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11-3. 休暇Ⅲ

さてさて。数学が死ぬほど苦手だった僕が【演算魔法】を使いこなしているのを知ったら、アキなら絶対驚くよな。

そのシーンを想像するだけで笑えちゃうよ。



「フフフッ……」


……やべっ、想像したら本当に笑いが漏れちゃった。



「「「「「…………」」」」」


突然笑い出した僕を見た5人は、バリバリ引いていた。

料理を食べていた手も止まっている。



「……先生が突然笑い始めたぞ」

「…………ど、どうした計介。気味悪ぃな」

「いや……今のは忘れてくれ、アキ」

「無理だから。今の笑い方、絶対(ぜってぇ)何か企んでただろ? 危ねぇ魔法とか」

「大丈夫大丈夫、【演算魔法】はそんな危ないモンじゃないし」


-1倍プラスマイナス・インバージョン以外はね。



「……本当か?」

「勿論」

「……分かったよ————

「あー、でも先生の呪いの魔法だけはアブないから気をつけてねー!」


あっ、こらコース! 無駄な事言うな!



「ほら見ろ計介! 呪いの魔法とか、お前やっぱり危ねぇ魔法持ってんじゃねぇかよ!」

「……うん、やっぱり持ってた」

「お前の血に塗れし狂科学者ブラッディ・マッドサイエンティストって二つ名も、まさかそっから付けられたんじゃねぇだろうな————あむっ」


アキの口にポテトフライを6本差し込んであげた。



「……………………これ美味ぇな」

「だよね」






……って事で、仕切り直してっと。


「えーと、アキが僕の【演算魔法】について知りたいって言った所だったんだよね」

「おぅ。落ち零れ面倒臭がり野郎の計介がどうやってココまで成り上がって来たのか、知りてぇな」


……ボロクソ言ってくれんな、アキ。

否定はしないけど。



「先生の魔法、スッゴイんだよー!」

「ケースケの魔法の強さなら、わたしも保証するわ」

「コースとアークがそこまで言うってんなら、期待しねぇ訳にゃいかねぇな」


……あんまりハードル上げないで、君達。



「……ま、まぁ。聞いて驚くなよ」

「所詮計介だからな。余程じゃなけりゃ驚かねぇよ」


クソッ。

数学者舐めんなよ。



「言ったな。……【演算魔法】最大の効果は、ステータス強化、『4()()』だ」

「へぇ、ステータス強化の…………4倍!? 嘘だろ!?」

「驚くなよって言ったじゃんか」

「流石に驚くわ!」






「え、マジで4倍なのか?」

「おぅ」

「1.4倍と間違っちゃいねぇよな? まぁ、それでもプロの強化魔術師並みなんだけどよぉ……」

「おぅ」


何度言っても、全然アキが信じてくれない。

驚かないって言ったのに。



「アキ、嘘だと思うんなら皆に聞いてみなよ」

「おぅ。シン、コース、ダ————

「4倍だな」

「4倍だよー!」

「4倍です」

「4倍よ」


アキが聞く前から答える4人。



「……マジか」

「それでもアキが『信じない』って言うんなら、後で実演して————

「分かった分かった、計介。信じるよ」


あー、やっと信じてくれたよ。

結構疲れるな。



でもアキの反応が中々面白いので、更に追い打ちを掛けてみるか。


「まぁ、『4倍』ってのは僕の()()()()()()だから、スキルレベルが上がればもっと倍率掛かるかもね」

「………………ハァ? まだ上がんの?」

「おぅ。予想通り行けば、スキルレベル(じゅう)で11倍」



「……………………………………この壊れスキルが」



そう言ったっきり、アキは黙って硬直してしまった。

どうやらアキの頭は完全にパンクしてしまった。











「アキ、頭の整理はついた?」

「……おぅ。なんとか現実を受け止める事は出来た」

「良かった良かった」

「…………けどよぉ、わざわざ俺の口ん中にポテトをブチ込む必要無ぇんじゃねぇのか?」


まぁまぁ良いじゃんか。

ポテトフライ美味しいんだし。



「まぁ、【演算魔法】で出来る事を纏めると……『足し算』とか『掛け算』とかの力を使って色々出来るって感じかな」

「『色々出来る』って……纏まってねぇぞ」

「じゃあ、出来る事その1。……『足し引き掛け割り』を使って、ステータスを色々いじれる」

「成程な。つまり、さっきの『4倍』ってのは『掛け算』の力を使ったっつぅ訳だな」


さすがアキだ。

成績も優秀なだけあって、理解が早い。


「そうそう。『足し算』なら+30まで出来るし、『引き算』は-10、『割り算』なら÷2まで出来るぞ」

「バフもデバフも自由自在っつぅことか……」

「そっすね」






「て事で、出来る事その2。『解析』の力を使って、【鑑定】もどきな魔法が使える。しかも【鑑定】の上位互換」

「その魔法寄越せ、計介」


えっ、突然どうした。

アキさん、またまたそんなご冗談をー。


「いやいや、そんな簡単にはあげられな————



ふとアキの顔を見る。


「……寄越せよ、計介」



獣のような眼をしたアキが僕を睨んでいた。

…………え?



「……マジで言ってんの、アキ?」

「冗談冗談」


アキはそう言うと、いつも通りの目に戻った。

だよね。良かった良かっ————



「半分冗談な」

「……えっ」


半分マジなんかい。



「俺達商人にとっちゃ、【鑑定】は不可欠の道具みてぇなもんらしい。その上位互換なんか言われちゃ、商人なら意地でも欲しがるだろ」

「……まぁ、確かに」

「ってな訳だから、計介。他人のスキルを貰ったり盗ったり出来るって話は聞いた事無ぇけど、もし俺に【解析】(アナライズ)をくれるってんなら大歓迎だ」

「…………考えとく」


適当にはぐらかしといた。






「出来る事その3。『方程式』の力を使って、分からないって思った事を【演算魔法】が教えてくれる」

「何だよそれ! まるでスマホの音声検索じゃねぇか!」


確かに。

言われてみればそれっぽい魔法だな。



「何でも検索してくれんのか?」

「いや。教えてくれるのは多分、僕が見聞きした事限定かな。僕も最近手に入れた魔法だから、余り使ってないけど」

「じゃあ、計介が知る由も無い質問には無視カマすかもっつぅ事だな」

「そうだな」






「あと、他には……


えーと、何があったっけー……。


「あっ、そうそう。忘れてた」

「自分のスキル忘れんじゃねぇよ」


……ごもっともです。


「ま、まぁ、出来る事その4。『比例の直線(グラフ)』の力を使って、水や光を直線状に飛ばすことが出来る。水鉄砲(ウォーター・ガン)とか、光線指示(レーザー・ポイント)みたいな感じだな」

「へぇ、変わった魔法じゃねぇか」

「まぁ、あんまり使い所が無いけど」

「……いや、そんな事言うなよ! そういう魔法こそ、ココゾって時に役立つんじゃねぇか!」


……確かに。

言われてみれば、【直線比例Ⅰ】リニアリー・プロポーションは尖兵戦で物凄く役になったからな。






「そんじゃあ、最後に」

「やっと最後か」


最後の魔法といえば、今尚お楽しみにとってある『アレ』だ。


「いずれ出来るようになる事。分身」

「ぶ、分身ッ!? 漫画の世界でしか見た事が無かった、アレか?」

「おぅ。『図形の合同』の力を使って分身が作れるようになるらしい。まぁ残念ながら、MPの上限不足でまだ使えないんだけどね」

「そんな事まで出来るようになっちまうんだな……」


驚くのも疲れたと言わんばかりのアキ。

もはや呆れ始めてしまったようだ。






「まぁ、【演算魔法】で出来る事は以上かな」

「……そうか。随分と多芸じゃねぇか」

「本当だよね。もう今じゃ『数学者』でも結構悪くないなって思ってる」

「ハッ。数学者を授かったせいで味覚もおかしくなってた奴がよく言うぜ」


……あー、あったね。そんな時も。


「でもまぁ、良いんじゃねぇのか。とりあえず計介が元気にやってるって事が分かったし、仲間にも恵まれてるようだし」

「おぅ」

「計介が『分身』する所、早く見てみてぇな。期待してるぜ」

「おぅ。待ってろ」

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[Twitter] @hoi_math

 
本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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