晩バリアが無かったら、多分あの男はアークの燃え盛る槍によって『無限串焼き地獄』の刑に処されていたと思う。


……良かった。そんな悲惨な結末を迎えずに済んで。

昨晩はバリアの有能さを思い知らされた夜だったよ。



まぁ、そんな事は置いといて。

今晩勉強する単元は……『連立方程式』だ。

あぁ……やったやった。懐かしい。

結局よく分からないまま、通り過ぎちゃった分野だ。



よし。この際、連立方程式を完璧に覚えちゃおう。


そんじゃあ、やりますか。











●連立方程式

連立方程式とは、『複数の共通する文字を含んだ数式の組』の事である。数式同士を足し合わせる事によって文字数を減らし、解を求める。



……『フクスーノキョーツースルモジヲフクンダスーシキノクミ』って言われましても……。

そんな呪文、僕の頭が速攻で受信拒否だ。

よく分かんない。


って事で、参考書の説明を読んでいこう。






Point①

『連立方程式とは、”謎解きパズル”』



それじゃあまず、『連立方程式とは何か』についての説明から始めよう。


連立方程式(れんりつほうていしき)、名前はなんだか堅苦しくてあまり聞き慣れない言葉だ。

けど、だからと言って拒絶する事なかれ。

連立方程式ってのは、簡単に言ってみれば『"2つの文字x, y"に入る数字のペアを"2つのヒントA, B"から推理していく、いわば()()()()()()』なのだ! ちょっと面白そうだよね?

という訳だから、そう難しく考えないで欲しい。気分は謎解き、パズルをやっているみたいな感じでいこう。



それでは、早速ですが『連立方程式』を使ったクイズを出します。

パズルだと思って気軽に解いてね。


問題。

次の2つの等式が一緒に成り立つような☆と□のペアは?

  ☆+□ = 8

2×☆-□ = 10



……分かったかな?

正解は『☆=6, □=2』だ。この組み合わせなら2本の式が同時に成り立つ。


まぁ、連立方程式の考え方はこの問題とほぼ一緒。

今みたいな感じで『同時に成り立つ2つの式』を"連立方程式"といい、『☆と□に入る数字のペアを探す』のが"連立方程式を解く"と言うぞ。






Point②

『問題文から"2つの文字"と"2つのヒント"を読み取る』



さて、Point①で『連立方程式ってこんな感じのモノなんだ』っていうイメージは分かっただろうか?

ここから先、Point②~④にかけては簡単な連立方程式の解き方の流れを一通り説明して進むぞ。

それでは、僕達が解く例題はコチラだ。


『リンゴ1個とミカン1個を買うと、代金は220円だった。僕の後ろのオバちゃんはリンゴ3個とミカン2個を買って、540円払っていた。さて、リンゴとミカンの単価はそれぞれいくらでしょう?』



……問題文を見る限り、ちょっと複雑。

まず何処から手を付けて良いか、分からない人にはサッパリかもしれない。

そこで、次のステップで解いていくぞ!



━Point②━━━━━━━━━━━━

"2つの文字"と"2つのヒント"を読み取る

━━━━━━━━━━━━━━━━

       \/

━Point③, ④━━━━━━━━━━

"加減法"や"代入法"で文字を減らす

━━━━━━━━━━━━━━━━

       \/

━Point⑤━━━━━━━━━━━━

連立方程式を解く

━━━━━━━━━━━━━━━━    



こんな流れだ。

それでは、最初の『"2つの文字"と"2つのヒント"を読み取る』から見ていこう。




連立方程式に取り掛かり、問題文を読んでいく時に2つ気付いて欲しい箇所がある。

その一、『求める数字は何か』。

どの値にx、どの値にyを置いてやるかが重要になる。

コレが『2つの文字を読み取る』ってヤツだぞ。


その二、『文字を使ってどんな式を立てるか』。

上で決めた文字を使い、『数式』に置き換えられるかどうかがカギになってくる。

コレが『2つのヒントを読み取る』ってヤツだ。



この二つに気付き、適切な連立方程式が立てられるかどうかが第一の関門だ。

という事で、今回の問題では『2つの文字x, y』と『2つのヒントA, B』をこのように決めた。


(←―)(――)(――)1(――)(――)(――)(――)(――)(――)1(――)(――)(A―)(――)(――)(――)(――)(――)(――)(――)2(――)2(――)0(――)(―→)だった。僕の後ろのオバちゃんは(←―)(――)(――)3(――)(――)(――)(――)(――)(――)2(――)(B―)(――)(――)(――)(――)(――)5(――)4(――)0(――)(―→)払っていた。さて、(←―)(―x―)(―→)(←―)(―y―)(―→)の単価はそれぞれいくらでしょう?』


ちなみに、x, yが逆でも大丈夫だ。その時には、以降の説明でも全部逆になるので注意。

そして、ヒントA, Bをそれぞれの単価x, yを使って数式にするとこうなる。


┏ x+y = 220

┗ 3x+2y = 540


コレで連立方程式が出来たぞ!

あとはこの連立方程式を解くだけだ!






Point③

『連立方程式の基本は"式と式の足し合わせ"』



さて。Point②で2本の式を立てた。

後はコレを解いてx, yに入る数字の組を求めればクリアだ。

ゴールは近い。


……けど、そう簡単に答えは見つからないモンだ。

とりあえず、さっき立てた連立方程式を見てみよう。


┏ x+y = 220

┗ 3x+2y = 540



この2式から、どちらの式にも当てはまるx, yのペアを見つければクリアなんだけど……。

どうやって見つけるようか?


『勘』でどうにかなっちゃうような物ではないしー……。

x+yが220になる組み合わせの『x=1, y=219を下式で確認』、『x=2, y=218を下式で確認』、『x=3, y=217を下式で』……、ってやっていくのはアリかもしれない。『x=220, y=0』に到着する前に答えが見つかるハズだ。

……けど、かなり面倒だし時間が掛かり過ぎる。ってか、万が一正解が0.1単位とかだったら辿り着けないしなー……。



……ダメだ、分かんない。

隊長! (連立方程式)(難し)すぎて、僕には倒せ(解け)ませんッ……!






だがしかしッ!

そんな難攻不落の(連立方程式)倒す(解く)ため、2種類の『最強の作戦』が開発されているのだ!

相手がどんな連立方程式なのかによって、どちらの作戦を使用するかが異なる。

順に紹介していくので、しっかり覚えてくれ。



その1、作戦名『加減法(かげんほう)』。

どんな連立方程式に対しても対応できる、オールマイティな戦略だ。

やる事は簡単。2本の式を足し合わせて、新たなる『第3の式』を作り出す。

『第3の式』にはxかyの片方が()()されており、残った方から順にx, yを倒し(解い)ていくのだ。


実際に『加減法』のデモを行うので、見てくれ。



(i)(連立方程式)の確認

┏ x+y = 220

┗ 3x+2y = 540

まず(連立方程式)をよく見て、xとyのどちらを消去させるか決める。

今回はyを消去させ、xから順に倒す(解く)ことにしよう。



(ii)消去の準備

(連立方程式)は上式と下式を足し合わせる事ができ、更に(難し)くなる。それを利用してyを消去させるように仕向けよう。


┏ x+y = 220

┗ 3x+2y = 540

この2式がそのまま足し合わされれば、次のようになる。

(x+y)+(3x+2y) = 220+540

    4x+3y = 760


こうなってしまったら手遅れだ。

そこで、足し合わされる前に『yが消去される』ように式をいじる。

その方法とは……『上式を丸ごと(-2)倍』だ!

コレを行うことで、敵は自滅への道を辿るのだ。


では、作戦を行った後の流れを見てくれ。



(iii)『第3の式』の出現

┏ x+y = 220

┗ 3x+2y = 540

上式を丸ごと(-2)倍すると、次のようになる。

┏ -2x-2y = -440

┗ 3x+2y = 540

そして(連立方程式)の2式が足し合わされ、『第3の式』が現れる。

(-2x-2y)+(3x+2y) = -440+540

     -2x+3x = 100



(iv)x, yを倒す(求める)


すると、『第三の式』はyが消去されて『xと数字だけの方程式』に成り下がる。

ココまで来れば、答えは見えたも同然!

『x=100』だ!


xが倒せ(解け)たならば、後はyを倒す(解く)だけ。

(連立方程式)の上式でも下式でも、好きな方に『x=100』を()()してyを倒し(解い)てしまおう。

今回は上式を使う。


100(←―x―→)+y = 220

       y = 220-100

        = 120

『y=120』も解けた。



こうして、『加減法』によって(連立方程式)の解は『x=100, y=120』と求めることができたぞ!






……作戦名『加減法』のデモは以上だ。

分かっただろうか?


では、続いて2つ目の作戦、作戦名『代入法(だいにゅうほう)』に移る。

※連立方程式における『{ 』について

連立方程式では、一般に複数の式を『(波括弧)』で括って『式の組』であることを示します。

ですが、拙作では仕様上複数の式を『{ 』で括れないため、


┏ (上式)

┗ (下式)


によって代用させて頂きます。

分かりづらくなるとは思いますが、どうかご容赦ください。

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
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