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11-8. 確率Ⅱ

※12/25

誤字修正

Point⑤

『確率の近道を見極めろ!』


さて、今までは確率を一つ一つ数えていた。

しかし実は、確率を求める時には場合によっちゃ近道が存在するのだ!

どの問題にも近道が有る訳じゃないけど、有るかどうかは『問題文』を見れば分かる。


という事で、『近道がある問題』の例を見ていこう。



さっきのスゴロクの例に戻る。

この先6マスのうち、『振り出し』が2マス、『3マス進む』が1マス。

この正念場でボーナスカードを利用し、無事コイントス成功。

って事で、今度は『サイコロを2個振った時に、1か5の目()()が出る確率』を求めよう。



っと、ここでポイントだ。

この問題分の中には『近道』を示すセリフが含まれている。

()()』だ。

『○○以外の』や、『○○にならない』といったセリフを見つけた時には、近道の存在を疑ってみよう。


その『近道をする』方法、それは『1-(○○になる確率)』という計算式だ!

この計算式を使えば、確率の問題を解くのが楽になるかもしれないぞ!



じゃあまずは、『近道をしない』、普通の解き方で行ってみよう。

さっき書いた表を見ると、起こる組合せは全部で36通り。

そのうち出た目が『5』以外のヤツを全部数えていくと、32通り。

という訳で、確率は32÷36で8/9(9分の8)だ。



次に、『近道をする』解き方。

さっきの計算式を使えば、『1か5が()()()確率』というのは『1-(1か5が()()確率)』になる。

そこで、『1か5が()()確率』はさっき求めた通り1/9(9分の1)だ。

という事で確率は1-1/9で計算でき、答えは8/9になる。

普通に解く時と同じ答えが求められたぞ。



まぁ、近道の方法はこんな感じだ。

こっちの方がスッキリした解き方だよね。


……遠回り? 逆に難しい? 普通に解いた方が楽?

そう思う人も居るだろう。

だけどまぁ、結構皆も知らず知らずのうちに『近道』を使っているんじゃないかな。

簡単な問題だと近道も普通もあまり変わらないけど、難しい問題こそ近道が威力を発揮するモンだ。是非タイミングを見極めてほしい。






Point⑥

『確率は0から1の間』


既に述べたが、確率は0から1までだ。

マイナスになったり、1より大きい数字にはならない。


例えばサイコロならば、『1回振って7の目が出る確率』は0だし、『2回振って出た目の和が20以下になる確率』は1。

どう頑張っても確率が0より小さくなったり、1より大きくなることはない。

もし計算して出た答えがこの域からはみ出ていたら、計算をし直そう。











…………フゥ。

説明についてはこんな感じだ。


説明が載っているページを捲ると、次の見開きにはコラムと練習問題だ。

さっさとコラムも読んで、練習問題を解いちゃおう。











Column

『確率の前提条件』


中学で『確率』の問題を解いている時に、ふと『もしサイコロが2~7の目をもつモノだったら……』とか、『コインが少し歪んでて表が出やすいヤツだったら……』とか、そんな事を思った事は無いだろうか。


だが、中学数学で『確率』の勉強をする時には、ある程度の『前提条件』という物が暗黙の了解で決まっている。

問題文が単に『サイコロ』と言っているなら、『立方体で、各面に刻まれた目は1~6で、どの目が出るのも偏りが無い』物だ。

単に『コイン』と言っているなら、『歪みは無く、表裏のどちらが出るのも偏りが無い』物。

勿論、サイコロの頂点や稜、コインの縁で立つ確率は0になっている。


『袋からボールを取り出す』って操作でも、色こそ違えど各ボールの表面、重さ、大きさ、材料などに違いは無い前提だ。勿論、袋にも細工は無い。

裏返しのカードから選ぶ操作でも、妙に擦れていたり欠けていたり、柄が違うといった差は無い前提にする。


……まぁ、そんなヘリクツなんて幾らでも挙げられるので、偏りや差を無くしてどの結果も同じ確率で起こるって事にしているのだ。

もしも『偏りが有る状態の物』を使う時には、必ず問題文で説明されるので大丈夫だ。特に断り書きが無いなら、偏りのない状態で計算しよう。



ちなみに、どの結果も同じ確率で起こるってのを伝えたい時には『同様に確からしい』とか、『無作為に』とも言う。

確率の単元に特有のちょっと難しい言い回しだけど、覚えておくと良いかもしれない。











……成程な。

暗黙の了解、ね。

言われてみれば普通だけど、知ってると便利かもしれないな。


……そんじゃあ、説明もコラムも全部読み終わった事だし。

練習問題、行きますか!



紙とペンを手繰り寄せ、練習問題に目を向ける。

練習問題は毎度お馴染み、A問題10問とB問題10問の合わせて20問。

さて、それじゃあ早速A問題の(1)からだな。






休暇1日目、18:52。



A問題は、(10)までのそれぞれの確率を求める問題。


(1)

『コインを2回投げ、2回とも表が出る確率』


コインだから、出る結果は表か裏の二択だ。

えーっと、この手の問題なら樹形図を書いて————



ピクッ

「おっ……!」


問題文をなぞる左手人差し指に、何か吸い寄せられる感覚。

これはキタな。新魔法の予兆だ!


さて、それじゃあ……



「魔力、注入ッ!」


前回も使ったキメ台詞と共に、指から魔力を流す。

カッコ悪い? 慣れだよ、慣れ。

二回目ともなれば恥ずかしさもあまり感じない。


そんな事を考えていると、待ってましたと言わんばかりに指から魔力が引き抜かれていくのを感じる。



「さてさて、どんな魔法かな……――――


……ん?

魔力の放出が止まらない。いつもなら一瞬なのに。

いつもより使う魔力、多くない?


軽く目眩を感じつつ、そんな事を思っていると。



「……おっ」

ピッ


指に流れる魔力が止まる感覚、それとどこからともなく鳴る軽い電子音。

そして、僕の目の前に現れるメッセージウィンドウ。


さて、お待ちかねの新魔法だ!






===========

アクティブスキル【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションを習得しました

===========



「おぉぉ……!」


これはまた面白そうな名前の新魔法だ。

確率を扱う魔法、か。

うん、名前からして数学っぽい魔法だ。【演算魔法】に相応しいね。



さて、お待ちかね・その2、新魔法の能力確認と行きますか。


【状態確認】(オープン・ステータス)……」

ピッ



いやー、しかし【求解】(ソルブ)に続いて2連続で新魔法ゲットか。

調子良いな。


ピッ

ピッ



そんな事を考えつつもステータスプレートを操作していき、【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションの説明ページを表示させる。

さあ、どんな魔法なのかなー。

どうせならやっぱり、チート級に強い魔法が良いよな……



===【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーション========

魔力を消費して、任意の事象が起こる確率を高速かつ()()()に計算できる。

計算の精度はスキルレベルによる。


【状態操作Ⅲ】ステータス・オペレーションとの併用による効果

任意の事象が起こる確率を変動させることが出来る。

但し、無作為性の低い場合等では確率の変動を著しく妨げられる事がある。

===========



……確率を変動、か……。

確率を変化させる、ってことか……。

なんだかいまいちピンと来ない。



けど、アレかな?

イカサマみたいな感じで、サイコロを何度振っても6しか出なく出来るとか、そう言う事かな?


んー、分かんない。

……よし、そんな時は試しだ!






生憎サイコロは持ち合わせていないので、リュックから銅貨を1枚取り出す。

右手をコイントスの形に構え、親指と人差し指に掛かるようにして銅貨を乗せる。


ピンッ!


親指を弾き、コインを真上に飛ばす。


コンッ!


コインが床に落ち、何度かバウンドする。

動きが止まり、出た面は。


「表だ」



2回目。

コインを拾い、同じようにしてコイントス。


「……裏」



これを繰り返す。

表、裏、表、表、裏、表、裏、表。


……いい歳こいた高校生が自室で一人コイントスを繰り返す画。

途轍もなくシュールだが、バカにしちゃいけない。

コレも大事な『数学者』としての実験なのだ!



「……同じくらいだな」


10回繰り返したところで、そう呟く。

表が何回で裏が何回かは数えてなかったけど、大体同じくらいだな。

銅貨も見た所歪みは無いし、まぁ普通だよな。






「さて、それじゃあ……」


よし、じゃあ次行ってみますか。

魔法の説明文がどんなモンか、見てみますか。


「必ずコインが表になりますように……【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションッ!」



新魔法を早速唱えてみる。

記念すべき初回に変動させてみる確率は『コイントスの結果』だ。『表が出る』ようにお願いしてみた。


ちなみに、唱えてみた文言がまるで七夕の短冊な件については気にしちゃいけない。

どういう風に言えばいいか分かんなかったし。

どうせなら『どの確率を』『どのくらい』変動させるって唱え方のテンプレでも有れば良いのに。



……そんな事を考えていたが、唱えてからは特に変化を感じない。身体に違和感も無い。

なんだろ? 魔法が失敗したかな?

やっぱり唱え方、七夕スタイルじゃダメだったかな……。



まぁいいや。

こういう時はちゃんと効果が掛かってるモンだ。

とりあえずコイントスをしてみよう。



1回目。


ピンッ!

コンッ


「……表だ」



コインを拾って2回目。


ピンッ!

コン


「……表だ」


2連続で表が出た。

でもまぁ、2レンチャンくらいならあるある。



3回目。


……表。



4回目。


……表。



5回目。


……表。



「……マジかい」


5連続で表だなんて、珍しい。

有り得ないって訳じゃないけど、滅多に見ないレベルだ。


これはきっと只のマグレか、【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションの効果が出てるって事だな!

後者であることを願おう。



ちなみに、コインを5回投げて全部表が出る確率と言えば……――――


あぁ、1/32(32分の1)か。

【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションが答えを頭の中に直接教えてくださるとは。

何とも親切な魔法だ。



……ま、まぁ、とりあえず続けてみよう。

もしかしたら裏が出るかもしれないし。


6回目。

……表。


7回目。

……表。


8回目。

……表。


9回目。

……表。


10回目。

……表。



……表、表、表、表、表、表、表、表、表、表。




20回やっても表ばっかりだ。

表しか出ない。

普通なら流石に有り得ない。異常事態だ。


コレは完全に『【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーション』の効果だな!

……にしても、凄い能力だ。本当に何度やっても表しか出ない。

チートレベルな魔法だ、コレは。



……まぁ、魔法の効果を無事確かめられたのは良かったんだけど、20連続で表とかいう有り得ない状況を目にした僕は少しビックリしている。

もうここまでくると逆に怖くなってきた。現実を受け止めるのを止め始めている。

コイントスしながら『裏よ出てくれッ!』って思ってしまう自分が居る。


20連続で表とか、これがもし魔法抜きで出来てたんならキョウキのサタだ。

この世界が狂ってるとしか思えない。


ちなみに『20回コインを投げて全部表になる確率』ってのは……【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションさん曰く、1/1048576だそうだ。

小数で表すと0.00000095367…くらいなんだって。


速くて正確な計算をありがとう、【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションさん。






……ってな訳で、今回の収穫。

・新魔法、【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションを手に入れた。

【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションは確率の計算をしてくれる。

・願いを込めて【確率演算Ⅰ】プロバビリティ・カルキュレーションを使えば、確率がおかしくなる。


・あと、表が連続で出続けると段々怖くなってくる。


そんな感じだな。



……にしても、確率をイジって僕が願った通りに出来るとは。

またしてもヤバい魔法が手に入っちゃったじゃんか。











ふと、『A問題 (1)』とだけ書かれた紙が目に入る。


「……忘れてた」



さて、お楽しみはこのくらいにして、練習問題を解いていきますか。

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
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感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
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届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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