赤いマフラー
「しかしまぁ、何というか、どう考えても能力高そうなのに
今のあなたには本当にそんな雰囲気がないわね」
「強くありませんから」
天子さんは私の頭を撫でたり、頬をつっついてきたしして
何だか妙な感じだ…うーん、私、どうすれば良いんだろう。
「で、あと1つ気になってたんだけどさ」
「何ですか?」
「このマフラー何よ」
天子さんは私が首に巻いてるマフラーが気になったようで
軽く手に取り、指でマフラーを撫でた。
「私のマフラーです、なんでマフラーをしてるのかは
自分でも分かりませんが、これがないと私、落ち着かなくて」
「ふーん」
「な、何するんですか!?」
あまり興味なさそうな返事をしていたけど
天子さんは私のマフラーを引っ張って取ろうとした。
「ったく、中々取れないわね、このマフラー」
「大事なんですから取ろうとしないでください!」
「なんでしてるかも分からないマフラーが大事?」
「そうなんですよ! 私にとっては大事なんです!
きっとこのマフラーが私の記憶を握ってるんです!
それに、お母さんとの思い出も!」
「記憶無いんでしょ? 何でそんな事が分かるのよ」
「…あ、そ、そう言えば…何で…このマフラーがお母さんとの
思い出だって…私、思ったんだろう…」
きっと…あの時、名前を思い出したときの記憶。
…あの声は多分お母さんなんだけど……
でも、あの時の記憶だと、私はこのマフラーを貰ってない。
もしかして、他の色んな事を覚えている様に
今回のマフラーも…もしかしたら…。
「まぁ、大事に持ってるマフラーなら両親の記憶とかあるかもね」
「そ、そうですよ!」
「でも…やっぱり妙よね、なんで強く止めてるわけでもないのに
こんなにも取るのが面倒なの? このマフラー」
「そう言えば、最初咲夜さんに取って貰おうとしたときも
中々取れなかったって言ってました」
「明らかに何かあるわね、案外封印だとかだったり?」
「まさか~、封印とかあり得ませんよ~、私、弱いのに」
「封印されてるから弱いのかも知れないわよ?」
「でも、マフラーをとっても別に何もありませんでしたし
封印とかじゃ無いと思いますよ?」
「そうなの?」
「はい」
ご飯を食べる時やお風呂入る時、いつも咲夜さんに取って貰ってるからね。
もしもこれが封印だとしたら、マフラーを取ったら暴走しちゃうよ。
でも、それがないって事は封印とかじゃないんだろうなぁ~。
「でも、ただのマフラーがここまで取りにくい物かしら?
まるで拘束具よね、首輪みたいな物かしら? 赤だし」
「いやいや! 首輪じゃないです! 拘束具でもありませんよ!
多分、ちょっと取りにくいだけですから!」
「ふーん…そうかしらね?」
「そうですよ! 全く天子さんは、変な事ばかり言うんですから
このマフラー、多分お母さんとお父さんからのプレゼントですよ?
そんな物が拘束具とかあり得ませんよ、お母さんとお父さん失礼です!」
「はいはい、分かったわよ、でも、やっぱり気になるわね」
「だから!」
「まぁ良いわ、とりあえず私は帰るわね、負けちゃったし
何だか満足もしたし、それじゃあね、その内本気で遊びましょう」
「え? あ、はい」
そう言い残して天子さんは空を飛んで何処かに移動した。
羨ましいなぁ、私も空を飛べるようになりたいなぁ。
どうやって飛んでるんだろう、お嬢様とフランお嬢様も飛んでるし
咲夜さんも飛んでたような…後、美鈴さんも…妖精さん達も…
あれ? もしかして空を飛べないのって私だけ?
「フィル、お話しは終わったわね」
「あ、さ、咲夜さん! はい、終わりました!」
「じゃあ、図書館へ行って頂戴、パチュリ-様がお呼びよ」
「え? パチュリ-さんって…確かあの色々な飾りが付いてた」
「そうよ、で、図書館の位置は分かるかしら?」
「い、いえ…全然分かりません」
「そう、じゃあ案内するわ、付いてきなさい」
「は、はい!」
私は咲夜さんに付いていって、図書館に移動した。
確かこの方向はフランお嬢様のお部屋があった方向?
地下に進んでるような気がする。
「普段は書斎にいらっしゃるのだけど、今は図書館にいらっしゃるわ」
「図書館なんてあるんですね」
「えぇ、かなり巨大な図書館よ、まぁ、私はあまり読まないのだけど」
「へぇ!」
図書館って何だか凄そうな予感! どんな感じなんだろう!
面白い物が沢山あったりするのかな!?
「しかし、パチュリ-様がフィルを気に掛けるとは思わなかったわ」
「どういうことですか?」
「パチュリ-様はあまり積極的では無いのよ、最近は違うのだけど
でも、何でも無い新しい住民だと言う事で呼び出すかしら?」
「あ、改めて挨拶…とかですかね?」
「それは無いわ、それなら来て欲しいでは無く
挨拶に来させなさいと言うと思うわ」
じゃ、じゃあ、何なんだろうか…私に何の用が?
何だか図書館のわくわくよりも、何を言われるのかって言う
恐怖の方が前面に出て来てる気がする…大丈夫かな?
変な事しちゃったりしたかな? 怒らせるようなことしたかかな?
うぅ、不安…すごく不安だよぉ…
「さぁ、ここが図書館よ」
「は、はい!」
咲夜さんがゆっくりと図書館の入り口を開いた。
かなり大きな扉で、少し気圧されたけど…大丈夫かな?
私、ちゃんとお話しできるかな? う、うぅ…怖いよぉ…
「パチュリ-様、フィルを連れてきました」
「そう、待ってたわよ、フィル」
「は、はひ! ふぃ、フィルと申します!
以後、お見知りおきを! あ、挨拶が遅れたのは申し訳ありません!」
「……咲夜、何故この子はここまで私に怯えてるの?」
「いえ、普段はあまり動かないパチュリ-様が動いたので
どんな意図があったのかと色々と話していまして」
「咲夜、私は動かないんじゃ無いの、動けないのよ」
「動かないから動けないのでは?」
「咲夜、いい加減に」
「では」
咲夜さんが懐中時計を取り出すと、一瞬で姿を消した。
「あ! 咲夜! ケホケホ」
パチュリ-様は叫び声をあげ、すぐに咳き込んでしまった!
「大丈夫ですか!?」
「さ、叫びすぎてしまったわ…」
「あの、お体の調子が悪いのなら」
「ケホ、大丈夫よ、ただの喘息…それに、体調が悪いのはいつもの事よ
まぁ、あの子の言う通りかも知れないわね、動かないから動けない
…運動したいのだけど、喘息のせいでまともに動けないのだけど」
「あの…どうすればパチュリ-様は…」
「気にしないで良いわ、100年間もこの調子、もう慣れっこよ」
「100年!? え!? 100年!?」
「あぁ、聞いてないの? 私は魔女、100年くらいは余裕よ
それに、レミィは500年、フランは495年
まぁ、この中ではそこそこ年下になるのかしら?
ま、長いこと生きてる妖怪は、今更年齢など気にしないのだけど」
「そ、そうなん…ですか」
じゃあ、妖怪である私もそこそこの高齢だったりして。
記憶は無いけど、意外と100年とか生きてたりしてるのかな?
「さて、この話はここまでね、ケホ、じゃあ、今回あなたを呼んだ理由を話すわ」
「あ、は、はい…でも、あまり無理をなさらないでください」
「大丈夫よ、ま、今回あなたを呼んだ理由は少し気になることがあったからよ」
「え?」
「あなたのそのマフラー、かなり気になってね、少し調べたいのだけど」
「え? はぁ、分かりました…でも、このマフラ-、私1人だと取れなくて」
「ただのマフラーなのに? そう言えば、あの時も咲夜が苦戦してたわね」
「はい、自分でも何でこんなに取れないのか分かりません」
「…そう、じゃあ、小悪魔」
「あ、はい、何でしょうか、パチュリ-様」
「フィルのマフラーを取ってあげて、1人だと無理らしくて」
「あ、はい、分かりました、あ、こんにちはフィルさん、お久しぶり
と言っても、殆ど時間も経ってませんが、覚えてますか?」
「あ、はい、小悪魔さんですよね?」
「えぇ、覚えててくれて嬉しいです、では、解きますから落ち着いてくださいね」
「は、はい」
小悪魔さんは私のマフラーを解こうとした。
だけど、やっぱり咲夜さんの時と同様、解くには苦労している様で
大した結び目も無いのに20分ほど時間が掛かってしまった。
「や、やっと取れました」
「見た感じ、そこまで厳重には見えないのだけどね」
「私もそう思います…」
「じゃあ、しばらくの間図書館の本でも読んでいなさい
読めない物がかなり多いかも知れないけど、数も多いし
きっと迷ってる間に時間が経つわ」
「あ、はい、分かりました」
とりあえずパチュリ-様に言われたとおり、この図書館の本を読んでみよう。
何か面白い物があれば良いなぁ。




