絶対強者への抗い
これだけの人数を揃えたわけだけど、確かにとんでもなく強いわ。
今まで戦ってきた妖怪の中で最も強烈な実力がある。
攻撃の節々に加減が無ければ、私達はとっくに全滅してるほどに。
「おらおら! どうしたよ蟻共!」
「く、これは冗談じゃ無い程強いぜ…こんなヤバいなんて思わなかったな
今までのフィルからは想像出来ないほどに強烈だ!」
「元々のフィルもこれ位の実力はあったんでしょうね。
本気を出したりしてないだけで…」
「くぅ、神奈子様達が怯えてたの何となく分かる気がします!」
「うぅ…ここまで強くなってるなんて」
私達は一応彼女との交流があった。
私も最初はフィルの情報を紫から聞いて接していたけど
イメージとは全然違っていて、ちょっと驚いてたわ。
普段の彼女は温厚だし、自信がなさげだけどかなり強い。
華扇が総出であの子と戦ってた姿は見た。
紫が言うとおり、相当強いというのは分かったわ。
でも、正直ここまで強くなってるとは思わなかった。
面倒と感じながらも修行をやってた。
それだけ修行しても、彼女には敵いそうに無いほどに彼女は強い。
「そこの庭師、良い事を教えてやるよ」
「な、なんですか?」
「俺がどうしてもう一度目覚めたか。
いや、俺と言うよりは俺達と言う方が正しいか?
あのクソ狼も一応目覚めた類いだからな」
「それが私と関係してるんですか?」
「してるさ、そりゃもう滅茶苦茶な。
お前がフィルと戦ったとき、お前はフィルの迷いを断ったな。
その剣で…その時だよ、俺達が目覚めたのは」
「……え?」
あぁ、そう言う事か。だから紫の想定よりも早く目覚めたのね。
「お前が迷いを断ち切ったんだよ、フィルが常々抱いてた
攻撃に対する迷いを。それと同時に俺達が目覚めたんだ。
封印されてた、フィルの凶暴な部分が少しだけ出て来たからな。
その日を境にフィルは攻撃に対し、そこまでの迷いを無くした。
相手を攻撃する際に散々迷ってたフィルだったが
お前に迷いを断ち切れたことで、攻撃をあまり躊躇わずに出せた。
だから、個人的にはお前には感謝してるんだぜ?
お前がフィルの迷いを断ち切らなかったら、絶対にあいつはまだ
攻撃に躊躇ってたし、俺達はこの段階で完全に目覚めることは無かった。
多分だが、八雲紫も想定外だったんじゃ無いか? この目覚めの早さは。
良かったな、庭師。お前は色々な想定を崩した。
お前が壊したんだよ、幻想郷の賢者の想定を」
「あ……あぁ、そ、そんな…私が全部…」
相当ショックだったみたいね、それもそうか。
自分のせいで色々な想定が崩れたと言うのだから。
一気に戦う気力を削がれたという感じかしら。
「だから、お礼にお前を最初に潰させて貰うよ!」
「妖夢! 不味い早いぞ!」
「あ…」
ヤバい! あの速さで接近されたら、対処出来ない!
「あらあら妖夢、情けないわね」
「チッ!」
「え?」
妖夢とフィルの間に飛んで来た蝶のような弾幕。
フィルが急いで後方に飛び退き、妖夢は無事だった。
あの弾幕は…あいつのご主人が直々に動くとはね。
「ゆ、幽々子様…」
「ほら、しっかりしなさいな、ここでめげてどうするの?」
「で、ですが…私のせいで…」
「あなたのせい? 何を言い出すかと思えば。
ここであの子を止めれば誰にも責任はなくなるでしょ?
あなたが自分自身が悪いのだと考えるなら
あの子を頑張って足止めして、あの子を救うことを考えなさい。
そうすれば、幻想郷も救うことが出来るわ」
「……はい! 不甲斐ない姿を見せてしまいました。幽々子様、ご命令を」
「では命じましょう。妖夢、目の前の破滅を斬りなさい」
「破滅ねぇ…ま、その通りかな。あくまで復讐でしかないんだがな」
「なら止めて見せましょう、その際限なく続く復讐の輪廻を!」
「輪廻からはみ出してる幽霊が言うのか、面白いじゃないか」
妖夢はなんとか持ち直したみたいだけど
あいつが合流してもそんなに戦力に差が生まれるわけじゃ無いわね。
「霊夢、ここでなんとか時間を稼ぐわよ」
「紫、大丈夫なの? 結構傷が酷いけど」
「大丈夫よ、気にしないで」
「増えてきたか…だが、意味ないっての!」
「魔理沙、ボサッとしないで動けば?」
「なんだ? 人形?」
動き出したフィルを止めるように人形が妨害をしてきた。
「うぉ! 上海人形…アリスか!」
「さぁ、ボサッとしないで! 時間を稼ぐんでしょ?」
「…お前まで動くとは、これは一大事だな」
「誰がどう見ても一大事でしょ? ほら、動きなさい」
「分かってるぜ! この人数ならさっきよりは健闘できそうだ!」
「ふん、数が増えても無駄だ!」
「どうかな、私達は並じゃ無いぜ? 確実に止めてやる!」
この人数での総攻撃、流石のフィルもこの人数の対処は
少しだけ苦労している様子に見えるわね。
良い調子よ、このまま追い込むのもありね。
「ふん、確かに雑魚が徒党を組むとは訳が違うようだな。
とは言え、俺からして見ればお前らも雑魚なんだが」
「くぅ!」
地面を踏み付けることで周囲に強烈な衝撃波を放つなんて。
色々と規格外な子ね、この子は。
そろそろ、こっちも切り札を切るしか無いかしら。
「霊夢」
「分かってるわよ、色々と修行をしたのはこの時の為だからね」
「ん?」
意識を集中させる…全てに溶け込むほどに意識を集中させる。
この世界の全てが私に力を与えてくれると、そう考える。
この幻想郷に私自身が溶け込むように…
「なんだ…」
「…これが私の奥の手よ、幻想郷の力を私自身に降ろす技」
「なんだよそれ…初めて見たぞ!」
「最近習得したからね、幻想降ろしとでも言えば良いのかしら?」
力があふれてくる。この技を習得する為に散々修行したわ。
これなら、多少は時間を稼ぐこと位出来るでしょう。




