スペルカードを作るために
スペルカードを作ると決まったわけだけど
やっぱり作り方はイマイチわからない。
いや、作り方は分かるんだけど、どんな技にしようかが分からない。
そもそも弾ってどうやって出せるんだろう、分からないや。
「う、うぅ…」
「そもそも弾の出し方が分からないとはね」
「まぁ、自分の事を覚えていないし、自身の能力も不明だからな
今分かってることは、こいつの異常な身体能力だけだぜ」
「確かにね、フィルの運動能力は凄まじいからね」
そんなに凄いという自覚はないんだけど、皆が言うならきっとそうなんだろう。
でも、あまりそういう自覚がない、自分ではこれが当たり前だからかな?
「となると、体術を使ったスペルカードを考えるのも手ね」
「そ、そんなのあるんですか? 何だかそれ、弾関係ないですし」
「まぁ、そうなるわね…じゃあ、少しだけ私達で教え込んでみましょうか」
「え!?」
「ほら」
紫さんが指を軽くならすと、私の足下にさっきの切れ目が!
え? あ、あれ!? お、落ちる! 落ちちゃううぅ!
な、何だか周りが目玉だらけで凄く怖いんだけどぉ!?
「な、何だか目玉だらけで怖いんですけど!?」
「まぁ、我慢してちょうだいな」
「ひぃ! ど、何処に繋がってるんですかぁ!? あだ!」
うぅ…お尻が痛い…ここ、何処だろう…
「あ、あの…ここは一体…」
周りを見渡すと、沢山の建物が点在していた
周囲には子猫たちが何匹も歩いている。
「ここはマヨヒガ、その名の通り普通は行こうとして行ける場所では無いわ」
「は、はぁ…でもその…な、なんで私をここに?」
「博麗神社で鍛えるとなると、霊夢にどやされるからね
それに、ここならあなたが休める住居も多い」
「へ!?」
「あなたにはスペルカードルールに適応して貰うために
しばらくの間、このマヨヒガで過して貰うわ
「えぇ!?」
え!? そ、そんな! 訳が分からないままこんな所に連れてこられて
しばらくの間ここで過ごす!? な、何でぇ!?
「え? あ、あの! な、なんでそんな…」
「力を入れて鍛える為よ、本来私の住処はここでは無いのだけど
あなたが弾幕を扱えるようになるまではここで面倒を見て上げるわ
昼夜問わずね、まぁ、面倒を見るのは私ではないけどね」
そう言って、再び指を鳴らすと、私の隣にさっきの空間が現われ
そこから9本の尻尾を生やし、黄色と白の帽子を被り
少し紫さんと似た服装だけど、下地は白で青いエプロンの様な物に
少し変わった線で出来た模様…髪の毛の色は金色で瞳の色も金色…
何だかかなり紫さんに似た姿をしている。
だけど、背中に見える9本の尻尾が紫さんとは違う存在だと言う事を示していた。
「こ、この人は?」
「姿を見せるのは初めてだったかな、こんにちはフィル、私の名前は八雲 藍
君のことは知っているよ」
「あ、そ、そうなんですか? 恐縮です」
「藍は私の式神よ、ここにいる間の世話は藍に任せることにするわ」
「よ、よろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく…しかし、本当に礼儀正しいな……」
藍さんは私の事を少し不思議な物を見ているかのような目つきで見ている。
な、何だろ、何か変な事したのかな? 髪の毛乱れちゃってるのかな?
それとも耳かな? 尻尾? それともマフラーかな?
でも、耳は分からないけど、尻尾は藍さんもあるから違うよね。
多分耳もあの帽子が2箇所盛り上がってるから、そこに耳があるんだと思う。
だから、多分マフラーかな? 良く不思議な目で見られるし。
「あ、あの…ま、マフラーが変な感じですか?
でも、このマフラーは私の大事なマフラーで…記憶は無いんですけど」
「いや、変な感じはしないさ、似合ってると思うよ」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ、とても似合ってる」
「えへへ、ありがとうございます♪」
えへへ、褒められちゃった…何だか凄く嬉しいや。
「…紫様、彼女は…本当に」
「……そうね、本当に普通の女の子ね、礼儀正しくて向上心もある
感情表現も豊か、笑顔に一切の曇りも無い…」
「あ、あの…ど、どうしたんですか?」
「いや、何でも無いわ、こっちの話よ、さて、それじゃぁ、鍛えましょう」
「あ、はい!」
「フィル、感謝するんだぞ? 紫様が稽古を付けてくれるのだから」
「あ、はい!」
よ、よーし、絶対に弾を出せるようになるぞ! そうすれば
スペルカードが使えるようになるんだから!
そうなったら、ようやく私はお嬢様達と同じ土俵に立てるんだから!
フランお嬢様も期待しててくれたし、が、頑張らないと!
「よ、よーし! が、頑張ります!」
「良い返事ね、それじゃ、始めましょうか」
ど、どんな稽古が始まるんだろう、キツくなければ良いけど…
い、いやいや、駄目だ駄目だ! そ、そんな甘い考えじゃ!
そんな甘い考えをして、弾を撃てるようになるわけ無いんだから!
「まぁ、あなたの能力から考えて、弾幕はすぐにマスター出来ると思うわ
まずは自分は弾幕を放てると信じることが大事かしらね」
「そ、そうなんですか?」
「えぇ、空を飛ぶこと自体もきっと出来るのでしょうけど
あなたは出来ない、理由はそうね、単純に出来ると思って無いからかしら」
「出来ると思えば出来るんですか!?」
「えぇ、あなたにはそれだけの能力があるのだから」
「じゃ、じゃあ、頑張ります!」
「まぁ、まずは弾幕ね、ひとまずあなたは攻撃をすることを考えれば良いわ」
「は、はい」
「攻撃手段は任せるから、この的に向って攻撃なさい」
今度は目の前に大きな案山子が出て来た。
この案山子に攻撃をすれば良いんだね、よし! やってみせるもん!
でも、どうやって攻撃しようかな、とりあえず爪で攻撃してみよう。
あ! 指先に力を入れたら爪が出て来た! やっぱり狼なのかな?
いや、案外猫だったり…でも、猫の尻尾にしては大きいし
周りも私の事を狼だって言ってるから、きっと狼なんだ。
「よし、やります!」
私は地面を強く蹴り、一気に案山子に間合いを詰め
自分に生えてきた爪を使ってその案山子を斬り裂いた。
私の爪が斬り裂いた場所は、私自身の爪の大きさよりも
かなり大きな傷痕となり、案山子の胴体に残った。
そんなに大きな爪じゃ無いのに…でも、考えるのは後だ!
今はこの案山子に攻撃をしないと!
「うりゃぁあ!」
爪で斬り裂き、反対側に移動、更に1回転してもう一度地面を蹴り
今度は後ろから案山子の背中を引き裂いた。
そのまま同じ様に繰り返し爪で案山子を引き裂いていく。
狼としての本能なのか分からないけど、少しだけ気分が高鳴る。
だけど、ズタズタになっている案山子を見て、その気分は無くなった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「…短期間でここまで引き裂けるとはね」
「身体能力の高さは疑いようがありませんね」
「それに、攻撃する度に加速してた様にも見えたわね
連続で攻撃をすればするほど加速していく攻撃、凄まじいわね」
「あ、ありがとう、ございます」
「で、さっきは息を切らしてたのに、もう息が整っている
その圧倒的な身体能力の高さを上手く使えれば良いのだけどね
例えば攻撃の度に周囲に弾幕を放つ、これが出来れば
スペルカードにして使うことも出来るでしょうね」
攻撃する度に周りに弾幕を放つ、想像したら凄く格好いい!
一撃を仕掛けた後、周囲に無数の弾を放って
更に再度攻撃するときに足下から弾幕、攻撃後にも弾幕!
そこからもう一度足下を蹴ったときに弾幕! うん! 格好いい!
だけど、それだとワンパターンになっちゃうかな?
それにやっぱり攻撃には締めが欲しいし、それも考えないと。
例えば最後に狼らしく噛み付き攻撃とか! あ、楽しいかも知れない!
こんな風に色々と技を考えるの!
でも、技を考えるのは楽しいけど、やっぱり基本が出来ないと。
そもそも弾幕が使えなかったら作れないよ。
「私、頑張ります! 絶対に弾幕を撃てるようになって! 技を作って!
幻想郷になじめるように頑張ります!」
「えぇ、手伝ってあげるわ」
「ありがとうございます!」
よーし! 頑張るぞ!




