10-14. 方程式Ⅰ
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(問4)の問題と解答の間違いを修正
度々ミスが続いてしまい、申し訳ありません。
また、それにも関わらず毎度ご指摘下さり、本当にありがとうございます。
「ファクトの町を確認。間も無く到着」
「おっ、そろそろ到着か」
「よいしょっ…………あ、見えてきたよ、ファクト!」
「ファクト川も見えますね!」
運搬2日目の午後2時過ぎ。
僕達を乗せたシーカントさんの馬車は、ファクトの町を一望できる丘の上にいた。
「結局、今日は魔物の襲撃も有りませんでしたね」
「そうね。わたし達の出番無かったわ」
そうそう。
昨日は2回もあった魔物の襲撃が、今日はゼロだったのだ。
「えー、でも戦いたかったよー……」
「俺もコースの気持ち、分からなくもないな」
おっと、バトルジャンキーがこんな所に。
運搬する商人からすれば、襲撃が無いのはこの上ない喜びなんだけどな。
そんな感じで、馬車はファクトの町に到着。
町の中央を抜ける大通りを、速度を落としてゆっくりと進む。
昼過ぎの通りは人や馬車が多く、通り沿いの店も活況を見せている。
「テイラーと王都の中間地点というだけあって、やっぱり賑わっていますね」
「そうだねー。やっぱり昨日のショボい村とは違うなー!」
……コース、そんな事言わないであげて。
リーゼの村の方々が可哀そうだ。
「本日の宿はディバイズ商会が御用達としている旅館とする」
「「「「「おぉ!」」」」」
商会御用達の旅館か。
……きっとお高い所なんだろうなー。
そんな宿に僕達を泊めてくれるなんて……シーカントさん、いやディバイズ商会はなんて太っ腹なんだ。
「本日は魔物の襲撃が無いと言えど、疲労は蓄積している筈。手前の商会が贔屓にしている宿でゆっくりと羽を伸ばされよ」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
そんな感じで、少しウキウキな気分の僕達を乗せた馬車はゆっくりと大通りを進んでいった。
「フゥー…………本当に、こんな所に泊まっちゃっていいんだろうか」
今僕は、ベッドに寝っ転がりながら天井を見てそう呟いている。
あの後、大通りを右に曲がって少し行ったところで馬車は止まった。
馬車が目の前で停まった建物は、見た目は普通のマンションっぽい感じだった。
直方体の形をした建物に、窓が等間隔で並んでいる。
入口にもシャンデリアなんて物は無く、ただ受付カウンターが有るだけのマンションのエントランスだ。
……シーカントさんが『御用達』と言ってたので、頭の中では格式高い和風旅館かシャンデリア浮かぶ豪華なホテルを想像していたので、全く落胆していないって言ったらウソだ。
だが、ポイントは建物に入ってからだった。
シーカントさんは個室を6部屋取ってくれて、それぞれが自分の部屋に入っていく。
僕もシーカントさんから鍵を受け取り、部屋のドアを開けると――――
『うわっ、ヤバ!』
色々とヤバかった。
まず第一に、とにかく部屋が広い。
日本でよくあるビジネスホテルの個室、それを2部屋くっ付けたくらいの広さだ。
ベッドも2人で寝れるくらいの幅だ。勿論、羽毛のフカフカベッドだ!
部屋の中にある扉を開けると、そこにはユニットバス。
……なのだが、浴槽がデカい。
見ただけで分かる。膝を曲げなきゃ入れなかった、数原家の風呂よりデカい。
このサイズなら浴槽の中で膝を伸ばせるぞ!
絶対、後で風呂に入ろう。
……とまぁ、そんな感じで部屋探索は終わり、ベッドに仰向けになり。
「フゥー…………本当に、こんな所に泊まっちゃっていいんだろうか」
豪華すぎる個室に喜びと若干の罪悪感を覚えつつ、今に至る僕であった。
「さて……何しようかな」
改めて、今日も暇だ。
現在時刻はまだ2時半前。陽も高い。
今日は戦闘が無かったので、体力は有り余っている。
そんな感じなのでダンとコースはファクト周辺で狩りの真っ最中だ。念願の狩りができて良かったね。
シンは部屋でのんびりすると言ってたな。今頃デカい風呂を堪能してるんだろう。
アークは『何か食べてくるわ』って言ってホテルを出て行った。
そして僕は悩み中だ。
うーん、何しよう。
……もうアレで良っか。
今日もやるか、勉強。
特にやることも無いし、眠くもないんだし。
よし、そうと決まれば早い。
リュックから勉強セットを取り出して椅子に座り、準備完了。
目次を開く。
えーっと、昨日は……アレだ。『文字式』だったな。
そんじゃ、今回は『方程式』か。
よし、そんじゃあやって行きますか!
●方程式
方程式とは、未知数を含んだ等式の事である。未知数の解を求めるために用いる。
……いやいやいや。
未知数? 等式? 解? なんじゃそりゃ。
そんな説明じゃサッパリ分からんよ。
まぁ、そりゃそうだよな。
参考書もそれは分かっているようで、この項も5つのポイントに分けて説明してある。
よし、それじゃあ『方程式』の何たるか、見ていこう。
Point①
『方程式』とは
まず、『方程式とは何者であるか』についてだ。
……といっても、そう難しいものでは無い。これまでの[参考書]をお読みの人なら、実はもう既にご存知のハズなのだ。
という事で、今回『方程式』の中の1人、とある方程式さんにお越し頂いております。
それでは登場してもらいましょう、どうぞッ!
『120 × a = 480』
ジャーン!
只今ご登場頂いたこの方程式さんは、昨日の夜にリーゼでやった『ボールペンの話』で活躍してくれたヤツだ。『1本120円のボールペンを何本か買ったら、480円だった』っていう問題の式。
コイツは『方程式』を名乗る条件を満たしており、その一員であるのだ。
さて、それではコイツを例にして『方程式』とは何か、『方程式を名乗る2つの条件』を説明しよう。
まず、第一に『未知数が1つ以上入っている』事。
方程式には、必ず『分からない数』を文字として持っている。そこに入る数を調べるために方程式を使うのだ。
さっきの式で言えば、『何本買ったか』が知りたいモノ。そこで、数式には『a』という文字を使って『a本買った』って事にしている。
このaに入る数を調べる事こそが、『方程式』の存在する意味であるのだ。
第二に、『幾つかの数字を=で結んだ、等式である』事。
例えば『120×a = 480』、『b+5 = 35』、『c÷2+3 = 9』、こんな感じだ。これらは全て=で数式を結んだ『等式』である。
しかし逆に、今までの練習問題で良く見た『3×7』とか『2+4』、『56÷7』、『a-6』、こういう=の無い物は方程式ではなく『数式』だ。
つまり纏めると、2つの数式を=で結んだ等式であり、かつ未知数を1つ以上含んだ物が方程式である。
これらの条件をクリアした物だけが晴れて『方程式』の名を冠し、未知数を求めるために役立つことが出来るのだ!
Point②
『方程式と今までの問題の違い』
続いて、『今までによく解いていた問題』と『これから解く方程式の問題』の共通点と異なる点を説明しよう。
その前にまず、それぞれの問題例を挙げる。2つの問題で、ドコが違うのかを見比べて欲しい。
最初に今までに解いていた問題と、その模範解答の例からだ。
(問1)次の計算をせよ。
3+5×2-7
〈答〉 3+5×2-7
=3+10-7
=13-7
=6 答え.6
(問2)次の計算をせよ。
7×(2-5)+40÷8
〈答〉 7×(2-5)+40÷8
=7×(-3)+40÷8
=-21+40÷8
=-21+5
=-16 答え.-16
続いて、これから解く『方程式』の問題と、その模範解答の例も2つほど挙げる。
『方程式とはどんな物か』、『どうやって解くのか』を一度見てもらおう。
(問3)次の方程式を解け。
x+3 = 8
〈答〉 x+3 = 8
x+3-3 = 8-3
x = 5
答え.x=5
(問4)次の方程式を解け。
4x-7 = 17
〈答〉 4x-7 = 17
4x-7+7 = 17+7
4x = 24
4x /4 = 24 /4
x = 6
答え.x=6
さて、『今までの問題』と『方程式』の違い、分かっただろうか。
では、答え合わせだ。
その1、問題文。
今までのは『数式を計算する』のが目的。つまり、+-×÷を計算して、最終的にこれ以上計算できない所まで行けばクリアだ。
対して方程式は、『方程式を解く』のが目的。未知数に入る数が分かればクリアだ。
これは後々、最終的な答えで違いが出てくる。
その2、計算途中。=の使い方。
今までのはイコールを左端に置いて何行も繋いでいる。
それに対して方程式は、イコールは常に真ん中に置いて計算を続けているのだ。
その3、計算結果。
今までのは『6』とか『-16』とか、数が答えになっている。
対して方程式は、『x=5』『x=6』と『x = ○○』って感じだ。
これこそが『今まで』のと『方程式』との最大の違いだな。
2つの問題での違いはこんな感じだ。
問題文から解き方、最終的な結果まで同じようで違う。
『今まで』の問題で『方程式』みたいな解き方は出来ないし、逆に『方程式』の問題で『今まで』みたいな解き方も中々使えない。
なので、この方程式の単元では、今までの問題とは違う新しい解き方だっていう考えをもって『方程式の解き方』を覚えていって欲しい。
さて、以上で『方程式とは何か?』の説明は終わりだな。
次のPoint③からは実際に『方程式の解き方』をやっていくぞ!
※方程式を解き進める際には、『=』が縦に揃うようにして過程を書いて行くと見やすい解答になります。
拙作でも方程式の計算過程は出来る限り『=を縦に揃える』ようにしておりますが、閲覧ブラウザや文字フォントの差異等により式が左右ガタガタになることがあります。
見づらくなってしまった際には、どうかご容赦ください。




