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温泉

お、温泉…私的には初体験となる大きなお風呂。


どんな感じなんだろう…うぅ、うん、大丈夫! 


 


「う、うぅ」


 


私はソーッと足を伸ばし、まずはお湯の温度を確かめてみる。


…そ、そこまでは熱くない、これなら問題無く入れる気がする。


じゃあ、ゆっくりとこのままで…


 


「温! 泉! だぁ!」


「ほわぁああ!」


 


後ろから飛んで来たお空さんにぶつかり、私は温泉へ落下した。


し、視界が一気に変わる!


 


「ぷ、ぷはぁ!」


「あはは!」


「う、うぅ…」


 


お、お空さん…弾幕ごっこのときはあんな感じだったのにさ。


なんでこう、その時以外はこんな感じなんだろう。


 


「お空は弾幕ごっこをする時は人が変わったかの様に冷静になるんですよ


 理由はよく分かりませんが、お空の中にある八咫烏の力が


 戦闘の時だけは強く働き、正確が変わるのかもしれませんね。


 私から言わせて貰えば、本来のお空はそのお空です」


「あはは! フィル!」


「うぅ…これが普段ですか?」


「はい、しかし、お空が名前を覚えているというのは珍しいですね


 やはり、フィルさんの事を気に入ってるのは本当の様です」


「そうなんですか?」


「お空は鳥頭ですからね、興味の無いことはすぐに忘れます」


 


そ、そうなんだ…じゃあ、案外名前を覚えて貰ってるのって凄いことなのかも?


 


「因みにお空が名前を覚えて貰うには、まず第1関門の弾幕ごっこをとっばだね


 あたい達は特別で覚えて貰ってるけど、あたい達以外だと、まずはお空と


 弾幕ごっこをして、生き残らないと話しにならないよ」


「い、生き残るって…や、やっぱりあの弾…」


「まぁ、普通の人間や妖怪なら死ぬだろうね」


「やっぱり!」


「お空はまだ力の加減が出来ていませんからね」


「あぅ…」


「後、お隣、ごめんなさいね、服を用意して貰って」


「いえ、ペットですから当然ですよ、さとり様はもう温泉に入っていましたし


 お空はあの通りですから、あたいがやるしかありませんしね」


「ごめんなさいね、私が気を利かせていれば」


「いえいえ、お気になさらず」


 


何だかさとりさんとお隣さんは仲が良いなぁ。


私もお嬢様とあんな風に仲良く出来るかな?


 


「大丈夫だと思いますよ、フィルさんは真面目ですし」


「あ、あはは…そうでしょうか」


「なんなら、私の所でペットとして住みます? 私は歓迎しますよ


 フィルさんの様に真面目で真っ直ぐな子なら」


「あ、それ良いかも! ねぇ、一緒にさとり様のペットになってみない?」


「あたいとしてもそれは嬉しいね、フィルが一緒にいてくれれば今まで以上に賑やかになりそうだ」


「…いえ、そのお誘いは嬉しいんですけど、私はやっぱりレミリアお嬢様のペットです


 レミリアお嬢様には拾って貰った恩もあります、なので、私はお嬢様の元で」


「…本心からですね、これは付け入る隙がありません、本当に真っ直ぐな子ですね」


「いえ、私はただこれ位しか出来ないだけですから」


「むぅ……一緒に居たいけど、そこまで言うなら仕方ないのかなぁ」


「そうだね、本心からなら、何も言えないよ、でも、きっとあたいも同じ事を言うかな。


 もし、さとり様以外の人からペットになって、なんて言われても、絶対に断るよ」


「ふふ、ありがとうございます」


 


…あはは、なんだろう、一緒の湯船に入って、一緒に色々とお話しする。


こう言うのも、楽しいかもしれない…でも、なんだろうなぁ。


この広い湯船に5人だけって言うのもちょっと…ご、5人?


 


「5人!?」


 


きっと私の心を読んだんだろう、さとりさんが反応した。


そう、なんでか私はさっき、5人だと感じた。


5人だ、湯船に浸かっているのは目に見えてる数で4人。


私、さとりさん、お隣さん、お空さんの4人だ。


でも、私はさっき、何でか5人だと感じた。


 


「ど、何処!? 居るんでしょ!? こいし!」


「こいし?」


「さ、さとり様の妹様だよ、そして、あたい達のもう1人のご主人様…」


 


さっきまでの表情とは一転、さとりさんは血眼になって湯船を見渡している。


でも、何処にも居ない…でも、居ない筈が無いんだ。


私が無意識のうちに感じていた、もう一つの気配、本当に、本当に微かな気配。


私は気配を察する能力は高い、獣としての野生の勘。


その勘が確かにこの場所に、あと1人誰かが居ると告げている。


今もそうだ…そして、その気配は今。


 


「私の、うし」


「えい!」


「むぅう!!」


 


あ、あ、あれ!? だ、誰も! 誰も居なかったのになんか出て来た!


わ、私の胸を誰かが掴んでるんだけど!? 誰!? 湯船の中から!?


いや、いやいやいや! そ、そんなはず!


でも、分かってる、誰かは分からないけど、誰かに触れられているのなら


確かにそこにいる、当然、実体もそこにある!


 


「つ、捕まえました!」


「あ、捕まっちゃった」


「こ、こいし!」


「こいし様!」


「こ、こいし様!」


 


私はすぐに捕まえた女の子の姿を見てみた。


彼女は薄く緑がかった灰色のセミロングで、緑色の瞳をしていた。


しかし、瞳孔は白く発光しているようにも見える。


見た目はさとりさんと同じくらいの身長、どことなく似ている。


 


「あなた、よく私がここにいるって気付いたね」


「いえ、気配を探るのは得意ですから


 と言うか、ここまで接近されるまで姿が見えなかったんですけど」


「私はそこら辺に転がっている小石と同じ、そこにいるけど居ないの」


「あ、だから名前がこいしなんですか?」


「…本気で言ってるの?」


「本気で言ってるわ」


「……ふふ、逆だよ、私がこいしだから、例えに小石を出しただけ」


「こ、こいし…笑った? か、感情がないあなたが?」


「あ…うーん、どうなのかな、どれが本当の私か分からないんだよね」


「あ、それ私も分かります、自分が誰か分からない事って多いですよね」


「へぇ、あなたも心を閉ざしたの?」


「え? いえ、私の場合、心が封じられてるの方があってる気がしますね


 記憶喪失ですし、失った記憶の中に心が封じられてる? 何だか妙な言い方ですけどね


 さとりさんもそんな風な事を言ってましたし」


「えぇ、そうね、心を読もうと心の奥底を読んだときに一気に私の中に


 心が飛び込んできたような感じだったし」


「お姉ちゃんでも読めない心の奥底があるんだ」


「えぇ、今はあなたとフィルさんの2人ね」


「え? こいしさんの心、読めないんですか? あ、同じ妖怪だと読めない?」


「はい、私はこいしの心を読めない、全くです」


 


どうなってるんだろう…あ、もしかして、あの目?


そうだ、さとりさんの赤い目は開いているけど


こいしさんの紫色の目は開いていない。


 


「……」


「こいしはその目を閉じ、心を閉ざした」


「でも、閉ざしたと言う事は捨てた訳じゃないんですね」


「え?」


「じゃあ、心を開けば心は戻る、捨てられる物じゃありませんし、当然でしょうけど」


「…私の心が戻る事なんて無いよ」


「でも、捨ててないのならきっと戻るんじゃないですか?


 あ、私なんかでよければ手伝いますよ? どうすれば戻るかは知りませんが」


「……」


「こ、心の底からそう思っているんですね、本当に邪心の欠片も無い」


 


あれ? 困ったときはお互い様ってよく言うし、当たり前なのかと。


 


「…本当に面白いね、あなた…じゃあ、そうだなぁ、少しだけ協力して」


「あ、はい、なんでしょう」


「私を忘れないで」


「え? 当たり前じゃないですか」


「ありがとう」


 


ん? んん? よくは分からないけど、覚えておけば良いんだよね。


うん、忘れる訳がないけど、こんな風に言うって事は大事な事なんだろうなぁ。


 


「…さとり様」


「…えぇ、フィルさん、あなたのお陰で久し振りに妹と会えました」


「え?」


「今日は妹も交えて盛大に騒ぎましょう!」


「は、はい!」


「…ふふ、お姉ちゃん、楽しそう…そんな顔を見られただけで、私は嬉しい」


「私はあなたの顔を見ることが出来ただけで幸せよ。


 それじゃあ、ゆっくりとくつろぎましょう」


「はーい!」


「…お、お空さん、私に抱きつかないでください…」


「なんで?」


「いえ、その…劣等感が」


 


う、うぅ…や、柔らかい…温泉に入る前よりも柔らかい。


う、うぅ、あぅ…い、良いもん! 負けないもん!


 


「…今日はいつも以上に賑やかになりそうですね」


「はい!」


「うにゅ!」

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