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10-2. 護衛

※11/14

シーカントの一人称を修正

「行くぞ、シン、コース、ダン! 馬車を守るぞ!」

「「「はい!」」」


そう言い、僕達は同時に馬車から飛び降りた。

そのまま即座に散らばり、4人でぐるりと馬車を囲む。


馬車の右前にシン、左前にダン。

コースは左後ろ、僕は右後ろだ。


それぞれ剣、大盾、杖とナイフを構えると同時、草原から走って来たカーキウルフも散開して僕達を囲い込む。



「カーキウルフの狙いはMPポーションである故、手前と馬は心配無用。荷物のみ守られよ」

「「「「はい!」」」」


御者席からシーカントさんがそう教えてくれる。

成程、カーキウルフの狙いはMPポーションか。

まぁ、確かにコレって魔力の塊みたいなもんだもんな。



周りを囲むウルフを見る。


ウルフ達は僕達と馬車を丸く取り囲んだまま、グルグルと歩きながらコチラの動きを伺っている。

ギラギラと光らせた目で、僕達と馬車の上のMPポーションを睨む。

……なんだか、まるで椅子取りゲームだ。

椅子から見た景色ってこんな感じなんだねって思った。



……まぁそんな事は置いといて。

そんなふざけた事言ってられる場合じゃない。



敵の数はおよそ30。

その内、薄い緑色の体毛を持つリーダー格が3頭。


「ねぇ先生、なんかリーダーのヤツ多くないー?」

「あぁ、3頭居るな。どんだけ大きい群なんだ一体」

「否、此れは三つの群れが纏まった物。此れ程の群れ、MPポーションの運搬に於いては茶飯事」


へー。

今までの経験から『カーキウルフの群れ1つに、リーダー格は0か1頭』だと思ってたけど、そうでも無いんだね。






そんな事を考えながらウルフの動きを見ていると、リーダー格の中の1頭が脚を止める。


「襲撃の予兆!」


それを見たシーカントさんもそう叫ぶ。

改めて僕達も身構え、武器をギュッと握る。



そして。



ゥオオオオオォォォォォォン!


リーダー格が大きく遠吠え。

それと同時、周囲のウルフが一斉にコチラへと迫って来た。



「来ました!」

「いっくよー!」

「よっしゃ!」


3人も気合いを入れて応戦に出た。

よしっ、僕も行くか!


【乗法術Ⅲ】(マルチプリケーション)・ATK4、DEF4! 

 同様に(マルチプリケーション)INT4、DEF4! 同様に(マルチプリケーション)ATK4、DEF4! 同様に(マルチプリケーション)ATK4、DEF4!」


シン、コース、ダン、そして僕にバフを掛ける。


コレで準備は完了。

さあ、僕達を襲った事、後悔して貰おうか!






「ハァッ! 【強突Ⅰ】(ストロング・スラスト)!」

【水線Ⅳ】(ウォーター・レーザー)ーーッ!」

【硬叩Ⅳ】(ハード・バッシュ)! ゥオラァ! ダァッ!」

「ぃよっと、うわっ」



続々とウルフが馬車へと迫り来るが、3人が尽く撃ち落としていく。


100を超えるATKで振るわれる剣は、残像が見える勢いで振り抜かれて敵を両断する。

100を超えるINTで放たれる水のレーザーは、掠っただけでも大怪我。

100を超えるDEFで立ちはだかる大盾は、どんな体当たりを受けようとビクともしない。


しかし、3人とも力技で敵をねじ伏せているわけではない。

ただステータスの高さに戦いを任せているのではなく、動きも洗練されている。

動きに無駄が無くなってきている。


合宿の効果が出ていた。



文字通りカーキウルフ達は『指一本触れる』事すら出来ず、どんどんと数を減らしていた。



……ってか、数日前には万単位の敵を相手にして戦ったのだ。

カーキウルフ30頭くらい、どうって事ないんだろうな。



ちなみに、冒険者のナイフ(ATK +15)を携えて4倍した所でATKが76しか無い僕は、とりあえず避けては相手の首元を狙い、避けては相手の首元を狙い、の繰り返し。

自分でも危ういなって思うくらいの戦い方だった。


ヘタレ? それで結構。

僕はシン達学生とは違って非戦闘職なのだ。

馬車の上で司令塔でもやらせて欲しい所だね。











「……カーキウルフはもう居ないようですね」

「コッチも大丈夫だよー!」

「よし、終わったな!」


結局、3分も経たずしてカーキウルフは全滅。

そんな感じで馬車は守られた。


良かった良かった。

護衛依頼を受けて初の襲撃だったが、案外アッサリと終わってしまったな。



「容易く殲滅する事は予想の範疇なれど、此れ程までの早さとは……」


御者席からシーカントさんが声を掛けてくる。


「ステータスの面に於いて全く問題は無く、また技及び体の動きに於いても問題無し。此れ程の冒険者と出会うのは久方振り」

「だろ?」

「どうどう? 見直したー?」

「勿論。久し振りに良い旅となりそうな予感」


そう言われ、ちょっと照れるダンとコース。

僕も少し嬉しくなっちゃった。僕は褒めて伸びるタイプだからな。



あんな堅苦しいSPみたいな大男のシーカントさんだが、今は口元も少し上がり、口調もホンのちょっと柔らかかった。

多分彼も、心からそう思ってたんだろうな。



「ほら皆さん、急いでください! 馬車に乗りますよ!」

「えー、ちょっと待ってよシン!」

「今行くぜ!」

「おぅ」


いつの間にか馬車の上に戻っているシンが、僕達をそう言って急かす。

そんなシンの顔も、少し嬉しそうだった。











テイラーを出て初めての奇襲は何なく退け、馬車は再び街道をひた走っていた。


速達馬車だけあって、そのスピードは速い。

既に周囲に人の影は殆どなく、時々歩き旅でテイラーを目指す冒険者とすれ違うくらいだ。



「先程もお伝え致したが、荷物にMPポーションを積む際には、食料等の荷物に比べ魔物の襲撃が特に頻繁。群れの規模も巨大。それ故、MPポーションを運ぶ今回に於いて貴方々が護衛にお付き頂いた事、真に感謝」

「いやいや、これも私達の仕事ですから」

「僕達も、馬車に乗せてもらって助かってます」


荷台で風を受けつつ、そんな感じの話を交わす。



「いやぁ、久し振りに暴れたな!」


……いやお前、昨日狩りで散々暴れてたじゃんか。

ダンは一晩越したら『久し振り』になっちゃうのか?



「あんなたくさんのウルフに囲まれて楽しかったねー!」


色々と発言がおかしいよ、コース。

まるでカーキウルフ達と戯れていたかのような言いっぷりだ。

……コースにとっては蹂躙こそが楽しみなんだろうな、きっと。



「そうですね。良いストレス発散になりました」


……そうかい。シンは色々溜まってんのな。

こーんな感じの2人(コースとダン)をいつも纏めてるんだから、まぁ苦労人なんだろうな。



あと、シンはこのスピードの馬車でも普通に目を開けて乗れるようになっている。

まだちょっと怖がっている所はあるようだけど、このスピードにも慣れてきたようだ。


人間とは、慣れる生き物だからな。

良かった良かった。そのまま、馬車旅を楽しめるようになるといいね。

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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