9-7. 負の数
部屋の机に参考書を置く。
リュックから紙とペンを出して隣に並べる。
席に着く。
これで準備完了だ。
時刻はまだ12時半。時間はたっぷりある。
そんじゃ、始めよう。
参考書を開き、目次を眺める。
えーと、前回は『比例』だったな。
そういえば、『比例』を学んで手に入れた【直線比例Ⅰ】、アレには助けられたよなー。
【光源Ⅱ】との複合魔法『光線指示』で一発逆転できたのも、アレのお陰だ。
じゃなきゃ今頃、迷宮の奥底で屍と化していたかもしれない。
おっ、『比例』で小学算数セクションが終わりのようだ。
今日やる所から中学数学セクションに入るのな。
中学数学最初の項目は……『負の数』か。
よし、僕の数学者生活も小学校を卒業、中学入学だな。
頑張っていきますか!
●負の数
負の数とは、0よりも小さい数の事である。
はい。『負の数』の説明終わり。
……いや、本当にコレだけなんだよ。『負の数』自体ってのは一文で表せちゃうモンなんだよ。
僕も『え、短っ!?』と思ったけどさ。
さて、まぁそんな話は置いといて。
参考書に載っている説明の続きをを読んでいこう。
まず、突然ですが問題です。
3より1小さい数字は?
答えは2だ(【減法術Ⅰ】利用:3-1=2)。
ナゾナゾとかじゃないから、普通に答えてくれて結構だ。
深く考えてくれた方、ごめんなさいね。
では、2より1小さい数字は?
勿論、答えは1。2-1=1だ。
では、1より1小さい数字は?
答えは0だ。
ではでは、0より1小さい数字は何でしょう?
流石にこれくらいの問題なら僕でも正解できる。
だが、小学校に通っている子ども達なら「引けない!」「出来ない!」っと叫ぶのが正解だろう。
0枚あるクッキーから1枚食べる事なんて出来ないからな。
だがしかし!
中学生になると、そんな答えは通用しないのだ。
0より1小さい数字の答えは、『-1』だ。
そして、この『-』を付けた数字こそが、『負の数』なのだ!
0より小さい負の数を表す時には『-』を用いる。
引き算の『-』ってのと同じ記号だ。
0より1大きい数字は『1』。
対して、0より1小さい数字は『-1』。
0より3大きい数字は『3』。
対して、0より3小さい数字は『-3』。
0より100大きい数字は『100』。
対して、0より100小さい数字は『-100』。
0より0.5大きい数字は『0.5』。
対して、0より0.5小さい数字は『-0.5』。
0から順番に大きい数は、0、1、2、3、4、……。
対して0より小さい数は順番に0、-1、-2、-3、-4、……。
こんな感じで、0より小さい負の数は表すことが出来るのだ。
ちなみに、『1』『3』『100』『0.5』というように0より大きい数字は『正の数』と呼ぶ。
0は正の数でも負の数でもないよ。
……まぁ実際、スマホゲームやら携帯ゲーム機やらが当たり前になってきている現代日本では、色んなゲームで『負の数』を使うのが当たり前になってきている。
残機が減って『-1』という表示が出たり、お金を使って『-2000』という表示が出たりってのは最早当たり前の世界だ。
小学生の時点で既に負の数を理解しているって時代になっているのかな。
さて、『負の数』の存在についてはこんなモンだろう。
『そんなん知ってたよ!』というヤジを飛ばしていた人も多いかもしれない。
だが、今までのは序の口。
ここから先が中学数学の『正の数・負の数』での山場であり、一番重要なポイントだ。
では、『負の数』の本題、行ってみよう。
足し算や引き算は、『数直線』で考える事が出来る。
まずは今までの足し算・引き算を、これを用いて考えてみよう。
まず、数直線とは『目盛りの付いた直線』の事だ。定規みたいな感じのモノだな。
下の図が数直線だ。
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
中央の太線が『0』の場所を表していて、右に1マス進むと『1』の場所、左に進むと『-1』の場所となっている。
数直線の右端にある『矢印』と『プラス』は、『こっちに動くとプラスですよ』って意味だ。
それでは、実際に計算式を『数直線』で考えてみる。
まずは『3+2』だ。答えは勿論、5。
こんなの暗算で一瞬だけど、これを数直線で考えてみる。
手順は次の通りだ。
①自分が最初、『3の場所』に居るとします。
②そこから、『+』の方を向いて2歩進みます。
③動いた後の場所が答えです。
さて、手順通りにやってみよう。
①『僕』が●だとすると、僕は『3』に居る。
●
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
②僕が『3』から『+』の方、つまり右を見て2歩進む。
・・●
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
③動いた先の場所が答え。
●
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
動いた先は、丁度『5』の場所だ。
……おぉ、答え出た!
数直線、凄いな!
凄い発明じゃんか。便利だな。
さて、という訳で次は引き算でも数直線を使ってやってみよう。
問題は『6-5』。数直線を使って答えを出す。
方法はさっきと同じく、次の通りだ。
①自分が最初、『6の場所』に居るとします。
②そこから、『-』の方を向いて5歩進みます。
③動いた後の場所が答えです。
①まず、最初の位置は『6』だ。
●
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
②そっから、『-』の方、つまり左を見て5歩進む。
●・・・・・
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
③今いる位置、つまり『1』が答え。
●
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
よしよし、合ってる。
それでは、同じ方法で次の問題を解こう。
問題は『3-8』。
答えは負の数になるが、これも同じ要領で解けばオッケーだ。
①最初は3。
●
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
②『-』の方、つまり左を見て8歩進む。
●・・・・・・・・
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
③そこが答え。
●
┴┼┴┴┴┴╂┴┴┴┴┼┴→ +
-5 0 5
今いる位置は『-5』。だから、答えは『-5』だ。
よし、これでまず『答えが負の数になる計算』は大丈夫だな。
ここで、実は皆に伝えておかなければいけない事がある。
今まで僕達が『引き算』って言ってた奴らの中には、実はニセモノが紛れていた。
僕達が引き算だと思っていたモノは、本当は『足し算』なのかもしれないんだ!
どういう事かっていうと、例えば『8-5』っていう引き算の式について考える。
これは単なる引き算の式だ。答えは3。
だが、変装を見破ると、『8-5』の真の姿はこんな形なんだ!
『8+(-5)』
真の姿は『正の数と負の数の足し算』なんだよ。
『8と-5を足す』って意味だったのだ。
だが、難しく考えなくて良い。
『負の数』を足す時は、『+』の方を見て下がれば良いのだ。
さっきと同じ数直線での考え方で言えば、『8-5』は『8から-の方を見て5歩進む』だ。
対して『8+(-5)』は『8から+の方を見て5歩下がる』と考えれば良い。
どっちも結果は同じく、3になるよね。
なので、もしも必要であれば『8-5』を『8+(-5)』に変身させても良いし、『8+(-5)』が不便な時は『8-5』に戻してオッケーだ。
お好きな方で解いてね。
実は、もう一つここで伝えとかなきゃいけない事がある。
足し算の中にもニセモノが居るかもしれないんだ!
コイツは『引き算』と『負の数』を使って『足し算』に変装している!
どういう事か、説明しよう。
『3+5』という、今まで通りの普通の足し算。
コイツが、変装を解くと実はこんな姿だったのだ!
『3-(-5)』
……うわ、マイナスが2つも。
負の数を学んでいくと、こういった『負の数を引く』計算も出てくるのだ。
だが、心配しなくて大丈夫。
『負の数を引く』時は、数直線で言えば『-の方を見て下がれば』オッケーだ。
そうすれば数直線で計算が出来る。
『3-(-5)』で試してみれば、答えは8になるはずだ。
ところで、『後ろを向いて下がる』って行為、実は『前を向いて進む』って行為と同じだ。
つまり『負の数で引く』計算、『3-(-5)』は『3+5』と同じって事だ。
さっきと同じように、『3-(-5)』は『3+5』にしてオッケーだし、その逆も可だ。お好きな方でどうぞ。
それじゃあ、足し算・引き算についてのまとめだ。
①5+3=8
『正の数を足す』なら足し算。
②5-3=2
『正の数を引く』なら引き算。
③5+(-3) = 5-3 =2
『負の数を足す』なら引き算。
④5-(-3) = 5+3 =8
『負の数を引く』なら足し算。
『+と+』『-と-』なら『+』。
『+と-』『-と+』なら『-』って感じだな。
ちなみに、”正の数”を表す『+』と”負の数”を表す『-』は、2つ纏めて『符号』と呼ぶよ。
よし、これで正負の数の加減法は終わりだな。
そんじゃあ、最後に『正負の数の乗除法』についてだ。
やる事は今までと似ているから、今までのが分かってる人は簡単かもね。
さて、突然ですが問題です。
3×5は?
勿論、答えは15だ。
何を今更、って感じかもしれないけどね。
それでは。
『3×(-5)』は?
『(-3)×5』は?
『(-3)×(-5)』はどうなるだろうか?
正負の数が入り混じった掛け算だ。
だが、難しく考える事は無い。
実は、コレらを解く鍵はもう皆知っているのだ。
さっき僕が言ったことを思い出して欲しい。
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『+と+』『-と-』なら『+』、
『+と-』『-と+』なら『-』って感じだな。
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コレを使えば、正負の数が入り混じった掛け算、それだけでなく割り算も簡単に解けるのだ!
要するに、『+と+』『-と-』の掛け算・割り算なら、答えは『+』。
『+と-』『-と+』の掛け算・割り算なら『-』って感じだな。
数字の部分は、正の数・負の数関係なく計算すればオッケー。
なので、上の問題の答えは次のようになる。
3×(-5) = -15
(-3)×5 = -15
(-3)×(-5) = 15
同じようにすれば、割り算も次のような形だ。
6÷2 = 3
6÷(-2) = -3
(-6)÷2 = -3
(-6)÷(-2) =3
まぁ結局のところ、加減法でも乗除法でも『符号の付け方』は同じだ。
『+と+』『-と-』なら『+』。
『+と-』『-と+』なら『-』。
コレを覚えておけば大丈夫のようだ。
さて、コレで一応、参考書の説明は終わりだ。
参考書にも、『これ以上長々とは説明しない。まだ分からないのなら、後は練習問題で覚えろ!』的な事が書いてあった。
……習うより慣れろ、ですか。まぁ、自分で実際にやって分かる事もあるしね。
よし、そんじゃ練習問題をやっていこう。




