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9-2. 勧誘

※10/30

ルビが間違っていたので修正

まぁ、『血に塗れし狂科学者ブラッディ・マッドサイエンティスト』とか呼ばれてるって新事実に驚きはあったものの、手の空いていた可合に手当てをしてもらう事になった。


可合は重要物(キーアイテム)の[救急箱]を取り出し、消毒液と【光系統魔法】の回復用魔法、【回復照射】(ライト・リカバリー)を使って僕の傷口を治してくれている。



「(どう、効いてるかな?)」


柔らかい光を帯びた手を僕の傷口にかざす可合。


「(うん)」

「(そう、良かった! まだ回復魔法は使い慣れてないから心配だったんだけど……)」


可合は自信なさげにそう言うが、魔法を受ける側からすれば結構効いてるのが分かる。

傷口がメッチャクチャ痒いのだ。

傷口を今すぐにでも掻き回したいくらいだ。



「痒いのかぃ、小僧」

「(え……あ、はい。死ぬほど痒いです)」


そんな事を考えていると、コレレさんがそう聞いてくる。

なんで分かった!?


「ハハッ、だろうね。手がピクピクしているじゃないか」


……しまった。

気持ちが手に出ていたか。


「昔から云われている事だけど、良い回復魔法ほど良く痒いんだ。娘さんの質の良い回復を受けられる事、感謝するんだね、小僧」

「(……はい)」


へぇ。

そんな言い伝えみたいなのがあるんだな。

良薬口に苦し、的な感じかね。


「(本当によく効いてるよ。ありがとう、可合)」

「(いえいえ)」



まぁそんな感じで、皆が寝静まっている中、ちょっと嬉しい気持ちで回復して貰っていた。






その後もしばらく可合の【光系統魔法】による回復が続いたが、ある時。


「(……ちょっと休憩して良いかな。MPがそろそろ無くなってきたから)」


可合が回復を中断し、自分のリュックをゴソゴソ漁る。


「(あぁ、勿論。無理しないでね)」

「(フフッ。こんな傷を抱えておきながら、数原くんも優しいね。ありがとう)」


そう言って、MPポーションの蓋を開け、口をつける。



「あぁ、そういえば小僧」

「(はい、なんでしょう)」


可合の休憩中に、話を挟み込んでくるコレレさん。


「アンタ、さっき変わった魔法を使っていたね。あのステータス強化の。なんて言う魔法なんだい?」


あぁ、【乗法術Ⅱ】(マルチプリケーション)の事ね。

渋々コレレさんにもINTを3倍してやった奴だ。


「あぁ、アレは【演算魔法】です」

「【演算魔法】、かい……? 聞いたことないね。その魔法が馬鹿みたいなステータス強化用の魔法なのかい?」


『馬鹿みたいな』っておい。

まぁ確かに、普通のステータス強化魔法がせいぜい1.5倍行くかどうかだ。それに対し、初期レベでステータス2倍の【乗法術】(マルチプリケーション)

……うん、こりゃ馬鹿だわ。否定しません。


「まぁ、そうですね。本来は魔力を使って足し算や掛け算、引き算、割り算をするっていう魔法です。ですが、オプションでステータスの数字をプラス30したり、3倍したりする事も出来ます」


【状態操作Ⅲ】ステータス・オペレーション万歳。

貴方のお陰で【演算魔法】はとても活躍しております。


「さ、3倍……!? やっぱり、あの数字は間違いじゃなかったんだね。アタシゃてっきりステータスプレートがいかれちまったのかと思ったよ」


まぁ、上昇率1.5倍に行くかどうかの世界で3倍にされちゃ、疑うわな。


……にしても、魔術師連合の会長・コレレさんでも【演算魔法】を知らないのか。

過去に【演算魔法】使いとか居なかったのかな?



「ところでアンタ、そういえば所属先は『ギルド』だけだったね」

「(はい、そうです)」


学者の(ジョブ)が集う『学会』は王国から無くなっちゃったからね。


「それなら、『魔術師連合』に入らないかい?」

「えっ……」


おぉぉ……

まさかの、”要注意人物”老魔女コレレからのお誘い。

あれだけ僕の事を酷く言ったり見捨てたりした癖に、突然妙に優しくなったな。

『ボロクソ言った詫びに仲間に入れてあげるから許して』的な感じか?


「アンタのステータス強化魔法があれば、今から入っても連合内で大活躍間違い無しだよ。それこそギルドの『依頼』でチマチマ稼ぐのの比にならないくらい、お金も沢山稼げるだろうね」


コレレさんの激しい勧誘攻撃は続く。


「ギルドに所属し続けて生死の危険を冒してでもお金を稼ぐのと、連合で大活躍して危険もなくガッポガッポ稼ぐ。アンタの……ナントカ魔法、ステータス強化があれば出来る。どうだい?」



……あぁ、成程ね。

物凄い勢いで勧誘する真意が分かった。


コレレさんはただ僕の『ステータス加算』だけが目的だ。

ギルドから僕を奪い取って連合で独占し、ステータス加算を自由に使おう、ってか。

連合に入って、ステータス加算係として扱き使われる僕が頭に浮かぶよ。


ってか、本当に連合に勧誘したいんなら【演算魔法】の名前くらい覚えろってんだ。ステータス加算にしか目が無いからそんな事になるんだよ。



はい。ちょっと熱くなっちゃったな。

落ち着いて、お断りのお返事をしよう。


「(お誘いは嬉しいですけど、お断りさせて頂きます)」

「……あらま、そうかい。良い話だとは思うんだけどね」


目に見えて機嫌が悪くなるコレレさん。


「(そ、そうですけど……まぁ、クラーサさんにも色々とお世話になっているので)」

「フンッ、あの女にか。まぁ、仕方ないね。だけど気が変わったらいつでもおいで。アタシ達ゃいつでも小僧を歓迎するよ」

「(はい、ありがとうございます)」


とりあえず無難に返しておく。

そして、コレレさんは転移魔術師さんの回復に戻った。


……フゥ。

僕自身でも酷いと思うくらいの作り笑いを浮かべたけど、なんとかこの場をやり過ごせたようだ。






この後も1時間くらい可合に回復をして貰った。


「(はい、数原くん。一応、激しく動かなければ血は出ないくらいまで回復したよ)」

「(うん……おぉ!)」


軽くウトウトしていた所に、可合から声を掛けられる。

30分ぶりに見た傷口は水っぽさが抜け、所々にカサブタが出来ていた。

まるで怪我した直後とは思えない。1日、2日経ったかのような感じだった。


「(歩く、登る、軽く走るくらいなら問題ないと思うよ)」

「(おぅ! ありがとう可合!)」

「(フフッ、どういたしまして!)」


痛みもだいぶ引いた。

コレはマジで助かったよ。



そんな感じで回復も一段落したので、1時間半ほど遅れて僕と可合もそれぞれテント、寝袋へ。


同級生達の跡を追って夢の世界へと旅立った。

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本作は、以下リンク(後編)に続きます。
以下リンクからどうぞ。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで eˣᴾᴼᴺᴱᴺᵀᴵᴬᴸ

本作の『登場人物紹介』を作りました。
ご興味がありましたら、是非こちらにもお越しください。
 
『数学嫌いの高校生が数学者になって魔王を倒すまで』巻末付録

 
 
 
本作品における数学知識や数式、解釈等には間違いのないよう十分配慮しておりますが、
誤りや気になる点等が有りましたらご指摘頂けると幸いです。
感想欄、誤字報告よりお気軽にご連絡下さい。
 
皆様のご感想もお待ちしております!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうか、この物語が
 
小説を愛する皆様の心に、
心の安らぎを求める皆様の心に、
現実とかけ離れた世界を楽しみたい皆様の心に、
そして————数学嫌いの克服を目指す皆様の心に
 
届きますように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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