7-26. 成功
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タイトルが『2-26. 』になっていたので『7-26. 』に修正
さて、中々ショッキングな光景が見れてしまったが、皆なんとか気を取り直して探索を再開した。
ちなみに、今盾本の鼻にはガーゼが詰まっている。
可合が日本から持ってきた重要物の[救急箱]からガーゼを取り出し、止血してあげていたのだ。
可合の優しさは異世界に来て、迷宮に潜っても変わらない。いつでもどこでも優しさに満ち溢れてるな。
まぁ、それは置いといて。
迷路のように入り組んだ迷宮の3層目を歩いていく。
勿論、探索・マッピングの途中にも魔物は続々と現れる。
そんな時には実戦練習だ。
シン・可合・盾本はそれぞれ新技習得に向けて、僕はLv上げのために実戦経験を積む。
ちなみに僕はアシストで参加だ。
【乗法術Ⅱ】を筆頭に【加法術Ⅲ】でバフしたり、【除法術Ⅰ】を魔物に掛けてデバフしたりとアシストをしっかりこなす。
だが、新技の習得はそう簡単には行かない。
さっきの盾本の『顔面直撃事件』から始まり、可合の『ライト・レーザー』は途中から途切れ途切れになる。
シンの『突き』は腕に力が入り過ぎて、刺さりはすれど貫通させられない。
まぁ、僕のLvもそう簡単には上がらない。
だが、ついにその時が来た。
キーキーキーッ!
「キャッ!」
「うぉっ!」
「うわっ、ケーブバットの奇襲だ! 先生、ミユちゃん!」
「え、あ、はい!」
「おぅ、【乗法術Ⅱ】・INT3! 蹴散らせ、可合!」
「昨日練習した通りだよ。頑張ってー!」
「分かった! ありがとう数原くん、コースちゃん! よし、魔力を絞って魔力を絞って……」
可合が掌をバット達に向けて開き、魔法を唱える。
「ライト・レーザーッ!」
ピカーーッ!
「うぉっ」
一瞬、光が眩しくて無意識に目を逸らしてしまったが、直ぐに可合の方を見る。
可合の掌の辺りから細く白い光の線が放出され、バット達を貫く。
手を左右に振れば、光の線も左右に動き、次々とバットを薙いで行く。
光の線は今までみたいに衰える事が無く、バットを尽く撃墜していく。
「おぉ、すごいすごいミユちゃん!」
「うわわわわぁぁぁ……出来ちゃったよー!」
そして、バットの群勢を全て倒して光の線が消えた時、軽い電子音と共に可合の目の前に横長のメッセージウィンドウが現れた。
おっ、これはもしかして……
「え、これは……『アクティブスキル【光線Ⅰ】を習得しました』……だって!」
「やったね、ミユちゃん! 習得おめでとー!」
「ありがとう、コースちゃん! コースちゃんのお陰だよ!」
全力で新スキルの習得を喜ぶ2人。
おめでとう、可合。
「おめでとう、美優」
「やったな美優! オメェなら出来るって信じてたぜ!」
「可合さん、おめでとう! 俺も絶対習得してやろう!」
皆も可合を祝福する。
「い、いや……み、皆のお陰だよ! コースちゃん、あ、あと数原くんもありがとう!」
「どういたしまして!」
「おぅ」
可合が滅茶苦茶照れてる。
なんか気持ち顔が赤くなってるし。
こんな姿の可合、初めて見たよ。
まぁ、そんな感じで可合の【光線Ⅰ】の習得は成功した。
さて、少し興奮も落ち着いてきた所で探索を再開した。
のだが、一度こういう事が起こると立て続けに二度目・三度目もやって来るモンだよね。
次にその時が来たのは盾本だ。
「よし、タテモトさん。難しい事は考えなくて良い。タテモトさんの場合、考え過ぎると返って上手くいかなくなるからな」
「【乗法術Ⅱ】・DEF3。落ち着いて、リラックスだ。盾本」
「分かった。やってみるよ、ダンさん。計介くんもありがとう」
そして盾本は振り返り、洞窟の先を見る。
盾本の目の前には岩球になったロック・ピルバグが1匹。
「(足腰を使って……腕は力を抜いて……盾は相手に向けて……)」
いやいや、言ったそばから考え過ぎてますよ。
盾本、もっとリラックスしてー!
まぁ、そんな僕の心の声は通じるはずもなく、ブツブツ呟いたまま盾本がロック・ピルバグに向かって歩く。
10歩くらい近づいていった所で、ロック・ピルバグもそれに気付いたようだ。
いきなり回転を始め、盾本に向かって急加速。
「あぁ、そうだ。あとさっきの…………来たっ!」
ブツブツを止め、盾を真っ直ぐ構えて腰を据える。
ここまでは良い。
さて、ここからだ。
迫る岩球。
構える盾本。
瞬く間に両者の間合いは詰まり————
「シールド…………
接触する、まさにその瞬間。
「……バーッシュ!」
カーーンッ!!!
鍋の蓋と岩球が直撃した衝撃で、鍋の蓋が大きな音を上げる。
その音と共に、後方へと吹っ飛ぶ岩球。
吹っ飛びながら、その姿を岩球から団子虫へと変えている。
対する盾本は、吹っ飛ばされる事なくそのままの姿勢だった。
衝撃は曲げた膝で吸収し、一歩たりとも脚を動かさない。
衝突後も構えたままになっている盾は、綺麗に真っ直ぐ岩球の方を向いている。
「……完璧だ」
僕の隣で、ダンもそう述べた。
「「「「「「おぉ……」」」」」」
僕含め、他のメンバーもその技の強さ、美しさに感嘆していた。
ピッ
「おぉ、これは……よっしゃあ! 【硬叩Ⅰ】習得だぜ!」
「やったな、タテモトさん!」
「おう、ダンさんのお陰だよ、本当。サンキュー!」
「いや、気にしないでくれ。俺もタテモトさんが習得出来て嬉————
「あぁ、どうせなら『タテモトさん』じゃなくて、『マモル』って呼んでくれよ。ダンさんは俺の師匠だからさ、そんな他人行儀にしないでくれよ!」
「し……師匠、俺がか!? でも、俺の方が絶対に若————
「年齢なんて良いんだよ! 上手い方が師匠。って事で、ダンさん、これからもよろしくな!」
「お、おう……タ、じゃなくてマモル、こちらこそ宜しく!」
無事、盾本も新技を習得した。おめでとう。
習得後の話を聞いていると、盾本とダンの仲もだいぶ近づいたようだな。
得られたものは【硬叩Ⅰ】だけじゃなく、他にも色々と収穫があったようだな。
良かった良かった。
そして、再び探索を再開したのだが。
間を空ける事なく、探索再開から直ぐにその時は来た。
「よし、Lvアップだ!」
可合・盾本と来て、今度はシンが『突き』をマスターするかなと思いきや。
まさかの僕のLvアップでした。
済まんな、シン。
お先です。
僕の目の前には、横長のメッセージウィンドウが現れている。
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Lvがアップしました
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……Lvアップはとても嬉しいんだけど、その割にはなんだかショボいというか、味気ないというか……
こう、ファンファーレが鳴ったりとかメッセージも『おめでとうございます』とか、お祝いしてはくれないんだね。
……ま、まぁ、Lvアップしたことに変わりはない。
はてさて、LvアップでどのくらいMPが上がったかなー。
「【状態確認】!」
ピッ
===Status========
数原計介 17歳 男 Lv.5
職:数学者 状態:普通
HP 46/51
MP 21/45
ATK 4
DEF 14
INT 19
MND 18
===Skill========
【自動通訳】【MP回復強化I】
【演算魔法】
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最大MPはーっと……
お、45か。
3増えた。【合同Ⅰ】使用可能まで残り5。
あぁー、早く使えるようになりたいな、【合同Ⅰ】。
まぁ、ゆっくりじっくりLvを上げていこう。




