表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/548

11-6. 眠気

アークとオバちゃんの挨拶も済み、オバちゃんは再び受付に座る。


鍵も貰ったし、話も一段落した。

さて、そろそろ部屋に向かお――――



狂科学者マッドサイエンティストさん!」


オバちゃんが僕を呼び止める。

しかも滅茶苦茶笑顔だから。


……え、なんだろ?



「何でしょう」

「アンタ、良い子と出会ったね! 見た所、アークちゃんは同じくらいの歳なようだし、上品だし、しっかりしてそうだし」

「そうですね」


確かにアークは領主の家に生まれただけあって品がある。しっかりもしてる。

年齢はまだ知らないけど、見たところ高2か高3。

僕と同い年くらいのはずだ。


ちなみに僕の視界の隅では、ベタ褒めされたアークが顔を手で覆って照れている。



「……でアンタは、アークちゃんの事、好きなのかい?」

「えっ」



……でたでた、直ぐにそういう事言い出す人。

突然何を言い出すのかと思いきや。


適当にはぐらかしておこう。



「……ま、まぁ……仲間は皆大事ですから」

「そうかい……」


明らかに沈んだ声でそう答えるオバちゃん。

なんだよ。何を求めてたんだよ。

露骨に『つまんね』みたいな表情しないでくれ。


それとアークは未だに顔を手で覆っている。

顔や耳まで真っ赤にしちゃって、いつまで照れてんだろう。



まぁいいや。それは置いといて。


「よし、それじゃあ部屋に行くか。シン、コース、ダン、アーク」

「はいよ。ゆっくりしておいで」

「「「はい」」」


そうオバちゃんに返事して、僕達は2階への階段を上がっていった。






2階の廊下に上がった所で、部屋の鍵を渡していく。

201(角部屋)から順に僕、シン、ダン、コース、アークだ。


鍵を渡す時に皆の顔を見ていると、なんだか眠そうだ。

でもまぁ、そりゃそうだよね。4日間の護衛依頼も無事終わった事だし、レストランでもお腹いっぱい食べたようだし、そりゃ眠いよな。

さっさと部屋に入ろうか。



「それじゃあ、明日の朝は王城前の噴水広場に8時だから……ロビーに7時40分で。それまで皆、護衛依頼の疲れを取るなりのんびりしてくれ」

「「「「はい」」」」


そう僕が言い終わると、各自部屋へと向かう。

やっぱり皆疲れてるからか、特に話すこともなくソソクサと部屋に入っていく。



「……そんじゃ、僕も」


4つのドアがバタバタと閉じていくのを見届けてから、僕も部屋に入った。






「……フゥー、懐かしい」


中に入ると、そこはビジネスホテルよりも少し狭めな部屋。

机と椅子があり、壁には時計がかかっており、ユニットバスがあり、通りに面した窓があり、そしてフカフカベッドがある。


最低限の設備しか無く、かつ手狭というシンプルな部屋だ。

ファクトの町でシーカントさんに泊めてもらった、あの豪華なホテルとは比較にもならない。


けど、それでも十分だ。

人情味あふれるオバちゃんがココには居る。



「……まるで自宅に帰って来たみたいだな」


そんな事を呟きながらリュックを下ろし、ボロボロになった白衣(ロングコート)を脱いで椅子に掛け、ベッドダイブ。



……あぁー、疲れた。

会長室に連れて行かれたり、突然アキと再会したりで忘れてたけど、そういえば今日、それもさっきまで護衛依頼やってたんだよな。

シーカントさんと荷物、無事に運搬出来て良かったな。


ついでに僕達も歩き旅をせずに済んだし、本当に良かった。

もし4人でテイラーから王都まで歩いて戻るって事にしてたら、きっとまだファクトにすら着いてないだろうな。


それどころか、アークとも出会えていないハズだ。

そして力尽きる寸前だったアークは、あのウルフ達に囲まれたまま————



「…………いや、やめとこう」


ヤメだヤメ。

嫌な事を考えるのは止めとこう。






休暇1日目、17:43。



「ハァー……、気持ちいい…………」


ベッドに仰向けになってそんな事を呟きつつ、ボーッとする。


4日間の護衛依頼をこなしたからか、いつもよりも心身ともに疲労感が凄い。

この4日間は基本的に馬車の荷台に座って居ただけとはいえ、常に気を張っていたからかな。

あと、馬車のガタガタも結構身体にくるんだよね。



それと、お腹はまぁまぁ満たされている。

アキと話をしながらも少しづつ料理を食べておいたからな。

この調子なら、とりあえず今日の夕食は要らないだろう。腹が減ったら焼鳥の缶詰でも開けて夜食だ!


夜食バンザイ!

若者なら多少の夜更かしや夜食くらい、どうって事無いのだ。


……多分。



こんな感じで疲労と満腹を同時に手にしている僕だが、今は不思議と睡魔(見えざる敵)には襲われていない。

眠気は無いのだ。目もいつも通り、シャキッと開いているのが分かる。



「なんでだろ」


自問自答してみる。

……うーん、きっと久し振りにアキに会ったからかな。

興奮してて眠れないとか?



……あっ、そうだそうだ。

こういう時こそ、アレだ。能力ってのは使ってこそ意味を為すからな。


「なんで眠くないんでしょうか? ……【求解】(ソルブ)!」

ピッ



おっ、早速答えが来た来た。

別に取り急ぎって訳じゃないんだけど、どうせなら答えをお教えください!



===【求解】(ソルブ)結果========

カフェイン


解:『記憶』

===========



答えは……カフェインか。

ん、でも僕コーヒーとか飲んでないし。

カフェインなんて、いつ摂った?



……なんて思っていたが、その疑問はメッセージウィンドウに添付された画像が教えてくれた。

画像は、さっきのレストランのメニューだ。

ドリンクのページが開いている。


僕の飲んだ飲み物はーっと……

あ、あったあった。コレだ。


『ガラナ……強炭酸とカフェインで眠気覚ましに! 銅貨20枚』



「……だからか」


成程ね。

さっき僕が飲んでたあの炭酸(ガラナ)が原因だったのか。

アレ、結構おいしかったんだよな。ついついオカワリしちゃった。


……という事は、しばらく眠気は来なさそうだな。



オッケー。ありがとう、【求解】(ソルブ)

特に困ってはなかったけど、助かったよ。






さて。

寝る気にもならないし、何か食べる気もしない。

現在時刻はまだ18時にもなっていない。


やる事がない。



……つまり、暇だ。

暇な時にやる事と言えば……



そう、『数学の勉強』だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

 
 
Twitterやってます。
更新情報のツイートや匿名での質問投稿・ご感想など、宜しければこちらもどうぞ。
[Twitter] @hoi_math

 
本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ