9-8. 変身
さて、『負の数』の説明部分は終わった。
って事で、練習問題やって行きますか。
まずはA問題からだ。
A問題の(1)。
『4-9』。
コレは数直線を使えば簡単だな。
えーと………………よし。-5。
A問題の(2)。
『9-17』。
うぉっ、少しレベル上がったな。
えーと、17個左にだから…………-8だな。
A問題の(3)。
『0-7』。
ゼロから7引く?
…………まぁ、数直線使って解けば問題ない。-7だ。
A問題の(4)。
『6+(-3)』。
ハイ出た。
プラスのマイナスはマイナスだから、つまり『6-3』。
答えは3だな。
A問題の(5)。
『2-(-9)』。
おぉっ、出たよ。
マイナスのマイナスはプラスだから……イコール『2+9』だな。
よし、答えは11だ。
さて、A問題の(6)はっと…………
……フゥ、A問題終わったー。
ちょっと休憩したらB問題行きますか。
よし、そんじゃB問題の(1)。
『(-3)×2』。
うぉっ、出たプラマイの掛け算。
……えーっと、まず数字はサンニガロクで6。
で、プラマイの記号は『マイナスのプラスはマイナス』だから、マイナス。
だから答えは『-6』だな。
B問題の(2)。
『5×(-7)』。
コレも同じだな。
数字部分は35。『プラスのマイナスはマイナス』なので、マイナス。
よって答えは-35だ。
B問題の(3)。
『(-6)×(-7)』。
来た来た。ダブルマイナスだ。
数字部分はロクシチシジュウニで42。で、『マイナスのマイナスはプラス』なのでプラス。
だから答えは42 だな。
「よし。Bの(3)は42っと……」
ピッ
答えを紙に書いている時に響く、いつもの軽い電子音。
そして僕の目の前に現れる、横長のメッセージウィンドウ。
おぉっ!
これはもしや、新スキルか……?
===========
【乗法術Ⅱ】が【乗法術Ⅲ】にスキルレベルアップしました
===========
……そ、そっすか。
スキルレベルアップでしたか。
てっきり新スキルかなって思ったんだけど、それでも十分だ。
『Ⅲ』ならステータス加算が4倍まで出来るようになるし、結構嬉しいよ。
よっしゃ、そんじゃあ続きをやりますか。
B問題の(4)はー………………
…………B問題の(10)。
『0×(-9)』の答えは0っと。
負の数でも、0を掛けると0になるのな。
正の数と同じだ。
よし、全部終わったー!
フゥーッ。この問題、結構疲れるなー。
今までの計算は、ただ数字の足し引き掛け割りだけを考えていれば良かったんだけどな。
だが、『負の数』をやってから+と-の符号にまで気を遣わなくちゃいけない。
コレが結構疲れるんだよねー。
まぁ、そんな事は置いといて。
今回は新スキルをゲット出来なかったな。残念だ。
結局いつものあの感覚、指から魔力が吸われるような感じも無かった。
まぁ、仕方ないな。
だけど、練習問題の中に1問、面白いなって思ったモノがあった。
それがB問題の(9)、『7×(-1)』だ。
この答えは-7なんだが、何か面白くない?
7×(-1)なら、-7。
-7×(-1)なら、7。
-1を掛けると、7と-7が入れ替わる。
同じ大きさの数字で、プラスとマイナスを行き来するのだ。
なんか、-1を使って『変身ッ!』ってするみたいな感じ?
……なんでもないや。今のは忘れてください。
そんな訳の分からない事も置いといて。
ここで一つ、思い付いたことがある。
-1を掛ける事で、数字をそのままマイナスに変える事ができる。
ならば、先程スキルレベルアップした僕の【乗法術Ⅲ】を使えば、ステータスも一発でマイナスにしたり出来るのかな。
例えば、DEFが50ある敵が居たとする。
コイツに『【乗法術Ⅲ】・DEF(-1)』ってやってみたら……
……もしかして、DEFが-50とかになっちゃうのかな?
ってか、ステータスが負の数になった場合ってどうなるんだろう?
DEFがマイナスって、つまりDEFが0よりも下なんだよな。
『防御無しの状態』よりも防御が低い状態って、一体どういうこっちゃ。
想像がつかない。
だけど、ちょっと面白そうだ。
今度実験してみよう。
コンコンッ
「(先生、居らっしゃいますか?)」
おぉっと。
そんな企みを考えている時に来客。
この声はシンだ。
「おぅ。今行く」
「(はい)」
シンが僕の部屋に訪ねに来るとは。
何かあったのかな?
ガチャッ
「おぅ、シン。何かあったか?」
「コースとダンがさっき戻って来たようです。先程先生が2人を探していたようなので、知らせに来ました」
あぁ、さっきのアレね。
……暇過ぎて学生達の所に行ってみただけ、それだけだ。
特に用事は無かったんだけどね。
「そうか、ありがとう。まぁ別に2人を探してるって訳じゃ無かったんだけどね。特に用も無いし」
「そうでしたか。てっきり何か伝える事でもあるのかと」
「ゴメンな、わざわざありがとね」
「いえ」
伝える事かー。
やっぱり特に無いな。
……あぁ、でも今後の予定を立てるのは必要だな。
後で学生3人を集合させて、今後どうするかを考えよう。
「では、失礼しました————
「あぁ、シンちょっと待って」
「あ、はい。何でしょうか?」
「後で、明日からの予定を立てようと思う。そうだな……今午後の2時半だから、5時。5時に僕の部屋に全員集合で」
「分かりました。コースとダンにも伝えておきます」
「よろしくー」
「はい!」
ガチャッ
「フゥー……」
さて、午後5時から4人で集まる事にしたが、それまでは再び暇タイムだ。
何しようかなー。
……まぁ、ちょっと勉強で疲れたし、フカフカベッドで寝ますかね。
よし、そうしようそうしよう。
……ってな訳で、躊躇うことなくベッドに向かってダイブした。
————んせー……! せんせーい!」
「先生、起きてください!」
「先生、俺ら3人集まったぞ!」
目が覚めた。
目の前には、シン、コース、ダンの3人。
「お、おぅ。おはよう」
「あー、先生やっと起きたよー」
時計を見る。
午後5時7分。
あぁ、やべっ。
7分寝坊しちゃった。
「ノックしても返事が全く返って来ねえからな」
「鍵が開いていたので、入って来てしまいました」
うわっ。
扉の鍵も開けっぱにしてた。そういえば鍵かけ忘れてたな。
気をつけないと。
「なぁ。ところで、全員集合したけど何するんだ?」
「あぁ、そうだな」
よし、本題に入るか。
「皆を呼んだのは、この先の予定を決めるためだ。とりあえず合宿は終わった。で、やる事が無くなってしまった。行く所も無い」
同級生達には、戦士団なり連合なり配属先がある。
でも僕には配属先も無いし。
「そうですね……」
「どうしよっか」
「でもまあ、俺らは先生に着いて行くって決めたしな」
「そうだねー。先生が決めた所に私も行くよー!」
おぉ、なんて真面目な子たちなんだ。
「そうですね。私達も先生と共に行動し、強さを身につけて行きたいです!」
「おぅ、分かった」
「「「これからもよろしくお願いします!」」」
「勿論。こちらこそ、よろしくな!」
「「「はい!」」」
ってことで、僕達の絆がまた少し深まった。
「…………いや、絆が深まったのは良いけどさ。予定決めようか」




