新しい問題
私達は影狼さんの家で色々とご飯を貰ったりお話をした。
楽しくお話をしていると、いつの間にか日は落ちている。
「ありがとうございました」
「いやいや、大丈夫よ、あと、もう遅いし今日は泊まっていく?」
「良いんですか!?」
「勿論、話をするのも楽しいしね」
「ありがとうございます!」
美味しいご飯を沢山食べさせて貰ったうえに
家に泊めて貰えるなんて!
「その代わりと言っては何だけど、何かあったら手伝ってね」
「はい! 勿論です!」
「やはりそれが狙いでしたか」
「ま、まぁね」
狙いはどうでも良いけど、美味しいご飯を食べられたのは嬉しかった。
やっぱり皆で食べるご飯が1番美味しい、そう思う。
1人だと満足できないかも知れないからね。
「……ふぅ、っと、ここにいたとは意外うさ」
「え? あ、てゐさん! お久しぶりです!」
「そこまで時間は経ってないと思うけどね」
「そうですね」
「しかし、てゐさんが来るとは何かあったのですか?」
「月からの使いって所かしらね」
「…と言う事は永琳さんからの差し金ですか?」
「そううさ、と言う訳で、永遠亭へ」
「え、でも…」
「仕方ありませんよ、行きましょう」
「うさうさ、残念ながらお呼びが掛かってるのはフィルだけよ」
「…私達は来てはならないと?」
「そうね、あなた達は来ないで」
「…フィルさんに何をするつもりですか!
この子に手を出すことは、この私が許しません」
「別に危害は加えないわよ」
「あやや、しかし椛、大分フィルさんの事を気に入ったようね」
「な! いや、そんな事は!」
「ありがとうございます、心配してくれて、でも大丈夫ですよ」
「……そうですか」
「寂しそうね」
「……そんな事はありませんよ」
「では、また来てくれるようお願いしましょう」
「な、何でですか!? 私は別に!」
「あやや、私がフィルさんに来て欲しいからお願いするだけよ?」
「う゛!」
「素直じゃ無いわね、と言う訳でフィルさん、私も椛もお待ちしていますので
また妖怪の山へ遊びに来て下さい」
「はい! また必ず!」
「…ま、待ってますよ」
「はい!」
「あ、わ、私も待ってるから、また機会が竹林に来て頂戴」
「分かりました」
皆さんにお礼を言い、私はてゐさんに連れられ永遠亭へ移動した。
「連れてきました」
「あら、お疲れ様」
「…お、お久しぶりです」
「久し振りね、外の世界はどうだった?」
「少し息苦しかったです」
「ま、そうでしょうね」
でも、楽しかったと言うことは変らないけどね。
過ごしにくかったけど、それでも楽しかったから。
「さて、そんなあなたに、また大変なお仕事を任せようと思うわ」
「大変なお仕事?」
「本来、あなたにお願いをするのは…かなり異常な事よ。
あなたは幻想郷の新参妖怪、実力があったとしても
本来なら、異変の解決には博麗の巫女が赴き
幻想郷の賢者が動くべき事態…でも、今回ばかりは特殊でね」
「と、特殊ですか?」
「えぇ、この問題は幻想郷の問題では無い。
幻想郷に害が及びかねない問題ではあるにしても
幻想郷の問題では無いのよ。
そして、幻想郷の住民では対処出来ないほどに大きな問題」
「……」
「月の問題、だから、月の賢者だった私が動くべき問題なの。
そこで、私はいくつかの選択肢を用意した。
幻想郷に害があるから博麗の巫女を動かすか。
異変の解決にいつも走る魔法使いに任せるか。
新たに異変解決に動き始めた現人神に任せるか。
未知数の力を持つあなたに依頼を持っていくか
月の問題だから、こちらで解決するために優曇華に任せるか。
無難なところは優曇華に任せる事だったわ。
でも、彼女は月を捨てた、成長をして居るとは言え
その選択をした以上、ノコノコと月に赴くのは得策では無い。
その選択肢以外の選択もあまり得策では無いと判断したわ。
博麗の巫女に依頼を解決して貰うと言うことは
幻想郷側に借りを作ってしまう。
魔法使いに任せる方は、そこまで厄介な借りにはならないでしょうけど
実力に不安がある。
現人神に任せる方も、あの山の神々に大きな貸しを作る事になるわ。
裏で色々と行動しているあの神々に借りを作るのはよろしくない。
そこで、実力も十分備わっていて、貸しを作っても
あまり無理難題を言われそうに無い紅魔館の所属である
あなたに依頼を持っていこうと判断したのよ。
紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは裏がありそうでも
純粋、幻想郷の覇権を得ようともしていない、隠居をしている様な人物だからね。
興味本位で月に行ったところから考えて、子どもの様な性格。
だから、相手の裏をかくような行動はしないと判断したわ。
だから、あなたに依頼を持ってきた、そう言う事よ」
すごく長い話だったけど、つまり色々な候補はあったけど
出来れば借りを作りたくは無いから
借りを作ってもあまり問題が起こりそうに無い紅魔館に依頼を持っていった。
その中で評価をしている私に依頼を持って言ったと言う事かな?
「でも、私はそんなに強く」
「優曇華の戦意を何もせずに奪った、疑う余地は無いわ。
単純に考えてもあなたは優曇華よりも上よ
優曇華でも解決が出来るかもと判断した問題。
当然、その優曇華よりも実力が上であるあなたなら
問題無く問題を解決できると、そう判断したの」
「でも、私は空は飛べませんから、月に行くなんて」
「そこも抜かりないわ、あなたにはこの薬を渡すわ」
「な、何ですか? これは」
「空を飛べる薬…まぁ、正確には力の制御を可能として
空を飛ぶ事が出来るようにするだけなのだけどね。
つまり、ただの人間が飲んでも効果は発揮しない。
だけど、あなたなら問題は無いでしょう。
そして、この薬も」
私に差し出した薬は2つ、空を飛べるようになる薬はすごい。
でも、もうひとつの薬はあまり良く分からなかった。
「これは?」
「紺珠の薬、穢れを払う薬…これを飲まないと勝てないでしょう」
「……う、うーん」
空を飛ぶ薬を飲むんなら、この薬も飲め…うぅ、でも、何か恐いなぁ。
「…や、やっぱりこっちは…何だか嫌な予感が」
「そう、よくは分からないけど…そう言うなら薬を使わない方が良いのでしょう。
とにかく、薬は良いわ…ただ被弾しないようにして頂戴ね」
「はい、分かりました」
私はもう一方の空を飛べる薬を飲んだ。
どうすれば飛べるのかよく分からなかったけど
永琳さんに言われたとおり、飛ぼうと思うと飛べた。
地上にいるときと同じ速度で動けるし
アンバランスなんて事も無い…すごい!
「お願いね」
「はい!」
暗くなった竹林から飛び出し、私は月へ向って移動を始めた。
「やっぱり、あの子の事は警戒はして居た方が良いのかしらね
空を飛ぶ薬、あの薬を一時的な物にしたのは正解だったかしら」
「……月の賢者、随分な真似をしてくれたわね」
「八雲紫、あなたが動けばすぐに彼女を月へ送れるわね、動きなさいよ。
地上へから月へ行くだけでもかなり一苦労なんだから。
あなたが動けるなら、あなたが動いて欲しいわね」
「……何であの子を巻き込んだの? あの子は」
「あの子が適役だからよ、博麗の巫女は確かに幻想郷では無類の実力を誇る。
でも、ひとたび幻想郷から出れば、その実力は落ちるわ。
外の世界の干渉、ましてや今回は月が舞台。
聞いた話だと、あの子、月へ行って返り討ちに遭ったそうだしね」
「……そこじゃ無いわ、なんであの子を選んだかよ」
「随分とあの子の心配をするのね…やっぱり何かあるの?」
「…………この問題が片付けば分かるわ」
「そう…で、何で今まであなたは動かなかったの?
都市伝説異変、あの異変は幻想郷を崩壊させかねないレベルの異変。
それなのに、あなたは姿を見せていない。
あの子が動いて、何とか問題が解決…してはい無いけど
何とか鎮火した、あなたが動けば、もっとスムーズに解決できたでしょうに」
「あなたに伝える必要は無いわ、でもそうね、今回の問題を解決しようと
裏で動いていた…そう言っておこうかしら」
「そう」
「それよりも、あの子を利用した理由を言いなさい」
「…あなたに伝える必要は無いわ、でもそうね、可能性に賭けたのよ」
「…あの子に何かあったら…覚悟した方が良いわよ」
「地上の妖怪如きが私に何が出来るのかしら見物ね」
「ふ、その勘違い、正す方が良いわよ」
「え?」
……最後のひと言、それが引っ掛かった。
勘違い? あの話の流れで、私は何を勘違いしたというの?
あの話の流れから考えても、あの子に何かあった場合
報復をする…そんな風に聞えたけど……何か、別の何かがあるって言うの?
と言っても、もう問いただすことは出来ないわね、便利で厄介な能力ね。
やはり八雲紫、彼女は警戒していた方が良いかしら。




