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最後の面倒


外の世界に出て、およそ2ヶ月の時間が経った。


何だか、外を出歩くのも楽になってきた。


ずっと不安だったけど、意外と外も悪くない。


空気は不味いし、音もうるさい


鳥の鳴き声なんて聞えないで、不平不満の会話がよく聞える。


耳も良くて鼻も良い私には正直かなりキツい気がするけど。


…でも、帰る場所があるってだけで、こう清々しい気分になる。


 


「…うーん」


 


今日は何を作ろうか、こっちに来てから毎日料理を作ってる。


幻想郷に戻ったら、咲夜さん驚くかな。


私が頑張って作った料理を食べて、喜んでくれるかな。


 


「あいつだな、あの女…」


「あぁ」


 


…変な会話が聞えた、嫌な予感がする。


ひとまず、私は人目に付かない場所に移動した。


後ろから付いてくる妙な気配はドンドン増えている。


ここで私が目立つのは大変だ…だから。


 


「あ?」


「居ない…?」


 


私はその気配を避ける為に、その場から姿を隠す。


人目が多い場所だと目立っちゃうから、私は人が少ない場所に移動して


高い建物の上に逃げた。


下の人達が居なくなるまでは動かないで待っておこう。


伏せて、外からも見えないように隠れてやり過ごす。


 


「ち、何処に行きやがった」


 


外に出る度に、よく分からない人達に付けられている気がする。


心当たりも全くない…男の人達は菫子ちゃんが記憶を消したはずだから違う。


だったら、あの人達は誰だろう。


少なくとも菫子ちゃんと一緒に居る時じゃないとどうにも出来ないかな。


 


「クソ、菫子の妹だと思ったのによ」


「と言うか、あんなガキを捕まえてどうする気だよ」


「あいつを人質にして、あのクソ姉妹を陥れるんだよ。


 頭も良いし運動も出来るとか、ふざけやがって…」


「だったら、金髪の方を狙えば良いだろ」


「あっちはいつも蓮子の奴が一緒だからな」


 


……狙いは私じゃなくて、菫子ちゃんだったんだ。


このままだと2人に危害が及ぶ…どうすれば…


でも、なんであの2人は恨まれてるんだろう。


あの2人は何も悪い事はしてないんじゃ…


それとも…ただの理不尽な嫉妬。


 


「なんで」


 


なんで実力で復讐をしようとしないんだろう。


なんで対抗してやろうと思わないんだろう。


なんで陥れるなんて事を考えるんだろう。


その行動には何の意味も無いのに。


だって、優秀な人を陥れて自分が上に立ったとしても


それって全体からして見ればマイナスにしかならないし


自分の為にもならない、だって、成長してないから。


いや、むしろ後退してる。そんな考えだとなんの意味も無い。


そんな事を考えてる間にも実力で示そうと努力する方が成長出来るのに。


現に、あの人は今、休みの日でもないのにこうやって私を追ってきてる。


その間に学校に行って、勉強すれば実力も伸びるんじゃないかな?


 


「クソ、とにかく探すぞ!」


「はいはい、ったく、No.3ってのは大変だな」


「一般家庭で育ったくせに、俺より上なのは極刑だ」


「金持ちは良いね」


 


……行ったかな。


 


「…はぁ」


 


やっぱり、外にはあまりでない方が良いかも知れない。


あんな人に目を付けられてたらまともに動けないよ。


私はそのままお買い物をして、家に帰った。


 


「ただいま」


 


少しして菫子ちゃんが家に帰ってくる。


 


「お帰りなさい」


「いやぁ、今日の授業は退屈だったよ」


「…えっと、菫子ちゃん、蓮子ちゃん」


「何?」


「話したいことがあってね」


 


私は今日あった事を全部2人に話した。


 


「…No.3…あの子か、確かに私達の事を嫌ってるのは分かってたけど


 まさかそんな事をしようとしてたなんて」


「このままだと…」


「メリーが巻き込まれるのは困るかな」


「なんとかとっちめないと…」


「だけど、何をしても、ああ言うタイプって」


「早々変わらないでしょうね、よっぽどの衝撃がないと」


「な!」


 


後ろの方から不意に気配を感じ、急いで振り向いて見た。


そこには…久し振りに見た紫さんの姿があった。


 


「ゆ、紫さん!」


「何々! 何この人!」


「え!? ど、何処から!」


「初めましてですわね、私は八雲紫、うちの妖怪がお世話になったようで」


「え? じゃ、じゃあ、あなたも…妖怪?」


「えぇ、幻想郷の賢者をさせて貰ってますわ」


「も、もしかして、フィルを向かえに来たの?」


「勿論です、彼女にこの世界は厳しすぎるわ」


「…その口振り、もしかして、あなたってフィルの記憶を知ってるの?」


「勿論」


「なら、どうして教えてあげないのよ!」


「その記憶を知ってるからよ」


「……どう言う」


「そのままの意味、まぁ、その内教えるつもりではあるけど


 少なくとも、まだその時ではないの」


 


私の記憶…私が知らない、私の記憶。


 


「じゃ、お話しはこれでお終い、フィル、帰るわよ」


「ま、待ってください、紫さん!」


「…早く帰るわよ、この世界はあなたが居るべき世界ではないの」


「帰ります、帰りますよ、でも、私はまだ恩を返していない!


 まだ、菫子ちゃん達の問題を解決できてません!


 今まで私を受入れてくれていた皆の為にも、私は皆の問題を解決したい!」


「あなたには関係のない事よ、なんのメリットも無い行動。


 むしろ、危険性しか孕まない、そんな問題。


 その問題を解決できても、あなたはただ自己満足を得るだけ」


「自己満足でも何でも良いんです、得るものは何でも良い。


 でも、私は…後悔はしたくないんです、何もしないで得るものを得たくない!


 それに紫さん…もし、あなたが本当に今すぐ私を帰したかったら


 いつも通り、私の足下に隙間を出せば良いじゃないですか」


「……少し成長したわね、良いでしょう、少しだけ力を貸してあげる」


「ありがとうございます!」


「きょ、協力してくれるのはありがたいけど、どうするのよ」


「なーに、強烈なトラウマを植え付ければ良いだけの話よ」


 


その日の夜、どうやら向こうも強行を仕掛けようとしたみたいだった。


私達はいつも夜の間は外散歩に出ていた。


理由は私が外の世界になれるようにする為という


菫子ちゃん達の気遣いだった。


彼らはその日、私達の散歩道で待っていた。


 


「ち…まだかよ」


「良いから」


「あ、足音聞えたぞ!」


 


足音を立てていたのは私達だった。


私達はいつも通り、外の散歩をしていた。


 


「よし、今だ!」


 


私達を捕まえる事が出来る距離で彼らは飛び出す。


 


「なんだ!」


 


でも、彼らは足下にあった隙間に気付かず、飲まれる。


 


「な、なんだよ、どうなってるんだよ! これは!」


「さぁ、幻視して来なさい、異世界の狂気って言うのをね」


「菫子! テメェ!」


 


最初に彼らが送られたのは真っ暗闇の中だった。


 


「な、なんだよ…これ…何も!」


「ねぇ」


「な! 誰の声だ!? 誰だ!」


「あなたは」


「後ろ、嘘だろ、ないも見えな」


「食べてもいい人類?」


「うわぁああ!」


 


最初に協力してくれたのはルーミアさんだった。


暗闇の中で声だけで相手を驚かせる役目。


私には分からないけど、多分最後の瞬間に彼らの目の前に姿を見せたんだ。


その直後、彼らは隙間に落下した。


 


「うぅ、こ、今度は…」


「…本当に嫉妬の塊ね」


「あ、あ、あぁ!」


「さぁ、見せてみなさい、あなた達のトラウマを」


「な、あ、あぁああ!」


 


次はさとりさんとパルスィさんだった。


パルスィさんが嫉妬を操り、さとりさんがその嫉妬をその心に焼き付けさせた。


自分達がしてきた嫉妬、その全ての嫉妬を取り出され、自身に返された。


自分達が今までして、しようとしてきたことをそのまま送り返されたんだ。


 


「あぁ…あぁあ!」


 


次に落下する、次に出て来たのはフランお嬢様だった。


 


「ねぇ、遊ぼうよ、お兄さん…」


「うぁ…あ、あぁ」


 


そこは幻覚で出来た世界、フランお嬢様のお部屋は血まみれになっていた。


これは菫子ちゃんとさとりさんの力だった。


 


「ひ、あ、く、来るなぁ!」


「いただきます」


「うわぁあああ!」


 


そのまま男の子は意識を失い、隙間に呑み込まれた。


そして、元の場所に捨てられた。


他の男の人達も同じ様な経験をしたのかも知れないけど、全員気絶している。


 


「…さて、これで解決ね」


「……紫さん、やりすぎだと思います、漏らしてますよ、あの人達」


「バカね、結局未遂だったとは言え、あいつらがしようとしていたことは


 誰かの人生を陥れる様な、そんな行動よ。


 何をしようとしてたかはさとりの能力で把握済みだけど。


 正直、あんな事をすれば人生は滅茶苦茶になるわ。


 自分の為に他人を陥れ、その一生を破壊するなんて狂ってるわ。


 だから、それ相応の報いを与えたまで、本当はもっと食らわせるべきだったけどね。


 少なくとも、人生を滅茶苦茶にされてないだけ感謝して欲しい程よ。


 まぁ、この無様な姿を自分達がしようとしてたように撮影されて


 ネットにでもばらまけばこいつらの人生も崩壊だけどね」


「恐いことを…」


「でも、もう再起不能だと思うわ、さとりとパルスィの心抉り、あれだけでね」


「ルーミアさんとフランお嬢様はあまり意味が無かったと?」


「ルーミアは心を読みやすくするため、フランはそのトラウマを


 確実に心に刻み込ませるために必要な行程だったの」


「でも、よく協力してくれましたね」


「あなたの為ならって喜んで協力してくれたわ」


「…あはは、嬉しいです」


「さ、これで本当にお終いね…帰りましょう」


「…いや、少しだけ待ってください」


「まだ何かあるの?」


「…皆」


「ん?」


 


私は皆の方に駆け寄った。


 


「…ありがとう、また会おうね」


 


そして、皆と抱きしめ合う…大事な友達と。


 


「…うん、会いに行くから」


「えぇ、絶対に」


「絶対に会いに行くわ、結界の隙間を見付けて!」


「いや、止めなさいよ!」


「ふふ、それじゃあ、またね」


「うん! またね!」


「…良い? 絶対に結界を越えようとか思わない事よ」


「断るね! 私達は秘封倶楽部! 秘密を曝くのが私達よ!」


「…はぁ、忠告はしたわよ、出来ればあなた達が来ないことを祈るわ」


 


紫さんはそう言い残し、私と一緒に隙間の中に入った。


さようなら、外の世界…また会おうね、私の…大事な友達。

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