11-7. 確率Ⅰ
さて、暇を持て余してる事だし、数学の勉強でもやろう。
リュックから勉強セットを取り出し、机の上に置く。
部屋の明かりをつけて椅子に座れば準備完了。
目次を開く。
「えーっと、この前は……」
あぁ、そうだ。『方程式』だ。
そのお陰で【求解】という便利魔法を手に入れたんだったな。
という事で、『方程式』の次はーっと。
「ゲッ、『確率』かい……」
出た出た、よく分からないヤツだ。
こういうのって苦手なんだよねー……。
「……まぁ、とりあえず」
気が乗らないけど、とりあえずコレも数学者の通る道だと思えばしょうがない。
よし、そんじゃやりますか!
●確率
確率とは、ある事象の起こる可能性を表す数値のことである。
……分かる人には分かると思うけど、サッパリの人にとっちゃ簡単すぎて逆に難しい文章だよね。
まず『確からしさ』ってなんだよ。日常で使った事が無い。
それに『事象』って何なんだ。そもそもなんて読むのかさえ分からない。コトゾウ?
そんな人のために『確率』を言い換えると、こんな感じだ。
『ランダムに幾つかの”結果”になる内、僕が起こって欲しいと思う”結果”になる割合』
なんで確率の単元で『割合』なんて言葉が出てくるか、不思議に思った人も居るんじゃないかな。
だけど今のように考えれば、確率ってのは『割合』の単元の進化版みたいなモノなのだ。
『確率』ってのは、全く新しいモンじゃない。
そう難しく考えなくて良いのだ。
もし確率が苦手だって人がいるなら、『単なる割合の進化版だ』とでも思って欲しいな。
……という事で、前置きはこのくらいにして。
この単元でも、確率についての説明がポイントで構成されている。
それじゃあ、順に見ていこう。
Point①
『確率とは何か・いつ使うのか』
まず確率を計算したり求めたりする前に、確率とはなんなのか、どんな時に確率を使うかってのを見ていこう。
……と言っても、ぶっちゃけ学校で『確率』の単元を学ぶ前から知っている人は沢山いると思う。
日本には日常に『確率』が沢山あったからな。
『こんなのもう知ってるよ!』って思う人もいるかもしれないけど、とりあえず説明していこう。
まぁ、ご存知の通り、人生は全てが上手くいくとは限らない。
思い通りに事が進む時もあれば、全く上手くいかない時もある。
例えば、天気。
例えば、賭け事。
例えば、スポーツでの対戦。
例えば、スマホゲームのガチャ。
『こうなって欲しい』、『これが出て欲しい』、そんな願い通りになったり、はたまた叶わなかったりするよね。
勿論、欲深い生き物である人間は自分の思い通りになって欲しいモンだ。
出来る事なら未来に行って、『雨が降るのかどうか』、『何に賭ければ勝てるか』、『何のキャラがゲット出来るか』ってのを知りたくもなる。
……けど、そんな事は無理だ。
少なくとも地球では。
だが、それを知りつつも欲深い生き物である人間はどうにかして未来を知りたいモンだ。
そこで使われるのが、『確率』。
自分の願う結果が起こりやすいのかどうか、それを測る数値だ。
割合と同じで0から1で表され、0が『全く起こらない』、1が『必ず起こる』という事を表す。
この確率を見て『傘を持つかどうか』を決めたり、『どれに賭けるか』を決めたり、『このキャラよ、出ろッ!』と願いを込めてガチャを回したりする。
日常で何気なく使ってるかもしれないけれど、確率ってのはそんな感じのものだ。
『未来がどうなるか分からないけど、こうなって欲しい』。そういう願いがある時に、確率を使うのだ。
……確率とは何か、いつ使うかっていう説明はこんな感じだ。
さて、次のポイントからは本格的に確率の計算方法、求め方について見ていこう。
Point②
『確率を求めるのには2つの”数字”が必要』
それでは『確率』の求め方についての説明だ。
確率とは、さっきも言った通り『幾つかの”結果”になる内、僕が起こって欲しいと思う”結果”になる割合』だ。
確率が0に近い方が起こりにくく、1に近い方が起こりやすい。
では、どうやって『確率』を求めていくか。
確率を求めていく上で必要になる材料は2つ、『起こりうる全部の結果が何通りか』と『自分の欲しい結果は何通りか』という2つの数字だ。
この2つの数字さえ分かれば、これを使って割合の計算と同じようにして『起こりうる全部の結果』数を分母に、『自分の欲しい結果』数を分子に置いて割り算すれば、確率が求められるぞ。
計算の仕方自体や、『2つの数字が必要』という事など、本当に割合と同じなのだ。
Point③
『確率の求め方』
それじゃあ、確率の勉強ではメジャーな『サイコロ』を使った例を用いて、実際に確率の求め方を見てみよう。
舞台は正月、家で親戚や家族とスゴロク中。
僕の駒から1マスと5マス先には『振り出しに戻る』が有り、6マス先には『3マス進む』が有る。
狙うは一番乗り、どんどん進んでいきたい。
勿論、振り出しに戻るなんてマッピラゴメンだ。
そして僕の前に回ってきた、サイコロ。
まずは、とにかく速く進んでゴールに行きたい。
という事で『サイコロを一回振った時に6が出る確率』を求めてみよう。
『サイコロを振った時に出る目』は全部で1、2、3、4、5、6の六通り。
『出て欲しいと思う目』は6だけ。一通りだ。
なので、『サイコロを一回振った時に6が出る確率』は『1÷6』で計算でき、確率は1/6だ。
小数で表せば0.166…になり、確率としては0寄りで『あまり起こらない』って事が分かる。
一発で『3マス進む』まで行くのは厳しいかもな。
次に、振出しに戻るのはやっぱり避けたい。
という事で『サイコロを一回振った時に1か5の目が出る確率』を求めよう。
『サイコロを振った時に出る目』は全部で1、2、3、4、5、6の六通り。
これに対して『出て欲しいと思う目』は1と5の二通りだ。
なので『サイコロを一回振った時に1か5の目が出る確率』は『2÷6』、確率は1/3だ。
小数なら0.333…となる。
0.5よりは0寄りだから、どっちかと言えば起こりづらいって事になる。
確率の求め方はこんな感じだ。
これらを使って比較してみれば、この一振りで『振り出しに戻る』に行く確率は、『3マス進む』に行ける確率よりは起こりやすいって事が分かるぞ。
Point④
『難しい計算なら"樹形図"や"表"を使え!』
さて、これまではサイコロを一回振るときの確率を考えていた。
しかし、実際に確率を考えるならばサイコロを何度も振るかもしれない。
『表』『裏』の出る確率がそれぞれ1/2であるコイントスも、一回で決まるとは限らない。
そんな場合での確率を考えると、頭の中だけじゃ無理だよね。
途中でこんがらがって、数え間違いが出るかもしれない。
そんな時に確率の計算をアシストしてくれるのが、『樹形図』や『表』だ!
コレを使えば数え忘れや数え過ぎを減らすことが出来るぞ!
それでは、樹形図や表とはどんなものか?
スゴロクの例と共に見ていこう。
先程と同じく、僕の駒から1マスと5マス先には『振り出しに戻る』が有り、6マス先には『3マス進む』が有る。
『振り出しに戻る』だけは避けたい、正念場だ。
そこでなんと! 僕の手の中に有るのは『ボーナスカード』。
このカードを使うと、コイントスが3回出来る。そのうち2回以上表が出れば、このターン『サイコロを2個振って出た目の和』だけ進めるのだ!
……3回のうち2回を表か。難しそうだけど、これは使うしかない。
ボーナスを手にして危機を脱するのだ!
という事で、『コイントスを3回行ったうち、2回以上表が出る確率』を求めよう。
……けど、これを頭の中だけで考えるのは難しいよね。
そこで使うのが『樹形図』だ!
一回目の結果を書き、そこから二回目の結果を分岐させて書き、それらから三回目の結果も分岐させて書くって方法だ。
今回は『表か裏』の二択なので、二股にどんどん増えていく。
今回の問題で樹形図を書くと、こんな感じだ。
表 ○
表<
/ 裏 ○
表
\ 表 ○
裏<
裏 ×
表 ○
表<
/ 裏 ×
裏
\ 表 ×
裏<
裏 ×
○が『表が2回以上』、つまりボーナス成功。
×が『表が2回未満』、つまりボーナス失敗だ。
コレを見れば、○×が付いているのでカウントは楽チン。
コイントス3回で起こる組合せは全部で8通り。
そのうち、表が2回以上出る組合せは4通り。
つまり、確率は4÷8で1/2だ!
なんだよ、意外と確率高いじゃんか。
これ、イケるんじゃね?
……ってな訳で、なんとかコイントスは2回表が出てボーナス成功!
2個のサイコロを振り、出た目の和だけ進めるようになったぞ!
目指すは『振り出し』回避だ。やってやる!
それじゃあココで、『サイコロを2個振り、和が1か5になる確率』を求める。
ここでも『樹形図』を書いても良いんだけど、この場合だと『六股』にどんどん増えていっちゃうので、逆に見にくい。
そんな時に使うのが『表』だ!
表を書いて、和が1か5になるのが何通りか調べよう。
┃ 二個目
和 ┃
┃123456
━━━╋━━━━━━━
1┃②③④❺⑥⑦
2┃③④❺⑥⑦⑧
一 3┃④❺⑥⑦⑧⑨
個 4┃❺⑥⑦⑧⑨⑩
目 5┃⑥⑦⑧⑨⑩⑪
6┃⑦⑧⑨⑩⑪⑫
┃
こんな感じだ。
サイコロを2個振った時に起こる組合せは表の通り、全部で36通り。
そのうち、1か5になるのは4通り。サイコロを2個振るので、和が1になる事は無いな。
という事で、和が1か5になる確率は4÷36で1/9だ。
小数に表せば0.111…になるから、ボーナスを使わなかったときの『振り出しに戻る確率』に比べればだいぶ危険は減ったな。
よし、これで正念場を回避して、一気にゴールへ……!
ってな訳で、樹形図や表はこんな感じだ。
どうだろうか。分かったかな?
問題によってどっちが便利か、使い分けていこう。




