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明日には明日の風が吹く / 或いは、死体から生まれた人間の数奇な人生

作者: Acta est fabula.

ハッピーバースデー、私。

自身の誕生を呪いながら私は息を吹き返した

生まれたてのその体はまるでぼろぼろの古本で、

掠れた文字を私は必死に読み解く。


私の未来は世界の過去で。

今日の私が何をしようと

明日の私は変わらない。

決まった結果を覆そうとも

溢した水は盆に返らず、

結末知っている悲劇(トラジェディ)

愉快な喜劇(コメディ)に変えられなかった。


最愛のあなたと死別した(初めて出会った)

棺桶の中で、その冷たい体を洒落たスーツに包んでいた

土気色のその顔を見て深く悲しむと同時に、

またこれから夫婦として過ごせるという事実に涙が溢れてしまった。


最愛のあなた()告白した(初めて出会った)

若さ溢れるその体を、流行の服で着飾っていた

照れて真っ赤に染まったその顔を見るだけで私は幸せで、

明日からもう接吻(キス)出来ないのを考えただけで涙が止まらなかった。


なぜ自分はこんな世界に生まれて来てしまったんだろうと

思わない日は一度も無かった。

他の人々は赤子として生まれて老人として死んでいくのに

なぜ私の人生は逆転しているのだろうか。

私の全ては等しく砂上の楼閣で

時間の魔の手によって徐々に奪われていく


それでも私の未来は私の未来で。

今日の私の行動を

予定調和で片付けさせない

知らない昨日(まだ見ぬ明日)の事言えば

今日を生きる(おに)が笑う

悲劇(トラジェディ)喜劇(コメディ)かだなんて

劇を見るまで分からないというのに。


なぜ自分はこんな世界に生まれて来てしまったんだろうと

考えることはもう止めた。

例え私の明日は誰かの昨日であったとしても

過去(未来)の為に生きた今は無駄じゃない

私の全ては砂漠の幻影なんかじゃないと

時間の魔の手(クロノス)に分からせるまで足掻くのみ


ハッピーバースデー、私。

自身の誕生を祝いながら私は息を引き取った

死に掛けのその体はまるでまっさらなノートで、

白紙のページを前に私は筆を擱く。

■二作目の詩です。実はこのアイディア自体は前から暖めていたもので、【時空漂流体ウラシマ】と同じく、どの作品形式で出そうか悩んでいました。執筆を始めるほんの数時間前までは全く完成した作品のイメージが無くて、書きながら試行錯誤しつつ仕上げていきました。ややこしいテーマに一見訳の分からない世界観。でも、詩こそ、狂気や幻想をありのままに吐き出すのに最適な形式だと、私は思います。分かり易さや読み易さよりも、内容を重視したので、合う人は合う、合わない人は一生合わない形になったと思います。…いや、そもそも合う人なんて居るのだろうか?

■最後に、ここまで読んで下さり有難うございました。ご感想・語評価、心よりお待ちしております。

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