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真実の月


周囲の視界が変わり、私はただひたすらに上に上昇した。


あまり上昇はしていないと思うけど、月がすぐ近くに見えた。


 


「わぁ、あんなに近くに…」


 


少しだけ目が眩む…そんなに強い光ではないのに不思議な感じ。


 


「ふー、新参者かしら? でも、初めての夢で悪夢って災難ね~」


「あなたは?」


「…え? あれ? 何か違…あ、ま、まさか生身!?」


「まぁ、生身ですけど」


「何かの罠に嵌められたの? だけど、それ以上に


 私はあなたを知らないのよね…夢、見ない?」


「夢なんて覚えてませんよ」


 


ショートの青髪と青い瞳、頭にはサンタさんの帽子みたいなナイトキャップかな? を被っている。


髪はナイトキャップの中にしまっているみたいで長さは良く分かりそうに無いかな。


服はボンボンが付いた白黒のワンピースで何だか温かそうに見える。


この見た目からはあまり想像できないけど牛のようなシッポが見えた。


右手には紫色の塊みたいな物を持って、左手には日記? かなぁ。


私の前に出て来たって事は…多分、敵なんだろうけど


私と戦うための道具って感じでも無いな。


 


「でも…私の前に立つって…結構無謀ですね」


「……私はあなたを知らない、あなたみたいな存在は知らないわ。


 夢の世界の住民である筈の私が…知らないなんて」


「私はあなたを知りませんよ? だから、あなたが知ろうが知らないが関係ない。


 私からして見ればあなたは他人であなたが私を知っていたとしても


 あなたに対しての手心はない」


「……これは」


 


何で私の前に立つのだろう、勝てるわけがないのに。


いや、立つって表現は違うのかな? まぁいいや。


 


「さ、どうでも良いからさ、さっさと始めようよ。


 どうせ邪魔をしに来たんだろ?」


「邪魔をしに来たと言うのは間違いないわね…ただ疑問がある」


「なんだい?」


「ゆっくりと口調が変っているようだけど、どうしたの?」


「さぁね、満月なんて僕には強すぎるのかな? 真実の月なんてね」


「…ふーん、そう」


 


ま、丁度…いや、悪くないタイミングなのかも知れないけどね。


甘い状態じゃ、今回ばかりは結構苦労するんじゃないかな?


それなら、容赦なく相手を屠る…それが1番だろうね。


 


「……どう考えてもあなたは異常な存在、夢の国にもいない。


 夢を見ないとも思えないからね…もしかして新参?


 それなら幻想郷に来てから夢を見てないという可能性もある。


 ……ただあなたに少し似た存在は見た気がするわ、耳も尻尾のなかったけど」


「ふーん、まぁそうだろうね、夢の世界なんて理想郷だろう?


 僕は耳と尻尾はあまり好きで無くてね、ない方がマシなのさ」


「…だけど、瓜二つというわけではないわ…よく分からないわね」


「知らないよ、今の僕に大事な事は君が僕の前から消えるか否かだ


 大人しく消えるなら別に害は加えないよ、月の危機とやらにも


 実はあまり興味も無いんだけど、ま、頼まれた以上はやるのさ


 と言う訳で…消えてくれる? 


 あぁ、そうだそうだ、現実の月に連れて行ってくれよ


 どうせあの月は夢の世界だとか、そんな感じなんだろ?


 君はここが夢の世界だとか、そう言ってたけど、それなら


 その先にあるのは夢の世界だとか、そんな感じだろ?


 ただ限り無く本当の月に近い、住民も勘違いするほどにね


 ざっと予想しただけで、どうせあれだろう? 月に何か厄介なのが来て


 夢の世界に逃げたけどこのままじゃ不味いからって地上を浄化だっけ?


 それをして、地上に移動しようとか、そんな感じかな?


 やれやれ、もしそうなら随分と自分勝手なもんだね、腸が煮えくり返るほどに!」


「…いやに勘が鋭いわね」


「図星だね、ははん、せめて隠せば良いのに、ま、隠してもぶれないけどね


 さてさて、どうする? 嫌だと言うなら、そうだな、分かりやすく


 力尽くで動かしてあげるけど?」


「……やれる物ならやってみなさい、品定めをしてあげるわ。


 さぁ、今は眠りなさい、あなたが初めて見る夢は槐安の夢


 もう目覚めなくてもいいのよ、現実をも忘れるほどの優しい夢


 あなたはもう目覚める必要も無い、永遠に幸福の夢を見なさい」


「はん、夢なんて戯言どうでも良いのさ、そんな物くだらない偽りだ。


 自分で出来ないから逃げるだけだ、そりゃあ、僕だって逃げたさ


 逃げ続けたさ、だがまぁ、逃げれないことくらい分かってる。


 なら…夢を壊してでも、幸せを捨ててでも全てを喰らい尽くす!」


「く…」


 


夢は虚構だ、夢なんて戯れ言だ、夢なんて存在しないし必要無い。


僕に必要なのは…この現実だけだ!


 


「さぁ、夢に逃げるはお前の方だ、夢に生きることしか出来ない


 夢無くは生きれない哀れな妖怪さん? 夢にも逃げられない


 どうしようもない現実を知れ!」


「ふん、口だけは達者ね、でも! この世界は私の世界よ」夢符「夢我夢中」


「くだらないね」


 


僕の行動を制限してでの攻撃? くだらないね、何処までもくだらない。


どんな弾でも隙間はある、例え隙間無く放ったとしても、隙間は必ずあるもんさ。


 


「ほら!」


「う!」


 


弾幕の隙間を瞬時に縫って、夢の国の住民とやらの首根っ子を掴んだ。


 


「どうした? 少しは根性見せなよ」


「どうなって…こんなに…」


「ははん、もしかして何とかなると思ったのかい?


 そりゃまぁ、確かに君ならまだ僕に勝てる見込みはあるかも知れないね。


 だけど残念、その実力じゃ僕には勝てない、傷も与えられないさ」


「く!」


「さ、案内して貰おうか、月の都とやらに、そこに興味があるんだ」


 


ま、首を絞めた状態じゃろくに会話も出来ないだろうね。


どうせ何も出来ないんだ、首根っ子を掴む必要も無いだろう。


 


「けほ、けほ…」


「さ、僕は君の命に興味は無い…お願い聞いてくれるかな?


 いや、君には聞くという選択肢か無いのだけどね」


「……分かりました、まさか私が悪夢を見ることになろうとは…」


「悪夢の最後は死で決ってる、それがなかったんだ、まだマシだろう?


 そうだ、あんたは何者だい? 夢の妖怪とやらは…獏ってのがいたっけ、確か。


 夢を食うんだっけ?」


「…私の名前はドレミー・スイート、その内また縁もあるでしょう


 一応覚えておいて損は無いと思いますよ、そしてあなたの予想通り


 私は獏、夢の世界の住民です」


「あっそ、じゃ、一応僕も伝えておこう、こっちで聞いておいて


 答えないってのも、ちょっと失礼かもだし。


 僕はフィルだ、半獣だよ」


「覚えておきますよ、フィルさん」


「忘れちゃっても良いよ、どうせ僕は君を覚えてないだろうからね」


「それはまた酷い事を…とにかく、案内しますよ」


 


ま、酷い事も何も変えようがない事実だけどね。

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