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きれいな満月


満月の下で聞いた、独り言。


自分だけが不幸だと思っていた自分が馬鹿みたいに感じた。


僕がした行動は、正しかったのかとも思う。


あのままじゃ、きっと幸せにはなれなかったのだから。


 


「…満月、本当に綺麗ですね」


「そうじゃな、こうやって満月を楽しめる今は幸せじゃよ」


 


本当に綺麗だった、好きでも無い満月が。


でも、そうだなぁ、夜は最も幸せだったかも知れない。


のんびりと出来たし、静かな風の音も好きだ。


周りは静かだし、騒ぐ奴らも居なかった。


 


「しかし、何とも静かな物じゃ、満月の夜じゃと言うのに」


「満月の夜は妖怪が活発に動くんでしたっけ」


「その通りじゃよ、百鬼夜行もたまに見るしのぅ。


 まぁ、害が無いのは最も楽ではあるのじゃが


 ここまで静かでは、逆に不気味じゃな」


「普段は戦ったりするんですか?」


「そうじゃな、殆どないかのぅ。


 まぁ、戦いになったところで負ける気はせぬが」


 


何で負ける気がしないのだろう、少し不思議だ。


まぁ、九尾だし実力も結構あるのかも知れないけど。


 


「やっぱり九尾である英子さんの敵は少ないんですね」


「まさか、儂よりも格上など、この幻想郷にはわんさかおるわ。


 負ける気がしないのは、ルールを無視するような連中は


 実力も無い弱小ばかりじゃよ」


「どう言うことですか?」


「幻想郷にはルールがある、人里の人間には手を出してはならないというな。


 そのルールを無視する、無視出来るような存在は


 そもそもルールを知らぬ生まれたての妖怪か


 粋がっているだけの雑魚だけじゃよ。


 ある程度の実力があれば、人里の人間に手を出せばどうなるかなど


 ハッキリと理解しておるじゃろう」


「ど、どうなるんですか?」


「興味があるか? まぁ、お主は新参みたいじゃし、説明をしようかのぅ」


 


幻想郷のルールか…そんな物があるとは知らなかった。


まぁ、問題は無いんだろうけど、流石に危害を加えてこないような奴に


手を出すような馬鹿な真似はする筈が無いからね。


 


「幻想郷は人間と妖怪の遠いようで何より親密な関係で存在しておるのじゃ。


 人が居なければ、妖怪は存在をする事が出来なくなるのじゃ。


 逆に妖怪が居なければ人里など天災ですぐに崩壊しておるよ。


 お互いがお互いを生かしている、そんな関係じゃ」


「それは何処かで聞いたような気が…」


「まぁのぅ、天狗と仲がよいなら、何処かで聞いたかも知れぬな」


「文さんだったかな…いや、紫さんだったかも」


「紫!? 紫とは、八雲紫の事か!?」


「あ、はい」


「…お主、幻想郷の賢者と知り合いなのか?」


「はい、色々な所を旅させられました」


「……ほぅ、それはそれは」


 


やっぱり大きいんだな、流石は幻想郷の賢者。


知り合いだと言うだけで周りが響めくとはね。


本当、すごい人に目をかけられた物だ。


…いや、目を付けられたが正しいかもね。


 


「なる程、儂が思った以上にお主は大きな存在の様じゃな」


「え、いや、そんな事は」


「そうか、記憶が無いのか」


「はい、紫さんに幻想郷の人達と交流して


 幻想郷から抜け出そうと思わないようになったら教えてくれると言われて。


 だから、幻想郷を巡ったりしてたんです」


「…こりゃまた、奇異な話じゃな」


 


聞いただけでは確かに奇異な話だけど、実際は全く奇異でも何でも無い。


 


「どう言うことですか?」


「一介の妖怪が自分の意思で博麗大結界を突破できるとは思えぬが…


 いや、実力のある妖怪なら博麗大結界を超えられるのかも知れぬが。


 しかし…失礼じゃが、儂にはお主にそれ程の実力があるとは思えぬが」


「あはは、そうですよね、私ってすごく弱っちいので」


 


弱っちい、弱くて弱くて、何処までも弱々しい。


 


「なら、何故八雲紫は…うーむ、分からぬ」


「私の記憶にどんな秘密があるのか…


 少し恐いんですけど、それでもやっぱり私は


 お父さんとお母さんの事を思い出したいんです」


「そうか、祈っておるよ」


「ありがとうございます」


 


……もしかしたら、知らなくても良い事かも知れないのに。


知らぬが仏という言葉もあるだろうに。


でも、そうだなぁ、知らない方が良いことを知らないなら


知りたいって思うかも知れない。


 


「……んー」


「む? どうしたのじゃ?」


「あ、いや、少し頭が痛くなって…」


「大丈夫か? 疲れた…と言う感じでは無さそうじゃが」


「あ、はい、身体は大丈夫なんですけど」


 


満月を見過ぎたかな、やっぱり満月って言うのは面倒かも。


 


「…あ、少し落ち着きました」


「そうか、それは良かった」


 


うーん…何で頭が少し痛くなったんだろう。


満月を見過ぎたからかな、満月には不思議な力が宿るって言うし


もしかしたら…いやいや、考えすぎかも。


 


「なので、朝までお付き合いします」


「無理はするなよ」


「大丈夫ですよ」


 


少し痛くなっただけだし、別にそこまで問題は無いかな。


それに、1日中歩き回るのにはなれてるしね。


1ヶ月くらいなら寝ずに動けるし…いや、1ヶ月も寝ずに動いたことあったっけ?


あはは、流石にないよね、何か変な自信が付いちゃってるのかな。


 


「なら良いがな」


「安心してくださいよ」


 


そのまま私達は満月が沈むまで、人里の警備を行なった。


別に何かがあったわけでは無いけど、英子さんとの距離が縮んだ気がする。


普段の英子さんと上手くやれるかは…まだ分からないけどね、あはは。

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