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10-16. 求解

※12/4

【演算魔法】内、抜けていた【直線比例Ⅰ】ライナリー・プロポーションを追加

それじゃあ、『方程式』の練習問題だ!

今回も同じくA問題10問、B問題10問の20問構成。


紙とペンを近くに手繰り寄せ、まずはA問題の(1)からだ。






A問題

以下の方程式を解け。

(1) 3x+7 =22


よし、これは……

まずは『数字を右に』だな。『+7』を右に移項してあげれば良いな。


+7を左手の人差し指で触れる――――



「おぉっ」


この感覚……

まるで磁石に吸い付くような、指から魔力を吸い取られる感覚。


「オォォォーーー! ヨシッ!」


久し振りに来た!

思わず一人叫び、広い1人部屋に僕の声が響く。


この感覚が来たという事は、アレだ!

新魔法が手に入る前兆だ!



「魔力、注入ッ!」


興奮気味に適当なキメ台詞を叫び、指から魔力を流す。



……なんだよ今のキメ台詞は。

僕の口から出た一言であるとはいえ、流石に今のはちょっとナシだ。

1人部屋なので誰も聞いてないとはいえ、物凄く恥ずかしい。



「…………うわ、恥ずかしっ……」


思い付きで発した一言を思い出し、頭を抱えて机に伏せる。

そんな感じで一人身悶えていると――――



ピッ

「ん?」


軽い電子音が前から聞こえてきた。

ふと伏せていた顔を上げると。



===========

アクティブスキル【求解】(ソルブ)を習得しました

===========



目の前に、青透明で横長のメッセージウィンドウが浮かんでいた。


「ぉぉ…………おおぉ! 来たァァーッ!」


思わず、本日何度目かの絶叫。

久し振りの新魔法だ! 待ってたぜ!


もう恥ずかしさなんて一瞬でぶっ飛んじゃったよ。






さて、久し振りに【演算魔法】に新たな仲間が加わりました。

お名前は【求解】(ソルブ)です。


それでは、早速【求解】(ソルブ)の詳細を見てみよう!


【状態確認】(オープン・ステータス)!」

ピッ



少しおかしなテンションに侵されつつ、ステータスプレートをスマホの如く操作する。



===Status========

数原計介 17歳 男 Lv.5

(ジョブ):数学者 状態:興奮

HP  49/49

MP  43/45

ATK 4

DEF 14

INT 19

MND 18

===SKILL========

【自動通訳】【MP回復強化Ⅰ】

【演算魔法】

===========



「えーと……【演算魔法】の……」

ピッ



===【演算魔法】========

【加法術Ⅲ】(アディション)   【減法術Ⅰ】(サブトラクション)

【乗法術Ⅲ】(マルチプリケーション)   【除法術Ⅰ】(ディビジョン)

【合同Ⅰ】(コングルーエンス)    【直線比例Ⅰ】ライナリー・プロポーション

【解析】(アナライズ)     【求解】(ソルブ)

【状態操作Ⅲ】ステータス・オペレーション

===========



おっ、【求解】(ソルブ)がちゃんと入ってる。よしよし。

一番下の行に追加されてたから、一瞬無いかと思ってビビったけどな。


【求解】(ソルブ)をーっと……」

ピッ



===【求解】(ソルブ)========

魔力を消費して高速かつ正確に解を求められる。

解を求める際には、それを解くための知識が必要。

===========



……えぇ、説明これだけ!? 短いな。

まぁ、この短い文章から分かる事といえば……つまり、魔力を消費して方程式を解けるって事かな。

【加法術Ⅲ】(アディション)の効果は『魔力を消費して足し算をしてくれる』だ。

【乗法術Ⅲ】(マルチプリケーション)なら『魔力を消費して掛け算をしてくれる』だな。

ってことは、多分【求解】(ソルブ)もこれらと同じ感じで『魔力を消費して方程式を解いてくれる』って感じなんだろう。


で、『知識』ってのは何のことだろう?

いまいちピンと来ないんだけど…………多分、【加法術Ⅲ】(アディション)【減法術Ⅰ】(サブトラクション)【除法術Ⅰ】(ディビジョン)の事かな。

『移項』には足し算や引き算、『係数外し』には割り算や掛け算が必要だからな。

つまり、知識不足のために僕が自力で解けない問題は【求解】(ソルブ)でも解けないって事か。






……よし、それじゃあ練習問題に戻ろう。



A問題

以下の方程式を解け。

(1) 3x+7 =22


じゃあ、この問題に早速【求解】(ソルブ)を使ってみちゃいますか!


……あー、ドキドキする。

一体どういう感じの魔法なんだろうか。

もしかして物凄いチート級の魔法だったりして……!?

……いや、でも逆に残念スキルだったら辛いなー……。



そんな期待と不安を同時に抱えながら、(1)の方程式を見つめて魔法名を唱えた。


【求解】(ソルブ)ッ!」

ピッ


その瞬間、僕の目の前に現れるメッセージウィンドウ。



「おぉっ」


いつもの横長なヤツとは異なり、数行にわたって何か書いてある。

なんだろう?



===【求解】(ソルブ)結果========

x = 5


解: 3x+7 =22

    3x = 22-7

      = 15

     x = 5

========






……おいおい。


「マジで?!」


解いてくれちゃったよ!

【求解】(ソルブ)が方程式を解いてくれちゃったよ!

しかも解だけじゃなくて、わざわざ解き方まで一行一行載せてくれるという親切仕様。



なんだよ。

【演算魔法】、やるじゃんか。

僕がわざわざ『方程式の解き方』を覚える必要なかったんじゃないの?


「……まぁ、流石にそれはダメか」


【求解】(ソルブ)の説明文曰く、『【求解】(ソルブ)は僕の知識を使って問題を解く』のだ。

もし僕が方程式の解き方を知らなければ、【求解】(ソルブ)も解けないんだろう。

きっと。







「……フゥ」


【求解】(ソルブ)の有能さにかなり興奮していたが、やっと落ち着いてきた。

さて、それじゃあ練習問題に戻りますか。



A問題の(2)。

1-x = -5x+9


よっしゃ、もう一回【求解】(ソルブ)を使ってみますか!

まるで新しいおもちゃを貰った時のようなウキウキ感と共に、(2)の問題を紙に書き写す。


「よし、【求解】(ソルブ)!」

ピッ



===【求解】(ソルブ)結果========

x = 2


解: 1-x = -5x+9

  -x+5x = 9-1

    4x = 8

    x = 2

========



「うおぉぉー! 解けた!」


いや、別に僕が解いた訳じゃないんだけどさ。

凄い魔法だな、コレ!


改めて【求解】(ソルブ)に感動しつつ、紙に問題の結果を書いていく。

えーっと……2行目で移項か。これで左に文字、右に数字が出来たと。

で、3行目で計算、4行目でxの係数を外して解き終わりだな。



よし、続いてA問題の(3)だ。

これも【求解】(ソルブ)を使って……











「フゥーーッ、終わったー!」


無事、B問題の(10)まで解き終わった。

いやー、【求解】(ソルブ)様々だな。


説明を読んだだけじゃ『方程式の解き方』がまだアヤフヤだった。

けど【求解】(ソルブ)が『解き方』を見せてくれたお陰で、『どんな流れで方程式を解けばいいか』が分かってきたような気がするよ。



「さて、今日の勉強はこれぐらいにしてっと」


ペンを置き、[参考書]を閉じて立ち上がる。

歩いて向かう先は……もちろんベッドだ。

ベッドダイブだ。



ボフッ

「ハアアァァァァァーッ」


羽毛布団のフカフカを全身で感じる。

あー、やっぱり一仕事した後のフカフカベッドは最高だな。



勉強後のご褒美(ベッドダイブ)を十分に堪能した所で一度寝返り、仰向けになる。


「…………」


視界には、だだっ広い天井。

部屋が広ければ天井も広い。今までのホテルとは格が違う。



「……こんな広い部屋に…………なんでだろ」


日本でもこの世界でも、金欠生活を続けてきた僕にはこんな経験無かった。こんなに広い部屋に泊まれるなんて、とても嬉しい。

……それと同時に、僕達の宿代まで出してくれたシーカントさんに申し訳なさを感じる。

僕達は飽くまで()()()()だ。なのに、なんでココまで良い待遇を……?


再び、喜びと罪悪感に駆られる。



「でもまぁ、考えても分かんないし」


分からんものは分からん。さっさと諦めるに限るね。



……もし僕がこの宿を拠点なんかにしたら、きっと即破産だ。

一週間もせずに金が底を尽くだろうな。


「……ところでこの部屋、一泊幾らくらいなんだろう?」


ふと、思い付きで独り言を呟いてみる――――



ピッ



軽い電子音と共に、天井を見つめる僕の目の前に青透明の板が開いた。


「えっ!?」


な、何だ!?

突然目の前に現れたメッセージウィンドウを見る。

そこに写っていたのは、二行の文と一枚の画像だった。



===【求解】(ソルブ)結果========

銀貨30枚 / 1泊


解:『記憶』

===========



え、なんでなんで!?

数学の問題でもないのに【求解】(ソルブ)が動いちゃったんですけど。


とりあえず、疑問が残ったままメッセージウィンドウを読み進めていく。

『解』の欄には『記憶』と書かれており、その下には画像が貼られている。


「これは……カウンターの写真だな」


写真は、この宿の入口にあるロビーとカウンターの風景だ。

さっき僕達が入った時に見た景色だな。



「なんだろ」


この写真をよく見てみる。


ふと、カウンターの上に置かれた紙に目が留まる。

そこに書かれていたのは。



-----------

 宿泊費


1人部屋 銀貨30枚 / 1泊

~~~~~~~~~~~



「……コレじゃんか」


って事は、既に僕はこの部屋の料金を見ていたって事か。

…………まさか、さっきの『知識』ってコレの事!?




あぁ……。

もしかしたら、またヤバい魔法が手に入ってしまったのかもしれない。

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[Twitter] @hoi_math

 
本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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