遠距離
遠距離恋愛ってのは面倒で、相手の連絡手段はもっぱらLINEか電話…なんて話はよく聞く。それは本当にその通りだ、もうなんていうか、うん、電話、LINE、電話…LINE?ぐらいで。私が大学院、彼が大卒で働いてる…とは言え、どちらも20は無事超えている…とは言え、遠距離は辛い。
遠距離なんて聞けば小説とか読んでる人なら
北海道と沖縄…とか、それこそ日本とアメリカ並みだったり…種族越えようものなら次元が違う。小説だからもともと次元が違うという話はスルー願う。むしろスルーしなければ私のこの話は哲学へと進んでいく、私も願い下げだ。いや、全員まとめて頭がバッドエンドだ。これにて閉幕。…いやいやいや。
独り言に閉幕もツッコミもないのは知っている。たまにくる母が今いるなら冷たい視線がアフターサービスされるだろう。いらない、心底いらない。
話を戻そう。戻すと私と彼はそんなに離れてるわけではない。むしろ遠くない、普通に行ける、会える。ただ言わせてください、遠距離恋愛している私以外の方々に殴られる気がしますが…会えないなら諦めつくけど会える距離で会えない方が心に来ると。
わかってる。若いし学生なら学校の研究、働いてるなら働け働けだ。会えるなら会えと言わないでほしい。時間がないんだ時間!!もう一度。時間がないんだ!!!!!うるさい?ごめんなさい。
「ってわけで最後はあんたに会いたい」
「文脈焼却炉のやつでいいから拾ってこい」
「遠い」
「知るか」
私の熱烈な一言は一瞬にして叩き潰された。
酷い。はやい。とてもはやい。
ちなみにさっきまでの言葉は全て心の中の
言葉でありそれも約5秒で考えた事である。
どうせコヤツに言っても他に頭使えと言われるんだ、どうせ。
「だってさぁ…県隣だよ?隣…なのにさぁ、
最後に会ったのいつよ〜、去年?一昨年?」
「そこまで行かねぇよ、大体数ヶ月だ。」
「遠いじゃん!」
「まぁ…そうだな。」
ほれみたことか。遠いもんは遠いんだ。
会いたいよ、声は何回も聞いてる、でも
君は知ってるのかな?電話を通した機械音と
あったときに聴く声の違いを。
目の前にいる時に見える姿があるっていう事の
重要さを。
恋人らしいこと望むほどにもう若くないのぐらい知ってる。知ってるよ。
…でも、会いたい。
こんなに真剣には言わないけど。
「ただ、俺はそれはお断りなのはあるな。」
「はぁ⁉私と居たくないって事か⁉ん⁉」
「うるせぇってば、近所迷惑なるわ!」
「お前もうるさい‼」
「基礎の声量が違うだろうが!」
酷い、人が珍しくちゃんと言ったというのにこの対応とは何たる仕打ち。もう一回。酷い。
意外に傷ついたぞ、寧ろ傷つきすぎて
一瞬涙出たかと思った。嘘じゃない。
「…それに、意味がなくなんだろうが、そんなもん嘘でも肯定したらよ。」
「…はぁ?それってどういう意味?」
少し怯みそうになり叫ぶように返したあとの意味深といえばそうな発言に思いっきり怪訝そうな顔をしてしまった。意味ってなんだ。
「もう答え言ってるじゃねぇか、もーお前ホントなんなの、エスパーなの?…それぐらい分かれよバーカ。…はぁ、もういいや。」
ガチャリ、と音が聞こえた。
嘘でしょ、と言った。
それはもう弱々しくて、相当掠れて声に
なっちゃいないだろうって思った。
普通の日なら、どうせ私と彼氏の会話を
邪魔するような宅配便だとかと思った。
だけど、こんなの…こんなのって
期待しちゃうじゃんか。
あの人が来たんじゃないかって、さっきの言葉を都合よく、私がそうだったらいいのにと何回も思ったような事が起きれば良いのにって、思うじゃないか。思いたくなるじゃないか。
口が震える、ベランダのフェンスについた肘が震えて少し音をカツンとたてる。通話口の向こうは無言で「わかってるだろう?」と言いたげに知らん顔だ。こういう時ぐらい無理矢理にでも音を発して、いつも通りにふざけさせてよ。
人がちょうど寂しいなとか思ってたときにこんな事しないでよ。
そう思ってどんな顔をすればいいか
分からず私はぎゅっと、目を閉じた。
その時、受話器の奥から小さな声が聞こえた。
くぐもったと言えばいいぐらいに、小さい。
「‥俺は、お前のさっきの言葉に頷く事はしない。たとえ、嘘だとしても。」
突然だった。突然…その人、そのガチャリとドアを開け入ってきた人物は私のベランダのフェンスについた手を、手首をぐいと引っ張った。
その刹那、唇に暖かさを感じた。
温かいほどじゃないけれど何度も感じた温もり
…何度も感じたいと思ったぬくもり。
実際の時間は約数秒、体感時間数十秒。
心と体が一致しない。
なんて考えてる内にもう一度。
ぷはっ、なんて色気の欠片もない口の離し方。
いつもなら「めっずらしー!」なんてからかえたのに、今日は言えない。
「…だって、そんなの短すぎるから。
だから俺はこんな提案をする。
【最期だけじゃなくて今から最期までずっと
俺といたいなんて思いませんか。】」
そんなことを言われて茶化せる私はいない。
ありきたりといえばありきたり。
だけれどそれが俺の書く小説の基盤です。
ベタすぎるシチュエーション、でも
それを読んで頂いても楽しかったと言って
いただけるように気まぐれ作者は書いてます。
読んで頂いてありがとうございました。
また何処かの作品でお会い出来ることを願い
そしてこの作品で出会えた事に感謝して。
冬の風を暖房で誤魔化したゆうりより
2017年12月29日 23:05