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12-17. 一次関数Ⅰ

「あー……お腹一杯だー……」


障子越しの月明かりに照らされる部屋。

部屋に布団を敷き、ボフッと背中からダイブ。

芋料理で膨れたお腹をさすり、ボーッと天井を眺める。






いやー……、お爺さんのお陰で夕食と宿を探す手間が省けたし、良かった良かった。


とはいえ、『縁側でお茶』に始まって『夕食』を頂き、更にはそのまま『寝床』と、お爺さんにお世話になりっぱなしの僕達。

そこまでされちゃ、流石に僕の中にも申し訳なさが溜まって来る。


……のだが、一番ノリノリなのがお爺さんなのでどうしようもなかった。

僕は考える事を止め、今日はお爺さんのご厚意に甘え尽くす事にした。






という訳で、夜。

お爺さんお手製の夕食を頂いた僕達は、そのまま空き部屋に案内された。

徹底的にお爺さんの厚意に甘える事にした僕は、通してもらった部屋で布団に寝っ転がり、自宅のごとく寛いでいた。



お爺さんの家は広く、空き部屋を3つも貸してくれた。

1部屋はシンとダン。1部屋はコースとアーク。

そして残った1部屋が僕の個室だ。


……またボッチだって?

仕方ないじゃんか。ジャンケンで負け越しちゃったんだからさ。



そんな訳で、僕は今こうやって一人部屋でノンビリ中だ。

部屋は畳敷きの和室。

障子を開ければ、さっき僕達が並んで座ってた縁側だ。


……まるで旅館に泊まってるみたいな気持ちだ。

フカフカベッドも良いけど、たまにはこういう布団も良いな。






ふと、部屋の隅っこに脱ぎ捨てた白衣が目に入る。


全身至る所が切り刻まれており、僕の血が所々に滲んでいる。

更にはエメラルドウルフの脳天をカチ割った時の返り血も被っており、それはもう酷い事になっている。

……こりゃ血に塗れし狂科学者ブラッディ・マッドサイエンティストって言われても仕方ないか。


いや、それにしてもだ。

あーぁ……、折角『商工組合本部』の白衣専門店で昨日買ったばかりの新品だったってのに。

まさか1日でこんなボロボロになっちゃうとは。



……まぁいいや。白衣の件は置いといて。


今日は朝から大変だったなー。

言ってみれば……ボス戦みたいなモンだった。

ヤバイって思う瞬間も所々有ったけど、なんとか仲間達と乗り越えられたし、良かった良かった。


……ってか、アレだな。

エメラルドウルフなんかでドウノコウノ言ってたら、魔王なんて倒せたモンじゃないしな。




……ハァ。ちょっと疲れたかな……。

ふと全身に感じる疲労感。

そういや今日は朝から大変だったしな。こういう日はさっさと寝るに限る。


さっき歯磨きも済ませたし、寝る準備は万端。

掛け布団を被り、頭を枕に乗っける。



「さて……おやすみー……」


という事で、僕は眠りに就いた。
















のだが。


「………………寝れない」


おかしい。

身体は結構疲れているのに全然眠れない。

眠気が完全にナリを潜めちゃって、頭がスッキリしているのだ。


……もしかしてアレか。

馬車の中でタップリ昼寝しちゃったから夜寝れないってヤツか。



仕方ないな、全く……。


こうなったら…………そうだな。

数学の勉強でもしますか。

勉強でもすれば少しは眠くなるんじゃないかな。






布団からのそのそと立ち上がり、部屋の隅に立ててあったちゃぶ台をセッティング。

部屋にあったロウソクに火をつけ、リュックから紙とペン、それと参考書を持ってきてちゃぶ台に置いたら準備完了。



「えーっと、前回は……」


目次を開き、今日やる所を確認。

前回やったのが……そうそう、『確率』だ。


【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションには色々とお世話になっている。

『ブン投げたレンガが直撃する確率』とか『風の刃が直撃する確率』とか、そう言った確率を都合の良いようにしてもらってるからな。



という事で、今日やる所は……『確率』の次、『一次関数』だ。


あー……、出た出た。『関数』。

僕の中では『”関数”って言われたら、とりあえずfを使っとけばなんとかなる』ってくらいのイメージなんだけど、一体何者なんだろうか。



さて、そんじゃあやりますか。











●一次関数

関数とは『2つの変数の関係』を表している。

2つの変数x、yがあり、xの値を決めるとyの値が1つに定まる時『yはxの関数である』という。

また、一次関数とは『xの一次式で表せる関数y』の事である。



……はっきり言って謎文だ。

数学を知らない人にコレを伝えたって、分かる訳ないじゃんか。


という事で、まずは『関数』についての説明だ。幾つか例を挙げて説明していく。

関数って考え方は中学・高校・大学、その先の数学でも必ず使う事になる。今のうちにしっかりマスターしておこう。






Point①

『関数とは”yとxとのルール”』



それでは突然ですが、問題です。


(1)『←←』は、とあるルールを表しています。

では、『???』に入るのは何でしょうか?


カニ缶 ←← 蟹

乾パン ←← ビスケットと砂糖

サバ味噌缶 ←← 鯖と味噌

コンビーフ ←← 蒸し煮の牛肉

??? ←← 鮪と油




分かったかな?


答えは『ツナ缶』だ。



5行ある問題文はどれも『□ ←← △』って形になっている。

で、□と△を見比べてみると、ある()()がある。それは……『□は△を()()にしたモノ』だ。


カニ缶()()の缶詰。

乾パン()ビスケットと砂糖()の缶詰。

コンビーフ()蒸し煮の牛肉()の缶詰。

サバ味噌缶()鯖と味噌()の缶詰。


つまり、『□ ←← △』を言い換えれば『□は△の缶詰』って事になる。



そう考えると、問題文5行目の『←← 鮪と油』ってのは『鮪と油を缶詰にした物』。という事で答えは『ツナ缶』だ。







それでは、次の問題だ。

ココからは数字を使った問題になるけど、考え方は同じ。

ポイントは『←←』がどういうルールなのかを見極める事だ。


(2)

aに入る物は何でしょうか?


6 ←← 3

-4 ←← -2

0 ←← 0

7 ←← 3.5

a ←← 5




分かったかな?

答えは『10』だ。


この問題では、『□ ←← △』は『△を2倍すると□』という意味だ。

□と△の代わりにyとxで『y ←← x』とすれば、『y = 2x』って表せるな。






それじゃあ、もう1問。

同じく『←←』の表す意味を考えよう。


(3)

aに入るのは何?


4 ←← 1

7 ←← 2

31 ←← 10

1 ←← 0

a ←← 6




分かったかな?

答えは『19』だ。


今回は少し難しかったかもしれないけど、(3)の『□ ←← △』の意味は『△の3倍に1を足すと□』って感じだ。

y()x()を使って表せば『y = 3x+1』って事になるのだ。






……さて。

それじゃあ、今までの問題が何を言いたかったかって言うとだ。


上の3問でやった『□ ←← △』の『←←』には、あるルールが有った。

そして『←←のルールが何か』と『△が何か』さえ分かれば、『□が何なのか』を求める事が出来る。


文字式で言えば、『y ←← x』っていう問題で『←←のルール』と『xが何か』の2つが分かれば『yが何か』ってのも求められる。

そして『y ←← x』を数式に書き換える事もでき、『y = 2x』とか『y = 3x+1』という風に表せちゃうのだ。



xに入る数字が何か分かれば、あるルールに従ってyに入る数字が何なのかを求める事が出来る。

そのルールを、yとxを使った数式で表せる。


こんな状態の時、『yはxの関数である』と言うのだ。




……どうでしょう。

関数については分かっただろうか?






Point②

『xは浮気禁止』


さて、Point①をザックリ纏めると『y = (xを使った式) という風に表せれば、yはxの関数である』って感じだ。


だけど、実は『関数』を名乗る際には注意点が有る。

この条件を破ったヤツは『関数』とはもう呼べない。関数から追放されてしまうので気をつけよう。



その条件がコレだ。

『1つのxの値に対しては、1つのyまでしか居られない』



例として、『y() ←← x()』っていう問題を思い出そう。

もし『yがxの関数』であるのなら、x()=2ならy()は5()()x()が4ならy()は7()()。……って言うように、必ず1つのxに対応するyは1つまでしか居られない。


もしも『x()=1の時にy()が-1と3と二つ存在します』みたいなヤツが居ると、それは条件違反だ。

そんなyとxには関数追放の刑が待っている。



xのお相手になるyは1人だけ。

xは浮気厳禁なのだ。



ちなみに、x=1でもx=3でもx=7でもy=2になる、みたいな事態は問題ない。

xのお相手が1人でさえあれば、どれだけxから人気のあるハーレムなyが居ても大丈夫だ。


あと、『x=0の相手になるyが居ない』というような、悲しい事態も時々起こる。

難しい数式を使うようになると、段々そういう独身なyも現れて来たりする。けど、そんなxとyも『浮気』ではないので関数追放にはならないぞ。

安心しよう。


飽くまで関数の敵は『浮気』なのだ。






……よし、『関数とは何か』については以上かな。


次のPoint③からは本題、『一次関数』についてだ!

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『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
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