バトルロワイヤル
「フィル、あいつとの決闘、中々楽しんでたわね」
「はい、何だか楽しかったです!」
あの炎を纏ってる姿に興奮したのかも知れない。
何だか初めて…初めてこの決闘が楽しいと感じたかも。
「むぅ、私と戦ってる時もあれ位楽しそうにしてくれればなぁ」
「さ、流石にフランお嬢様と戦って楽しいって思うわけには…
ご主人様ですし」
「良いじゃん良いじゃん、決闘は会話だよ」
「肉体言語って奴ですか…恐いです」
怪我はしたくないしさせたくないから…無理だなぁ。
だけど、なんで妹紅さんと戦ったときは楽しめたんだろう。
もしかしたら、相手が死なないって分かってたから?
そうかも知れない、相手が死なないなら大丈夫って。
「あ、そうだお嬢様」
「何?」
「えっと、このオカルトボールなんですけど、集めれば集めるほどに
何だかこう…不気味さが増していってる気がするんですけど」
「…ふーん、何でかしら」
お嬢様も良くは分かってないみたいだった。
私も感覚的に分かってるだけだから…うーん。
「まぁ、そう言うなら1度博麗神社に戻って霊夢にでも相談してみる?」
「はい、そうですね、霊夢さんなら何か理由が分かるかも知れませんし。
もしかしたら、紫さんもいるかも知れませんしね」
「えぇ、あの胡散臭いのがいれば大体分かるでしょ」
「じゃあ、もう一度神社に行くの?」
「そうしましょうか」
「…でも、お嬢様」
「何?」
「出口…分かるんですか?」
「……」
どうしよう! 出口とか分からないよ!
「竹林から出たいなら、私が案内してやろうか?」
「え!? 妹紅さんが!?」
「あぁ、私はこの竹林に住んで長いからな。
ここから出る道も完全に覚えてる」
「じゃあ、お願いします!」
「あぁ、任せときな、楽しかった分、お礼だ」
「ありがとうございます!」
私達は妹紅さんの案内に従って、この竹林から出た。
そして、そのまま博麗神社へ向った。
「さて、ここに付いたのは良いんだけど」
「待ちわびたわよ」
「え?」
私達が博麗神社に着き、出迎えてくれたのは霊夢さんでは無かった。
私達を出迎えてくれたのは頭にお団子を被っていて
右腕全体を包帯でグルグル巻きにしているピンク色の紙した女の人だった。
左手首には、勇儀さんと同じく鎖のついた鉄製の腕輪をつけている。
胸元に花の飾りがあって、服の前掛けの部分には茨の模様が描かれている。
身長は結構高い…霊夢さん達よりも大きいかも知れない。
「あなたは…」
「私は茨花仙と言っても、これは仙人としての名前で
本当の名前は茨木華扇よ」
「え、えっと…仙人様がなんで」
「あなたの噂は聞いているわ、オカルトボールを集めているそうね」
「いえ、正確にはこのボールの正体を探そうとしているだけで」
「そう、何も知らないのね、だったら私にそのボールを渡しなさい」
「え?」
「そのボールは危険よ、まだ7つは集めてないみたいだけど
もう5つは集めてるんでしょう?」
「なんでそれを…」
「気配かしらね」
この石って、気配みたいなものを発しているのかな?
「しかし、まさか仙人まで動くとは予想外ね」
「吸血鬼」
「やはり3人で行動しているのじゃな」
次に出て来たのは眼鏡を掛けた狸のような尻尾が生えている人だった。
やはり尻尾が生えているからか、狸の耳が生えている。
髪は肩にかからない位で、赤み掛かった茶色だった。
頭にある耳は髪色よりも少し濃い色の焦げ茶色で頭頂部近くから真上に生えている。
尻尾は普通の狸の尻尾とはなんか違ってて、濃茶色と薄い茶色の二色が
交互に並んだ模様をした少し太めのとても大きな尻尾だった。
服装は薄い桃色の肩掛けに、薄茶色の無地のノースリーブと
濃い茶色のスカートに土色で波と船の模様が書かれていた。
足元は素足に草履。
酒と書かれた白いトックリを左側に、帳簿らしき白い紙の束を右側にあった。
「……狸?」
「まぁ、その第一印象は正しいのぅ、儂は実際狸じゃしな。
じゃが、毎度狸呼ばわりというのもなにやら嫌じゃし
名を名乗ろう、儂の名は二つ岩マミゾウ、化け狸の頭領をしておる」
…ただ者じゃ無い、この2人はただ者じゃ無い…
最初、魅魔さんを見たときも感じた…この2人は強い!
本気を出して戦わないと…絶対に勝てない!
「やれやれ、まさかここまで集合するとは予想外でした」
「……」
今度は金髪に紫のグラデーションが入ったロングウェーブ。
服装は白黒のドレス姿に表地が黒・裏地が赤のマントをはおって黒いブーツをはいている。
髪の毛は完全に巻き毛だった。
この人も…存在感が凄い…
「では、流れで私も自己紹介をさせていただきますね。
私の名前は聖白蓮、一応魔法使いです。
人里近くで命蓮寺と言う寺をしております。
あなたがよろしければ、入信しませんか?
私達は妖怪でも受入れますよ」
「え、えっと…」
「もう少し速く子の娘に近づくべきだったな、私としたことが失敗した」
今度は耳と見間違えるくらいに尖った薄い茶色の髪に「和」の文字が入った耳当てをしている。
服装はノースリーブの薄紫に、紫色のスカートを履いていた。
腰には柄に太陽を象った剣を携え、手には笏を持っていて
マントも羽織っている。
人と似たような気配を感じるけど、何処か違う。
何だか古めかしい気配。
「まぁ、流れで私も自己紹介だ。
私の名は豊聡耳神子。
昔は聖徳太子と言われていたぞ」
「聖徳太子…え? 聖徳太子って女の子じゃ…
どっちかと言えば小野妹子とかの方が女の子っぽいなーとか」
「過去は男が主軸を握っている時代だったんだぞ?
その時代で女である私が女として名を残せるはずも無い。
だから、私は女では無く、男として君臨していたものだ。
だが、この場で自らを欺く必要は無いだろう? そう言うことだ」
…聖徳太子、伝説で架空の物だと考えられていた存在。
「でも、架空の存在って…」
「では、お前の隣に居る吸血鬼はどうだ? 架空の存在であろう?」
「で、でも、お嬢様達は確かにここにいて」
「歴史や言い伝えというのはなんとも曖昧な物だ。
事実存在していても、その存在を立証する手段は無く
逆に存在を完全に否定できる証拠も無い。
歴史は全て虚構に等しいのだ。
だが、ここは幻想郷、虚構が力を得る世界だ
その世に私が存在していてもおかしくは無いだろう」
「でも、聖徳太子は凄い前の人…生きてるのは」
「あぁ、私は1度死んだ、だが蘇った、それだけだ」
「そんな事が…」
聖徳太子…その存在が目の前にいるなんて…
聞いたことしか無いような存在が目の前にいる。
いや、今更そんな事を考えても意味が無いのかも知れない。
だって、お嬢様だって吸血鬼、吸血鬼なんて噂でしか聞いたことが無い筈なのに
今の私はその吸血鬼のペット…幻想郷に現実世界の当たり前は当たり前じゃ無いんだ。
「まさか、これほどの実力者がこの場に揃うとは予想外じゃな」
「あなた達、退きなさい、この娘のボールは私が奪うわ」
「退くのはあなたです、ボールは私が封じます」
「何、私がそのボールを所持していれば争いは終わる。
幻想郷にしか影響を与えられない空間突破の力なら
私の仙界に保護していた方が良いだろう?」
「まぁ待つのじゃ、どちらにせよ、その娘からボールを奪わねば
話は始まるまい、儂らが持っておるボールを合せれば7つにはなるがな」
「でもそれは、私達が戦わないと意味が無い」
「じゃが、その娘の持つボールは5つ…このボールさえ奪えれば
儂らは皆7つのボールを揃えることになる」
「つまり、その子を最初に倒した物が」
「目的を達成できる、と言う事だな」
「え!?」
「でも、流石に3対4は可哀想では?」
「その娘が石を5つ集めた理由は1対3じゃったからじゃろ?」
「何言ってんのよ狸、フィルはずっと1人で戦ってたわ。
私達はただ近くで見ていただけよ」
「ほぅ、力もあまりなさそうな娘じゃが、見た目に反して実力者か」
「……」
「なら、ばとるろわいやるで行けば良いじゃろう」
「面白そうでは無いか」
「…これは遊びじゃ無いのだけど、それは好都合ね」
「ふふ、面白い決闘だな」
「えぇ、致し方ありません」
「ちょっと待ってください! 私の意思は!?」
「まぁ、どんな決闘方式でも負けたら許さないわよ」
「そんなぁ!」
バトルロワイヤルって…聞いてないよぉ!
それに! 全員強そうなんだけどぉ!?




