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11-14. ライター

※12/19

謎の一文を修正。

「(ケースケからのプレゼント……)」


ネックレスをプレゼントした後、僕とアキ、アークの3人は再び歩き始めているんだが。

アークの機嫌が物凄く良いようだ。

歩きながら首に掛けたネックレスを揺らしてみたり。

赤い魔力結晶を眺めて何か呟いていたりしている。



「アークが喜んでくれて何よりだな」


あんなに気に入ってくれると、僕も嬉しいな。


「やるじゃねぇか計介。あんなにカッコ良い計介を見たの、いつ以来だっけな」

「舐めんな。アキの居ない所でも案外頑張ってんだぞ」

「済まねぇ済まねぇ、分かってるよ。じゃなきゃ血に塗れし狂科学者ブラッディ・マッドサイエンティストなんて渾名、貰えないもんな」

「まーた僕の事バカにして……」


まぁ良いけどさ。



「……まぁとりあえず、色んな店を見ていこうか」

「そうだな。計介のお目に敵う商品もまだ見つかってねぇし」

「おぅ」


って事で、魔道具探し再開だ!






「ココの店は……何の専門店なんだろ?」


テーブルに並ぶ商品を眺めていくと。

蛇口に、団扇に、ライターに……。


なんだか纏まりが無い。

魔道具の雑貨屋なのだろうか?



「多分、面白ぇモンを寄せ集めた()()()()()の店だな」

「成程な。アキがさっき言ってたやつか」

「そうだ。他の店じゃ扱わねぇような『変わったモン』がこういう店に集まってんだ」

「ほぅ。そんじゃちょっと見てみるか」

「そうね。ケースケの気に入る物もあるかもしれないし」


テーブルに近寄り、商品を見てみる。



「コレは……至って蛇口だな」


まず最初は、テーブルの一番左端に置かれた蛇口。

見た目は普通の()()だ。

水道の壁から蛇口の所だけ引っこ抜かれたような感じの商品。


……てか、コレに魔道具の要素を見出せない。



「なぁアキ。そもそもコレって魔道具なの?」

「だろ。もしコレが普通の蛇口だったら、多分ココはホームセンターだ」


確かに。



「わたし、使った事あるわ。根元を握ってハンドルをひねると水が出るの」

「「へぇ」」



アークが説明しているのを見てか、店のオバさんが僕達に蛇口の使い方を実演してくれた。


蛇口の根元、壁にくっ付いてる側をガッシリ掴んだ。

蛇口の口を床のバケツに向け、ハンドルを捻った。

水が出た。


「「「おぉぉ!」」」



水が出た瞬間、少し感動して僕達の声が漏れる。

まるで『手から水を出すマジック』みたいな感じだな。


すると、調子に乗ったのかオバさんは更にハンドルを回し始めた。

チョロチョロとしか出ていなかった水が、次第にドボドボと音を立ててバケツに溜まっていくようになる。


「「凄い(凄ぇな)!」」



予想の上を行く水量に、ついアキと一緒に叫んでしまった。

それを見たおばさんは、満足気な表情でハンドルを回し、水を止めて蛇口をテーブルに置いた。


そして、少し疲れた表情を見せてグッタリと椅子に座ってしまった。

……ん、どうしたんだろう?



「ほぅ。なかなか便利じゃねぇか。どんな構造なんだ?」

「根元を握った手から魔力を吸って、水に変換するって魔道具らしいわ。でも水を出せば出すほど魔力も吸われていくから、沢山水を出すと結構疲れるの」

「成程な。けどまぁ、水が必要な分だけ使えば問題無ぇよな」

「そうね」


あぁ、だからオバさんは少し疲れてたんだな。




にしても、コレがあれば歩き旅でも水に困らないな。

使い方も簡単だし、非常時にも使える。


「コレ良いな。値段もまぁ安いし、買おうかな」

「……わたし達は要らないと思うけど。ケースケ」


アークに反対されてしまった。



「ん? なんでだ?」

「コースに【水源Ⅵ】(ウォーター・ソース)を使って貰えば良いじゃない。これを使わなくても」

「…………あっ」



……そうだった。

うちには優秀な水系統魔法使いが居るんだった。

コースにお願いすれば、こんなモノは不要だ。


「確かに」

「計介、もしかしてお前……コースの事忘れてただろ?」

「あーあ、コースがかわいそうね」

「もしここにコースが居たら、絶対(ぜってぇ)怒ってたよな」

「…………いやいやいや、そんな訳無いじゃんかー。大事な大事な僕の学生を、まさか忘れるだなんて事は」

「…………ハァ、まぁ良いよ。計介は昔っからそんな奴だし」


……うまく誤魔化せたかな。






ま、まぁ、そんな訳で次の商品だ。


「次は団扇か」

「コレはー、【鑑定】っ…………ほぅ。『軽く扇げる団扇』らしいぞ」


アキがそう言う。



「計介、ソレの柄って金属製だろ?」

「おぅ」


細い円筒状の柄は銀色に光っている。

コレは……ミスリルかな? テントの骨組みと同じ感じの色だ。



「そこがミスリルで出来てて、そこを通して手から魔力を吸うんだってよ」


おっ、ミスリル当たった。



「で、吸った魔力で【風源Ⅲ】(ウィンド・ソース)を発動するらしい」


成程な。

魔法を使って風を起こす分、同じ力で扇いでも普通の団扇よりも風が出る。

だから『軽い力で扇げる』って訳か。


「じゃあ、原理は蛇口と一緒か」

「まぁそうだな」


へぇ、面白そうだ。


……けど少し高いな。

一応、コレも頭の中のリストに登録っと。






「そんじゃ次は……」

「コレだな」


アキがそう言って指差す、その先には。


「普通のライターだな」


日本でもよく見たライターだ。

コンビニとかでも売っていた、お馴染みのヤツ。

ケースは色付きの透明で、中身が透けて見える。


……のだが。



「なぁアキ、これオイルが入ってないぞ」

「えっ、そんな事は無ぇだろ。見せてみろよ」

「はいコレ」

「…………本当だ。中身カラッポなんて、まさか不良品じゃねぇか!?」

「いや、それが普通よ」


不良品発見と騒いでいる僕達に、アークが入ってくる。


「ん、そうなのか、アーク?」

「ええ。この中に入ってるのは魔力結晶で、手から吸った魔力をそこに貯めるの。スイッチを押すと、上の金具の所で魔力が【火源Ⅰ】(ファイア・ソース)に変換されて火が点くわ」

「「へぇー」」


成程な。

日本ではこういう形のオイル式のライターって、結構すぐ切れちゃうらしいからな。新しいのに買い替えなきゃいけないのも面倒臭そうだし。

けどコレなら買い替え不要だ。自分の魔力を流せばいつまでも使える。


そして安い。

よし。決めた。



「コレも便利そうだし、買おうか————






うっ…………


そう言った瞬間、背後からタダならぬ殺気を感じる。

無意識に背筋がピンと張る。


な、なんだ一体……ッ!?



「…………計介、学習しろ。ソレは何だ?」

「……ライターです」

「…………何のための物だ?」

「……()を点けるための————



あっ……。

またやってしまった……。

しかも今回は本人の目の前で。


殺気の発信源は、僕の後ろに立つアーク。

……怖すぎて振り返れない。



「そ、そうだそうだ。勿論僕には要らなかったな。なんたってうちには優秀な火系統魔術師さんが居るし」


棒立ちのまま、真正面を向いてそう言う。

……けど、もう2回目だ。

必死に誤魔化してみるけど、流石に効かないかな。



ガシッ

「うぉっ」


殺気は消えない。

それどころか、右肩を後ろから強く握られる。



その瞬間、殺気立ったアークの表情がふと蘇る。

護衛任務中、カーキウルフに腕を噛まれた時の事。

こちらに槍を向け、長い赤髪は乱れ、淡く赤に光る眼でこちらを睨んでいたアークの顔…………


ヤバいヤバいヤバい!

今ここでアークに殺される……!!



しばらく肩を掴まれたまま気をつけの姿勢でプルプル震える。

1秒が凄く長く感じる。



そのまま時間が経つこと数秒、後ろから声が掛けられた。


「…………まさか、わたしの事忘れてなんかないよね?」

「……お、おぅ。勿論だよ、アーク」

「そう。……【火系統魔法】の適性も低くて【火源Ⅴ】(ファイア・ソース)【火弾Ⅱ】(ファイア・バレット)くらいしか使えない火系統魔術師だけど、そう言ってくれると嬉しいわ」

「…………おぅ」






………………もう絶対、こんなミスしない。

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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